俺が変なんじゃなくて、お前らが過敏すぎなんだろ?
この世界では、男は守られるべき存在。露出は慎むのが当然。
男がシャツを捲れば周囲の女子は息を呑み、ちょっと指先をくわえただけで「意味深すぎる!」と騒がれる。
だけど――
「見たけりゃ見ろよ。止めねぇよ?」
そう言って笑う男が一人だけいた。
名前はユウ。この世界ではめずらしい、ちょっと破天荒な男子。
彼はこの世界の常識なんて、とっくに把握している。
でも、合わせる気はさらさら無い。
「風呂上がりにタオル巻くのって、意味あるのか?」
そう言って、上半身裸で涼んでいると、女子たちは慌てて視線を逸らす。
「ちょっ……ま、また堂々と……!」
「もうだめ、脳が溶ける……」
それでも彼は、笑っていた。
「本気で見たくねぇなら、見るなって話だろ?」
ある日、体育の授業中。暑さに耐えかねて、制服のボタンを2つほど開けた。
「……ッ!やば……」
「鎖骨!鎖骨が……!!」
「ボタンって2つでこんなに破壊力あるの!?なにあれ武器?」
女子たちが赤くなるのを見て、ユウはわざと小さく肩をすくめて言った。
「ちゃんと警告してるじゃん。外すぞって」
「……誰も止められなかったんですけど!?」
またある日、教室でストレッチしてた時。
Yシャツの裾がめくれ、腹筋がちらりと見えた瞬間。
「あああ……ッ!やめて、もう見えちゃったから……!」
「拷問……なんて甘美な……」
そんな女子たちを横目に、ユウはちょっとニヤッと笑う。
「ほら、また見てんじゃん。やっぱ好きなんじゃねえの?」
「うるせぇ!」
「黙れまじで……でももう一回やってくんない?」
彼は、世界の常識には従わない。
従わないけど、責めるわけでも否定するわけでもない。
ただ自分の感覚を信じて生きてる。それだけ。
「この世界で“脱ぐ男”がヤバいってのは知ってる。
でも、服の重さにまで気ぃ使う人生なんて、つまんねぇだろ?」
その言葉に、何人の女子の心が射抜かれただろう。
一番破壊力があるのは、無自覚よりも自覚してて悪びれないやつ。
そう痛感させられながら、今日も女子たちはユウに翻弄されていくのだった。