続‼️婚約破棄!真実の愛に目覚めた王子の末路は「廃太子、幽閉、毒杯」ですわ!
誤字報告ありがとうございます
辺境伯令嬢マリンと第一王子クズール殿下は婚約している。王は辺境伯の精鋭騎士達を欲しいがためにクズールと婚約させた。だが、そんな政略を知らないクズールは……
「申し訳ないマリン。私は見つけてしまったんだ!真実の愛を……」
パチパチパチパチパチ!
殿下に呼ばれ来てみれば、自分に酔いしれ芝居かかった演技を見て気持ち悪くなったマリンは拍手し、最後まで言わせなかった。マリンは既に準備していたので、早くこの茶番を終わらせたかった。
「おめでとうございます。では婚約破棄ですね。それでは……」
「ちょっ、ちょっと待て!帰ろうとするな!普通はどうして?とか聞くだろう!私に愛想つかされたからって拗ねるな!正直になれ」
「チッ……どうしてですか?」
「おい!舌打ちしながら嫌々聞いてるだろ!」
「殿下が普通は聞くと言われたから聞いただけです。わたくしは、まったく殿下に興味ありませんのに」
「正直になった!もっと興味持って!私の婚約者だろ!」
「もうすぐ元婚約者になります」
「……そうだな。じゃあ、この書類にサインしてくれ」
既に殿下のサインされている婚約破棄証明書をマリンに渡した。
「はい、わかりました。」
躊躇なくサインしようとしたら……
「ちょっ、ちょっ、待て!!」
殿下は自分の想像していた反応と全く違い困惑している。予想では自分に泣きつき婚約破棄をどうか勘弁して下さいって!懇願すると思っていたのだ。
「邪魔しないでください!殴りますよ」
殿下はマリンの変わりように更に驚愕した。
「怖いから!暴力反対!マリンは王妃教育終了したんだよね!学園では淑女の鑑だって呼ばれてたマリンがどうしてそんな乱暴者になったんだ!言葉使いも変わったじゃないか!!」
「元々これが私の素なんです本当のわたくしは故郷の辺境で自由気ままに過ごしていたかったのに、王命で殿下なんかの婚約者に嫌々なったんです!もう勘弁して下さい!でも、これで自由になれるわ。殿下不貞での婚約破棄だから慰謝料もガッポガッポ貰えるし。ふふっ、婚約期間の6年間も無駄ではなかったわね。これで独身貴族になれるわ!念願の辺境引き篭もりライフ!ありがとうございます婚約破棄していただいて。フリンダ様とお幸せに」
スラスラスラスラ
「おい!どさくさに紛れてサインするな!もう印まで押してある。どうして印まで持ってるんだ!」
「淑女として当たり前ですわ。いつでも婚約破棄の印が押せるように身に付けてるんです」
「なわけあるか〜っ!婚約破棄が早々あるわけないだろ」
「あります。今ここに」
「ぐぬぬっ……確かに……じゃな〜い!もう事前に婚約破棄されるってわかってたな」
「ふふっ、あれだけ学園の中でお二人さんイチャイチャしていれば誰だってわかります。それに、わたくしがフリンダ嬢を虐めたと冤罪を押し付け婚約破棄の計画をしていたのも知っていますわ。確か、教科書を切り裂いたり、噴水に落としたり、挙げ句には階段から突き落とし殺人未遂を犯したと。だからわたくしは、いつでも婚約破棄される準備をしていたんです。なかなか来ないから、こちらから婚約破棄しようかと考えていたぐらいです。不貞の証拠、冤罪の証拠をたくさん揃えておりますので。例えば……殿下とフリンダ様は生徒会室でちょめちょめしてたりとか」
「へっ……ちょめちょめバレてた…… それに冤罪の証拠も……私はマリンから婚約破棄されそうだったのか!……マリンは私に惚れていたのではないのか」
「はぁ!?冗談は顔だけにしてくださいませ。さっき嫌々で王命で婚約したと言っただろうが!ちゃんと聞いとけ!ごラァ!自意識過剰すぎるんだよ」
「ひぃぃっ!どんどん言葉使いが酷くなってる」
「オッホン……先程言った通り、王命で結ばれた婚約です。なので……殿下には一切惚れてねんだよ〜っ!」
「途中までよかったのに、最後辛辣!」
「申し訳ありません。殿下が惚れていると言われて気持ち悪くなったもので」
「そこまで私は嫌われていたのか……」
「嫌う要素しかありません。まずは生徒会の仕事をわたくしに任せてフリンダ様とちょめちょめ。殿下に任されている王宮の仕事もわたくしに任せてフリンダ様とちょめちょめ。市井の慈善活動をわたくしに任せフリンダ様とちょめちょめ。どこに好きな要素がおありだと?いい所なんて一切ないですわ」
キッパリ断言した。
「ぐぅ……確かに……だが!私の婚約者なんだから仕事を任せたって問題ないだろ!マリン!私だって良い所はあるぞ!」
「例えば?」
「この顔!」殿下は自信満々にキメ顔を決めた!
「ブゥ……ハッハッハッ!自分の顔、鏡見てから言って下さい!ハッハッハッ……ハッハッハッ!!」
お腹を抱え大爆笑!殿下の顔をもう一度見て大爆笑!そんな失礼な態度に等々殿下は切れてしまった!今まで殿下の周りにはイエスマンしかいないため侮辱耐性ができていないのだ。
「わ、笑いすぎだ!フリンダは私の顔が素敵だと言ってたんだぞ!マリン!もう我慢ならんお前は私を侮辱しすぎだ!不敬罪で国外追放してやる!王族を侮辱した罪でな!さぁ、入ってこい!こいつを捕えよ!」
バン!ダッダッダッ!
部屋の外で待ち構えていた殿下の側近、騎士団長の息子ガイ、宰相の息子ナック、公爵の息子ジョニーの3人が入ってきた。
そしてマリンは側近達を1人ずつ指を刺しながら……
「廃嫡、廃嫡、男婦」
「「廃嫡!?」」
「ぼ、僕、男婦!!」
ジョニーだけ不満そうだ。
「あなた達の末路です」
「「「……」」」
それを聞いた側近3人の顔色が急に悪くなった。
マリンはそんな三人を無視し殿下に指を差し……
「廃太子、幽閉、毒杯」
「私だけ!残酷!」
「ではさよなら!もう顔をあわせることは一生ありませんので」
マリンは優秀で学園の卒業資格を持っているのでこのまま学園を抜けても問題ない。
「お、おい!早くマリンを捕らえろ!」
「「「はっ!」」」
3人いっせいにマリンに飛び掛かったが……
「グホォ!」「グヘェ!」「アガァ!」
ガイはマリンに顎をなぐられ失神。
ナックは鳩尾に回し蹴りをくらい悶絶。
ジョニーは金蹴りで口から泡を吹き白目を剥いて再起不能。
「へっ!な、何で……」
華奢なマリンが男3人を軽々倒してしまい殿下は驚いている。
「淑女は皆、クズ殿下がクズな側近達を使って襲ってきた場合返り討ちにできるよう訓練してるんです。淑女なら当たり前ですわ」
マリンは辺境で屈強な騎士達と幼少の頃から訓練していたので返り討ちに出来た。普通の令嬢は出来ない。
「そんなピンポイントの当たり前あるわけないだろ!」
「今ここに」
「確かに……じゃな〜い!って!さっきの印のくだりと同じ!」
「もういいですか?またわたくしの邪魔するなら公爵の息子のように再起不能にいたしますわよ。殿下の息子を」
マリンは右足をぷらぷらさせ、いつでもお前の息子を再起不能にさせると威嚇した。
「ひぃー!それは勘弁!や、やめてくれ。私は次期王として世継ぎを作る大事な使命があるんだ!」
殿下は内股にし股間をガードした。
「そうですか、殿下は次期王にはなれませんわ」
「えっ!……そんなわけないだろ私は第一王子だぞ!父上の子は私しかいない」
「だそうです王様」
部屋に隠れていた王が現れた。今までのやりとり全て聞かれていたようだ。
「こんなにも愚息だったとは……申し訳なかったマリンよ。約束通り慰謝料は此奴の金を全部やろう。今まで悪かった」
マリンは王に頼み込み事前に王を忍ばせていたのだ。
「ありがとうございます。これが婚約破棄の証明書です」
王はそれを受け取り殿下に罰を下した。
「クズールは精神の病に侵されているようだ、お前は離れの宮で療養しろ」
殿下は悟ってしまった!本当にマリンの言った通り幽閉になってしまうと。だから王に撤回してもらうため自分の正当性を訴えた。
「父上!私はただ婚約破棄して真実の愛の相手と結婚したいだけじゃないですか!それと私しか王になる者はいないんですよ」
「ワシの弟の子がいるから問題ない。もしお前が王になったら国は潰れる。もうお前は廃嫡、幽閉決定だ!それ以上醜態を晒すようなら毒杯だぞ!」
「斬首、晒し首!」
マリンは再び殿下にビシッと指を差し言い放った。
「不敬だし、さっきより残酷!」
「これこれ、そんなに煽るでない。まぁ、気持ちはわかるがな。クズールと此奴らを捕らえよ!」
気絶した側近と殿下は部屋の外で待機していた近衛騎士に連れられていった。
「いやだ〜っ!私は王になるんだ〜っ!ただ真実の愛に目覚めただけなのに〜っ!マリン!お前を側妃にしてやるから何とかしてくれ!」
そのまま殿下は連れられていった。もうクズールの未来はないだろう。王は傲慢なクズールを切り捨てたのだから。
「では王様、わたくしは元の場所に帰らさせていただきます。もし、また私に意に沿わない婚約を押し付けるようなら……わかってますわよね」
「……あぁ、肝に銘じとく……辺境伯によろしく伝えといてくれ」
「はい、では失礼いたします」
優雅なカーテシーをし立ち去った。
王の顔は青ざめていた。
「……あの目は本気だったな……次は我が弟の子を婚約者にしようと思ったが諦めだ方がよさそうだな。これ以上令嬢を怒らせると辺境伯に王都を攻め落とされてしまいそうだ。そうなったらワシが斬首、晒し首になってしまうな」
◆◆
一週間かけ故郷に帰ってきたマリンは……
「私は自由よ〜っ!いやっほーい!もうわたくしを縛る者は誰もいないわ!やっぱ独身最高〜っ!」
辺境に帰って来たマリンは庭園の芝生の上でゴロゴロ転がっている。久しぶりの自由を謳歌しているのだ。
そんな幸せそうなマリンを遠くから眺めている者がいた。
「よく6年も耐えたもんだ!褒美に少しぐらい休ませてやろう。これから今まで以上に忙しくなるのだからな」
意味深な言葉を辺境伯はボソッと呟いた。
これからの忙しさを知らないマリンは束の間の自由を満喫するのだった。
◆◆◆
それから半年後……
広大な辺境騎士訓練場で男3人が必死に走っている。その中、鬼教官の声が響いた。
「ちんたら走るなっ!それでも玉ついてるのかっ!」
「「「イエッサー!」」」
「おい玉無し!!お前のは潰れて無くなってるだろ!嘘つくなっ!」
「そ、そんな〜、まだ潰れて……」
「口答えするなっ!お前らに許された言葉はイエッサーのみだ。お前ら!連帯責任で20周プラスだ!」
「「「イエッサー」」」
「次ちんたら走ったら、ハイとチャクは夕飯なし。玉無しは辺境伯騎士団の園に連れて行く!尻穴が裂けないよう引き締めておけ!」
「「イエッサー」」
2人は鬼教官に従順だが1人の男が騒ぎ出した。
「いやだー!あの男に犯されるのだけは勘弁してっ!」
玉無しはお尻の穴を両手で押さえながらおもいっきり訴えた。
「また口答えか玉無し!三度目はないぞ!今すぐに辺境騎士団の園に連れていってやるぞ!ハハッ、玉無しには褒美になってしまうな」
鬼教官は満面の笑みで玉無しを罵っている。鬼教官は玉無しに対して特別な恨みがある為特別に酷い仕打ちをしている。
「そ……ムゴムゴ」
ハイとチャクは玉無しの口を塞いだ。もう一度口答えをしたら玉無しの貞操が奪われてしまう。この鬼教官……いや、違う!この悪魔なら確実に酷い罰を当たり前のように実行するだろう。ハイとチャクは悪魔に絶対逆らっていけないと既にわかっている。一週間前の仕打ちを考えれば……玉無しは未だに懲りてないようだが……
「お嬢様、そろそろパトリック様の所に行かなければ間に合いません」
侍女が鬼教官に耳打ちした。
「ゴホン……あら、もうそんな時間?」
さっきまでの鬼教官の口調ではなく令嬢の口調に戻った。この令嬢は王子の元婚約者マリン。辺境伯令嬢だ。
「グスン……やっと元のお嬢様に戻られたんですね。サーヤは嬉しく思います」
さっきのやり取りを見て感極まり涙を拭った。普通の人ならドン引きな鬼教官ぶりだったが、侍女サーヤにとっては喜ばしかった。王子の婚約者になってからの王妃教育で天真爛漫だったマリンの笑顔が消え感情を殺すような生活を6年続けていた。
サーヤは幼少の頃からマリン専属侍女としてずっと世話をしてきた。王子の婚約者になってから王妃教育で感情をださない淑女になっていくのを間近で見守っていたサーヤはマリンのことをとても心配していのだ。
「そ、そんな事ありませんわ。昔みたいに野蛮ではなくてよサーヤ!では、参りましょうか。そこの3人、私がいないからってサボるなよ!すぐにバレるんだからな!」
「「「イエッサー」」」
油断するとすぐに素が出てしまう。この半年でマリンは淑女を卒業してしまったようだ。
「お嬢様が帰ってきた〜っ!ウホホ〜イ!今日はお祝いよ!」
昔の頃のサーヤも帰ってきたようだ。
「ホッホッホ!早く行きましょう、お父様が待っているわ」
3人は唖然としている。この辺境伯令嬢の頭のネジが飛んでいる……果たして自分らはこの地から逃れ生き残ることができるのか……そんな邪念を振り払い3人は罰を恐れ必死に走りだした。この3人の正体はあの元王太子の元側近達だ。
どうして廃嫡された3人が辺境伯領にいるのかって?それは遡ること一週間前……
◆◆◆
一週間前のマリン
「自由って最高っ!多額の慰謝料金貰ったから何もしなくて生きいけるわ!」
嬉しさすぎて踊り出してしまった。元婚約者の浮気相手、なんちゃら男爵令嬢のおかげで辺境伯領に帰ってこれた開放感、自己中の元婚約者、クズな側近3人から離れられたこと、そして一番は、大っ嫌いな王妃から逃れられたことに歓喜しているのだ。
「今日も平穏な1日になりそうだわ」
辺境伯領に来て半年が経ったマリンはずっとグータラしながら自由を謳歌していた。
「お嬢様、旦那様がお呼びです」
マリン専属の侍女サーヤが呼びに来た。母親と同じ歳の綺麗な容姿をした侍女だ。
「あら?なんの用事かしら?もう少しでティータイムだったのに」
父の元に向かう為、マリンは残念そうに重い腰を上げた。
コンコン!
「入っていいぞ」
「失礼致しますわ。お父様、用事とは何です?もう私にやることないはずですわ。もう婚約破棄の慰謝料をたんまりいただきましたし。そのお金で一生過ごしますから結婚の話しはなしと前に伝えましたよ」
「うぐぅ……自由にはしていていいが、せめて孫を抱かせ「それはお兄様に頼んで下さいませ」
父の夢は絶たれてしまった……
「グハァ……まだ諦めん……」
やはりまだ諦めきれないようだ。
「旦那様、諦めて下さいませ。お嬢様は一度決めた事は覆りません」
侍女サーヤはマリンの味方だ。
「いやだ〜っ!孫抱きたいよ〜っ!じいじって呼ばれて孫を甘やかしたいんだぁ。ジュールは脳筋馬鹿野郎だから当分結婚しないだろうしな。今あいつ何やってるか知ってるか?近々、私の後を継ぐのに殺し合いがやりたいからって皇国のコロシアムに出場しにいったんだぞ!」
「まぁ、さすがお兄様ですわ!これで辺境伯領も安泰ですわね」
「どこが?どこに安泰の要素があるんだマリン?私に教えてくれ!」
「だってお父様と同じ脳筋クソ馬鹿野郎ですもの」
「クソは付けてなかったぞ!クソは!自分の父に対して酷くないか!」
「お嬢様は王子の婚約者にしたことをまだ許せないようです。ついでに死ねばいいのにと思っております」
「最後のは、サーヤの思念だろ!」
「違います!2人です」
サーヤは真顔で即答した。サーヤもパトリックに怒りを抱いている。大切なお嬢様を辛い目にあわせた張本人の1人なのだから。
「えっ!私は思っていませんよ……」
マリンは違うと手をブンブン振っている。
「違いました!1人です」
「ほれ!そうだろ!お前はいつも私を目の敵にして!これ以上私に舐めた言動をするならマリン専属侍女を辞めてもらう!」
「それは無理でございます。マリン様からは絶対に離れません。もし辞めさせるようなことがありましたら奥様に泣きつきに行きます。そもそも旦那様に私を辞めさせる権限はありませんけど。では、失礼致します。旦那様がお嬢様とクズール殿下の婚約を許したことに対してまだ反省してないと奥様に伝えに行かさせていただきます」
ドアノブを掴み出ていく寸前で慌ててサーヤを止めた。
「待て待て待て!早まるでない。キャサリンに知られたら大変なことになるぞ……この私が!!許してくれ。この通りだ」
辺境当主がただの侍女に頭を下げた。夫人に告げ口されると本当に大変なことになるのだろう……命の危険が。
「そんなちっぽけな権力を振りかざし、お嬢様から離れさせようなど言語道断!」
全然ちっぽけではないがサーヤにとって関係ない。辺境伯領の影の実力者は辺境伯夫人キャサリンなのだから。
「わかったから!全て私が悪かったから、怒りを鎮めてくれ」
「わかりました。次同じような命令されるなら奥様に確実にお伝え致します」
サーヤは少し殺気を放った。
「わかった、わたかった」
パトリックは額から滴り落ちる汗を拭った。サーヤはキャサリンが辺境伯に嫁ぐ時についてきたキャサリン専属の侍女だった。幼い頃から姉妹のように育ち出自は不明だ。キャサリンに聞いても教えてくれない。キャサリンの侍女だから普通ではないとわかっていたパトリックだったが、ついうっかりそのことを忘れ、サーヤが我が子のように可愛がっていたマリンから離すというサーヤの地雷を踏んでしまったのだ。サーヤはマリンの専属侍女で護衛騎士でもある。実力は辺境伯騎士団No.1なのだ。
一応、表向きはパトリックがNo.1だ。
「次は気をつける……はぁ……話しが脱線したな。本題に入るぞ。2つ話があるんだ。まず1つ目は、我が領に王都から追放されてくる3人の令息……もう廃嫡されたから平民だな。平民3人が来るからマリンが対応しなさい。もう半年も遊んでいたんだからいいだろう」
「嫌な予感がするんですが、もしかして奴等ですか?一生会わないつもりだったのに」
「残念だが想像している通りだ。元王太子の側近達だ。じきに到着するからもてなしてあげなさい。辺境伯領のもてなしをな」
パトリックは怒気を顔に表した。さっきまでの脳筋クソ馬鹿野郎の雰囲気はなくなっていた。そうとう腹を立てているのだろう。
「いつのまに辺境伯領は生ゴミ処理場になったのですか!向こうで処理してくれればいいのに。これは私達への嫌がらせでしょうか。……あっ!いいこと考えましたわ。お父様!私に任せて下さいませ。辺境伯領最高のもてなしを存分に味わっていただきましょう」
マリンの顔はニヤリと悪魔のように笑った。生ゴミをどう処理しようか決定したようだ。
「そうだな」
「はい、前回は殴りと蹴りで終わってしまったので今回はじっくりお返ししたいと思います。今までやられた分を……」
マリンは根に持つタイプなのだ!やられたらやり返す!倍返しだ!
あれ!懐かしい、どこかで聞いたことあるフレーズだな?
「矯正して使えないようなら即処分していいぞ」
「はい!もう既に1人去勢されてますがしっかり矯正して使えないようなら地獄の苦しみを与えます」
「うん?1人ニュアンスが違うよな気がするが……まぁいいだろう。窮鼠猫を噛むってこともあるから気をつけるんだぞ。マリンよ、2つ目が重要な話なんだ……」
「クズール殿下関係でしょうか?」
「当たりだ。実はな王都で不穏な動きがあるのだ。王妃の派閥が王を亡き者にしようと企んでおる。そして幽閉されている殿下を王にしようと計画をしている。直にことを起こすだろう」
「チッ!だから、さっさと毒杯、斬首にしとけば良かったのに……」
マリンは舌打ちをし悔やんでいるようだ。
「お、お、マリンが元通りに‥」
以前のマリンに戻ってしまいパトリックはガクリと頭を下げた。もう礼儀正しいマリンはいなくなってしまったと……パトリックは頭を抱え悩んでしまった。本当にマリンの貰い手がいなくなってしまう。
そんな中、パトリックとは逆に喜んでいる者がいた。もちろんサーヤである。
「さすがお嬢様!やっぱお嬢様はこうでないと」
「もしかしたら、王妃派閥の謀反が成功したらこの辺境伯領に攻め込んできそうですね……なんてたって、クズール殿下の真実の愛の相手がこの領にいるんですもの。あのクズ殿下ならありえますわね」
「まぁ、そうだな……クズ殿下ならありえるな。はぁー、何故王は慰謝料と共に男爵令嬢を送ってきたのやら。嫌がらせか!今あの女は何しておるのだ」
しれっとクズール殿下からクズ殿下呼びに変わっていった。
サーヤが今フリンダが何をしているか答えた。
「今は芋の皮剥きしています。ですが直、クビにされると思います。彼女はワーワー騒ぐだけで仕事を一切しないようです。『自分は王妃になるのよ!だからそんなことしないわ』って騒いで皆に迷惑んかけております。料理の下拵えができないようでしたら奥様の愛玩動物ぷーちゃんの世話係をやって貰います。もうそこしか残っておりませんので」
「「えっ!!」」
パトリックとマリンは驚いた!もう男爵令嬢フリンダはもう終わりだと。
「……そうか……苦しまずに逝ければいいな。南無南無」
パトリックとマリンは手を合わせた。
「なんちゃら男爵令嬢に感謝していたんですが……惜しい人を亡くしましたね。クズ殿下と真実の愛の相手になってくれてありがとう。あなたのおかげで自由になれたわ。あとでクズ殿下をそこに送りますからもう少しだけお待ち下さいね。お二人お幸せに」
マリンは窓から覗く青空を見つめた。そこにいるであろうフリンダに……
「お嬢様!まだあの女は死んでおりません」
サーヤがツッコんだ。
「ふふっ、冗談よ。でも死んだも一緒でしょ。あとはクズ殿下が攻め込んでくるのを待つだけね。腕がなるわ!毒杯♪斬首♪毒杯♪斬首♪晒し首♪ 毒杯♪お父様も斬首♪晒し首♪毒杯♪斬首♪晒し首♪」
自分の手で引導を渡せるとマリンは上機嫌だ。
「おい!しれっと私を斬首晒し首にするな!ちゃんと聞こえてるんだぞ」
やはりマリンは、まだ父を恨んでいるようだ。
「さすがお嬢様!クズ殿下とついでにロリコン脳筋クソ馬鹿野郎も一緒に処分するなんて……一石二鳥ですわ」
「何?ここには私の敵しかいないのか?あとサーヤ、普通に私の悪口を言うな。そしてロリコンの称号増やすな!私は断じてロリコンではない!……マ、マリン、そんな汚物を見るような目で私をみないでくれ」
こうしてパトリックの尊厳がなくなった……じゃなくって!マリンの平穏な時間が終わりを迎えたのだった。
◆◆◆
次回予告!
愛玩動物ぷーちゃん登場!なんちゃら男爵令嬢の運命やいかに!
を予定しておりません。
読んで下さりありがとうございますm(_ _)m
ポチッと【☆☆☆☆☆】を押して応援して頂けるとモチベーションが上がり嬉しいです( ◠‿◠ )
モチベーションが上がりましたら続編を投稿する?かもしれません。
追加情報!3/13
いつのまにかポイントが800に達していました!評価してくださった方々ありがとうございますm(_ _)m
前作のポイントを超えましたら新たに続編を投稿したいと思います!
4/22現在
前作2154ポイント
続編1000ポイント
先は長いです!