あれ、なんかすごく……露出多くない!?
女子がリーダーの社会で、男子は守られるもの。
露出の多い服は“誘惑”と見なされる。だから多くの男子は、肌を隠した優等生ルックを好む。
だけど――彼、ヒナセは違った。
「じゃ、行こっか。楽しみにしてたんだよ、今日」
夕暮れの駅前、声をかけられた瞬間、わたしたちは一斉に固まった。
柔らかく微笑んでるヒナセ。
その私服は――
ノースリーブの黒のメッシュシャツ。脇から腹筋がチラ見えして、ピタッとした白のボトムは太ももを強調。足元はヒールのあるサンダルで、脚のラインがいやに綺麗に出てる。
「ちょ……え、ええええ!? ヒナセくん、その服――!?」
思わず声を上げると、彼はきょとんとして、首をかしげる。
「変かな? 暑いし、ちょっと動きやすいやつにしただけなんだけど」
いやいやいや、涼しいとかそういう問題じゃない!
見えてる、めっちゃ見えてる!腹筋のラインとか、鎖骨とか、腰骨とか!
こっちは鼻血噴きそうなんだけど!?
「……そ、そっか。ごめん、ちょっとびっくりしちゃって」
「ん? あー、そうか。こういう格好、あんまりしないよね、みんな。僕は気にしてないから平気だけど……」
にこっと、穏やかな笑顔。
なんていうか、まるで悪気がない。無防備すぎて逆にヤバい。
「変な意味で見られてもいいの?」
「んー、見たきゃ見ればいいって感じ? 服ってそういうもんでしょ」
まるで人ごとのようにさらっと言い放つ彼。
この世界の価値観を知ってるはずなのに、どこか他人事みたいで――だけど、それがまた自然体で。
「……お前、ほんと危険だよな」
「え? なにが?」
危険すぎるよ。色んな意味で。
そう思いながら、みんなで歩き出す。
目のやり場に困って、顔が熱くて、でも笑ってしまう。
たぶん、これがヒナセって人なんだ。
わたしたちが“当たり前”だと思っていたものを、当たり前じゃないと教えてくれる。
そんな彼に、今日もドキドキさせられるんだ。