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お悔やみ


 寒くなると亡くなる人が増える。


 毎日、地元のネットニュースでお悔やみページを見ているけれど、二、三日に一回は知っている名前が見つかるようになってきた。


 あの人、癌が見つかったって話してたの、つい最近だった気がするのに。


 あの人の在宅行ってたの、何年前だったっけな。


 旦那さん亡くなっちゃったんだ、奥さん大丈夫かな。娘さん仕事どうするんだろう。



 いろんな記憶や感情が去来する。



 ゆりかごから墓場まで、という言葉がある。



 本来用いられた言葉の意味とは違う意味合いにはなるけれど、薬剤師は患者をゆりかごから墓場まで見届けられる職種だと言われている。


 学生だった女の子が、名字も変わってお母さんになって、自分の子の薬をもらいに来るようになったり。



 親と一緒に連れられていた子が、いつの間にか社会人になって、自分の保険証で薬をもらうようになっていたり。



 また手術なんだ、ちょっと切腹してくるよ。なんて冗談を言っていたおじいちゃんが、すっかりやせ細って、奥さんに付き添われて口数がめっきり減ってしまったのを目の当たりにしたり。



 これ引き取れる? の言葉と、大量のエンシュアと共に、亡くなられた報告を家族から聞かされたりする。



 かかりつけ薬剤師なんて制度が始まって、もうすぐ十年になる。


 かかりつけとして自分を指名してくれた患者さんが亡くなるのは、それなりに辛い。


 落ちるときは結構それなりに落ちる。


 落ちたり引きずられたりする自分を自覚すると、プロじゃねえなあって自己嫌悪するときもある。


 他人だけれど、ただの患者と医療者という関係性に比べれば、それなりに密度の濃い関係だったと思える人もいる。


 だからやっぱり死んでしまうと、やっぱりそれなりに悲しいと感じてしまうのだ。



 亡くなってから『あなたにお世話になっていたと聞かされていたので、会ってご挨拶したくて』と、ご家族が挨拶に来てくれることもある。


 薬局の外を出ても、私のことを思い出してもらえるのは薬剤師冥利に尽きる。



 あいつに聞けばなんか答えそうだな、ちょっと聞いてみるか……とか。


 心配でたまらなくて、あなたの声聞いたら落ち着くと思って……とか。



 そんな感じで気軽に頼ってくれる。

 そんな相手として自分を選んでくれた人たちだった。

 


 昔、恩師が言っていた。


 患者が薬局に来ている時だけの点と点の繋がりじゃなくて、たくさんの点を作って、間隔を限りなく近づけて、線になるように患者と関わりたいって。



 かかりつけとして十年付き添ってきた患者さんが亡くなると、不思議なものでその先も線が続いているように思うことがある。



 もう次の点が打たれることはないのだけれど、その人と打ち続けた点の軌跡は、ずっと続いているように思えるのだ。

 


 そんな想いを感じながら、毎朝出勤前にお悔やみのページをチェックする。


 もしかしたら、今日で会うのが最後になってしまう患者さんがいるかもしれない。


 だから、大切に接していこう。



 そんな気持ちで仕事に臨む。

 弱い自分に負けないように。


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