女尊男卑世界の煽り系オスガキ、無双中
転生して目を覚ました時、そこは見た目こそ現代と大差ないが、社会構造が真逆の世界だった。
男は守られる側。慎ましさ、控えめさが求められ、女の目を真っ直ぐに見つめただけで“淫ら”とされる。
だが――
「……は? なんだその窮屈な空気」
そう思った俺、“ユウト”は笑った。
転生前の記憶がある。向こうでは自由気ままに、強気なメスガキに弄ばれては、それでも惹かれるバカどもを見て笑ってた。
今は逆だ。
俺がオスガキになる番だろ?
「ねぇセンパーイ、今日も仕事ごくろーさま♡」
男が女をからかうなんて、この世界じゃ考えられない。
けど俺は、職場で堂々と机に乗せた足をぷらぷらさせて、フリルのついたシャツのボタンをひとつ、ふたつ外す。
「あれ? 胸元見えてる? うっわ〜、そんなガン見しちゃって……まさか、触りたいとか思ってないよねぇ?」
カップ持ってた女上司の手がピタッと止まる。
視線は釘付け。でも、手は出せない。――この世界、男が“誘った”と誤解されても、男は“責められない”。
だから、俺がどこまでやってもセーフ。
「なーんて、触らせるわけないじゃん。ほら、センパイってさ、チキンだし♡」
すっと距離を詰めて、唇の近くまで顔を寄せ――
「びっくりした〜? ……キスすると思った? ねぇ、今ドキドキしてたでしょ」
にこっ、と笑う。
甘く高い声。細い指。上目遣い。
けれど、あくまで**“触らせるフリ”**。
たまに「ちょっとだけ」と言って指先を取らせるが、その直後に「きゃーセクハラだー!」と声をあげ、周囲の女を慌てさせてはニヤつく。
学校でも、同級生の女子たちは彼を**“危険なオスガキ”**と呼んだ。
距離感がおかしい。
露出も言動も過激。けれど、決して“決定打”は許さない。
「見たきゃ見てもいいけど? ……触るのは、また今度♡」
「アイツは……男のくせに……いや、男だからって軽く見たら、手のひらで転がされる……!」
気づいた時にはもう遅い。
オスガキは、今日も誰かをからかい、無傷で逃げていく――