配信での悪ふざけ
貞操が逆転したこの世界――“男が守られる性”であり、“女が攻める性”とされる常識のなか、転生してきた俺たち――元・男社会で育った男どもが、今日もまた、何食わぬ顔で配信の画面越しに笑い合っていた。
「はいどうも〜!今日も元気にやっていきましょう!今回はコラボゲストとして、この人に来てもらってます!」
テンション高めの司会進行役、咲人が画面中央で手を振ると、わちゃわちゃとコメントが流れる。そこに現れたのは、人気女性配信者の“柚子姉”こと柚木ひかり。飾らない性格とテンポのいいツッコミが人気の姉御肌で、男配信者との絡みも多いことから、女リスナーにはちょっぴり嫉妬されがちだ。
「どうも〜、柚子姉です。なんか今日は妙に男くさくて緊張してるんだけど」
「言ったなぁ〜!俺らだって緊張してるんですよ、柚子姉に会うと!」
「え?でもあたし、今まで十人ぐらいの男配信者とコラボしてきたけど?」
「……それって、俺は何番目の男ですか?」
静かに、だが重々しく咲人が口を開いた瞬間、スタジオに笑いの爆弾が落ちたように、他の男配信者たち――直樹と蓮も、吹き出した。
「お前さあああああああ!!」
柚子姉が即座にツッコミを入れる。顔を真っ赤にしながらマイク越しに叫ぶその姿に、コメント欄が「草草草草草」「またやってるw」「柚子姉顔真っ赤w」「今日も安定の地獄コラボ」などと大盛り上がり。
「ちょ、やめろやめろ!それマジで炎上するやつだから!!今の全部ジョークだからね!?本当に!!」
柚子姉が両手を振って弁解するも、男どもは容赦しない。
「ねぇ直樹、お前は柚子姉にとって何番目の男だったの?」
「え?俺は……くっ、言えない……!言いたいけど言えないッ……!」
「蓮くん、君もでしょ?」
「いや、僕はね、いっそ最初で最後の男になりたかったよ(キリッ)」
「お前らさああああああああああ!!!!やめろってほんと!!!!」
柚子姉のツッコミが飛び、リスナーは爆笑。そして、画面の裏で――少しだけ、女リスナーたちの胸の奥に嫉妬が灯る。
『なんであんなに楽しそうに絡んでるの……』
『柚子姉、やっぱ特別なのかな……』
『あの場にいたい……柚子姉になりたい……』
『その台詞、言われたい……』
冗談だとわかってる。でも、妬ける。
それほどまでに、男配信者たちの絡みは甘く、優しく、時にドキリとするほど破壊力があった。
終始笑いに包まれたコラボだったけれど、その夜、Twitterでは「#柚子姉何番目の男」がトレンド入りし、各々のファンアートと妄想二次創作が大量に生まれたことは――言うまでもない。