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女神ノ穢レ  作者: 紅雪
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五章 在処ニ捧グ這生ノ炎 - 44.方針

「エウス、何か掴めたか?」

食事が始まると、エルメラが確認する。

「面目ございません。貴族院周りであろうと踏んで調べておりますが、現状有益な情報は得られておりません。」

宰相の件だろう。

私にはよくわからないけど。

でも、エルメラがお城を取り戻す手伝いならしたいと思う。

「よい。一旦中止して構わぬ。」

「よろしいので?」

「今朝方ニーメルラッゼ家の遣いが来てな、狸の情報を仄めかされた。闇雲に探るよりは、一度話しを聞いてみようと思うてな。」

「承知致しました。」

あ、もしかしてあのお姉さんかな?


「え!あたし会ってないんだけど。」

会う必要はあるの?

「情報を聞くには出向く必要はあろうが、遣いの者は何度も来るじゃろうな、おそらくは。」

あ、そうなんだ。

それで、またねって言ってたのかな。

「そっか。ならいいや。」

リリエルは言うと、その話しはもういいやとばかりに食べる事に集中する事にしたようだ。


「何度もって言うけれど、貴族の遣いが頻繁に訪れる必要はあるのかしら?」

私は特に気にしてないけれど、マリアはエルメラの言葉に胡乱気な眼を向けていた。

「故あってこの屋敷の出入りを自由にしておる。ニーメルラッゼ家の遣い、以外で来る事もあるじゃろうという事だ。」

「今日初めて会った人の出入りを自由にですって?私たちの立場はわかってる?」

う、また険悪な雰囲気に。

「そんな事はわかっておる。」

「情報に釣られて敵を懐に入れたんじゃなければいいけれどねぇ。」

「貴族の遣いが出入りしているとなれば、此処が襲撃される可能性も下がると思うがのぅ。」

「その襲撃が宰相ではなく、その貴族って可能性の方が高いんじゃなくて?」

「国内でそんな回りくどい事はせぬだろうよ。権力を行使すればいいのじゃからな。」


「待った!!」

「なんじゃ?」

「何よ?」

立ち上がって声を張った私を、二人が睨む。

恐い・・・

だけど、ここで怯むわけにはいかない。

「フィナメルシェは私の友達って事にした。ここも私がデダリオから譲り受けた家。友達が遊びに来るだけだから何の問題もない。それでいいでしょ。」

エルメラは笑みを浮かべただけだったけど、マリアは目が丸くなった。

「ふむ、家主の許可が出たので余は問題無いぞ。」

リリエルが笑いを堪えて親指を立てて見せる。

いや、私は面白い事なんて言ってないわよ。

真面目なのに。

「アリアちゃん強引になったわねぇ。」

いや、違うけど。

何故そんな嬉しそうに微笑むの。

「アリアちゃんに言われたら、お姉さんもこれ以上言えないわ。」

・・・

腑に落ちない。



「さて、待たせたの。」

「いや、待ってねぇし。ここの飯うまいから堪能してんだ、続けてていいぞ。」

確かに、もくもくと食べてはいるけれど。

エルメラの目がそれを許さないと語っているよう。

「アリアよ。」

「なに?」

「こやつと二人で過ごした夜の事を話してやるがよい。」

「ぶっ!まてコラ!」

噴き出して勢いよく立ち上がったグエンが私を睨む。

何で私なのよ。

「私に言わないでよ。」

「それよりおっさん汚いって、早く拭けよ。」

リリエルは言うと、近くにあった布巾を投げつける。

「な!俺の所為じゃねぇだろうが。」

布巾を掴んでグエンが不満を漏らす。

「いや、噴いたのおっさんだから。」

「で、アリアちゃん何があったの?事によってはお姉さんが仇を取ってあげるわ。」

死んでないし。

「そこ!蒸し返すな!」

口の周りを拭きながらグエンがマリアを指差す。

「まったく、余が真面目に今後について話そうとしておるのにふざけおって。」

「・・・」

エルメラの呆れた視線に、グエンは無言で拳を震わせた。

「寒いの?」

「違ぇわ!!」

やっぱり面白い。


「グエンよ、話しが進まぬから早う座れ。何時まで立っておるつもりじゃ。」

「はぁぁぁ・・・」

大きな溜息を吐きながらグエンは渋々座ると、自分の周りを布巾で拭く。

「‘ヒ’の状態はどうじゃ?」

エルメラの言葉に、賑やかだった食事の場が一瞬で静まった。

また、塵の事だ。

しかも、此処にいる以外の。

いつの間に増えたのだろうか。

「無事確保した後は隠れ家に移動して、回復させている。」

え、って事は、バルグセッツ?

「その隠れ家は安全なんじゃろうな?」

「あぁ。俺以外、俺の素性を知って世話をしている二人だけだ。当時エルメラも会った筈だが。」

「メウとレウか。であれば大丈夫じゃろう。」

知らない名前。

というか、新しい塵を救ったって事でいいのかな。


「エルメラデウス領に連れて行くんだろ?」

今は国の直轄領だけど。

「うむ。そのためにも、領は返してもらわねばな。」

「それ、いつになるかわからないわよね?」

現時点で、一番の問題。

「早々にニーメルラッゼ家へ出向く必要があると思うておる。その情報如何じゃな。」

「王様にお願いすればいいじゃん。」

リリエルはそう言うけど、多分そんな単純な話しじゃない。

そうだったら、エルメラは此処に居ない。

「独裁国家ではない。そう簡単な話しではないのじゃ。」

「めんどくさ。」

確かにね。



「それでじゃ、今後の予定について話しておく。」

さっきまでの賑やかな雰囲気は無く、エルメラの続く言葉を待つ。

「マリアとアリアはグエンの案内で‘ヒ’を迎えにいくのじゃ。」

「あら。久しぶりに遠出ね。」

ここも遠いけどね。

「あたしは?」

「余と一緒に狸退治じゃ。」

「いいじゃん。潰してやる。」

リリエルが不敵な笑みを浮かべながら言った。

「公国内で情報を固めてからじゃな。今すぐに行くわけではない。」

「あ、そっか。」

「それは余とエウスで行う故、待っていてもらう事になるがの。」

「うん、わかった。」

領の奪還と、新しい塵の迎え。

二手に分かれて事に備えるって事か。


今までは自分の事ばかりだったけど、エルメラはずっと準備していたのよね。

今ならそれがわかる。





翌朝、食事が終わるとマリアとリリエルはウリカの部屋に向かう。

私は出来る事がないので、二人にお願いだけした。


グエンは自分の部屋に戻り、エルメラはエウスと話しをしていたので、手持無沙汰。

周囲の散策でもしようと屋敷から出ると、ちょうど門から入ってきたフィナメルシェが目に入る。

歩く姿もかっこいい。

私に気付くと、柔らかい笑みを浮かべて手を振ってくれた。

私も振り返す。

私も大人になったら、あんな女性になれるだろうか。


「今日も来たんだね。」

「えぇ。エルメラは居るかしら?」

「うん、今案内するね。」

散策しようと思っていたけど、話しが気になるのでフィナメルシェを連れて屋敷内に戻る。

「アリアーランは、エルメラとどういう関係?」

「アリアでいいよ。うーん、領主の配下の一人?」

「うちもフィナでいいわ。だけど、どうして疑問なのかしら。」

といってクスっと笑った。

明確に関係を聞かれると返答に困る。

そんな事、考えた事も無かったから。

「あ・・・」

「どうしたの?」

昨日、言った事を思い出した。

「ここの出入り、エルメラが配慮したみたいだけど、それに対して懸念を持つ人もいて。」

「そうね、当然の事だわ。」

フィナは気にした風もなく頷いた。

「それで、私の友達だから問題ない!って勝手に友達にしちゃった、ごめんなさい。」

「あら、嬉しいわ。うちが友達でいいのかしら?」

「それはもちろん。私、で良ければ・・・」

自分勝手に言ってしまったが、迷惑じゃなかっただろうか。

「もちろんよ。仲良くしてね。」

「うん。」

「今度時間がある時に、美味しいお店に連れてってあげる。」

「ほんと!?」

「えぇ。」

「楽しみ。」


話しながら歩いていると、あっという間に部屋の前に到着した。

「エルメラ、フィナが来たよ。」

扉をあけ、入る様に促すと、エルメラに会釈をして入った。

「ちょうど良いところ来たの。例の件について、話しを聞きたいと思っておったところじゃ。」

「それはつまり、取り次いで良いという事かしら?」

「うむ。闇雲に探っても情報が得られるかわからぬから、少しでも欲しいところじゃ。」

「良い返事を聞けて良かったわ。早速戻って主に伝え、調整するわね。」

良かった。

これで何か情報が得られればいいけど。

「助かる。して、どの程度の内容か、教えてもらう事は可能じゃろうか?」

「うちの口からは言えません。ただ、関わった貴族院の事や、やりとりの内容についてと言えば望んでいる内容かと。」

「それは随分と核心じゃな。」

フィナは見た事が無い、妖しい笑みを浮かべて言った。

エルメラもそれに対し、口の端を吊り上げる。

「あらうっかり、今のは聞かなかった事にしていただけますか?」

「うむ。」

うっかりと口にしたが、表情は変わってないところを見ると、そうじゃないのだろう。

何かの駆け引きなのか、私にはわからない。


「ところで、アリアを少し借りてもいいかしら?」

え、私?

「余の部下はエウスだけじゃ。後は本人の自由だから好きにせい。」

「ありがとう。では、調整したら日程を伝えに来るわね。」

「頼むのじゃ。」

フィナはエルメラか離れると、私の方に向かってきた。

「良かったら、ちょっと外を回る?」

「いいの!?」

「少し時間が出来たから、アリアさえ良ければ。」

「行く!」

一人で散策しようと思っていたくらいだから、良かった。


それからエルメラに一言言って、私はフィナと一緒に屋敷を出で案内してもらう事になった。



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