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女神ノ穢レ  作者: 紅雪
38/72

四章 主ニ捧グ理明ノ焔 - 37.合流

***


アリアーラン。

お前がこれを読んでいるという事は、目的は達成されたという事だな。

おめでとう。


流石に無計画でお前と殺り合うわけにもいかないのでな、これを書いた。

状況的にはお前が死ぬ、俺とウリカが死ぬ、俺だけが死ぬ。

この三つだろう。

お前が読んでいる時点で一つ目は無いがな。


でだ、これを読んでいるお前に、以下を任せる。

・俺の屋敷の所有権

・屋敷の従事者の身の振り

・決闘した空き地の所有権

商流や得意先には屋敷の者が話しをするから気にしなくて良い。

もちろん、その他所有物に関しても気にする必要はない。


何故自分に?とか思うだろうがそうじゃない。

殺してはい終わり、じゃねぇんだよ。

そいつが生きて保持していたものの扱いまで責任持て。

復讐と言うお前の都合に付き合ってやったんだからな。

お前が奪うのは俺個人の命だとしても、その命に関わったすべてを相手にしたという事を自覚しろ。

我儘もほどほどにしとけ、くそ餓鬼。


まぁただで死ぬもの面白くねぇからな、嫌がらせ込みだ。

屋敷に居る一部の従事者にも伝えてあるから、逃げられると思うなよ。

確認する事は出来ねぇから、処分するなり皆殺しにするのも手だが、お前には無理だろ。

精々自己満足の代償に悩め。



ただ一つだけ。

ウリカだけは頼む。あれだけは、大切な娘だったんだ。

塵なら、俺なんかより世の中のくだらねぇ偏見から守れんだろ。


***





私は手紙を持っていた手を力なく下ろす。

考えていなかったわけじゃない。

考えない様にしていただけ。

デダリオの言う通り、それは私の勝手な都合でしかない。

でも、そうしないと、気持ちが揺らぎそうな気がしたから。

そんな事すら、デダリオはわかっていたのでしょうね。

でも、それはあんたも同じでしょデダリオ?


そう思うと、目線を上に向け中空を見上げる。

「なんて書いてあったの?」

「滞在中の寝泊りは心配無さそう。」

私は気になって聞いてきたリリエルに手紙を渡す。

「いいの?」

「うん。」


復讐は果たした。

でも、殺しただけ。

自分の死まで、私を掌で転がしていた様にしか感じない。

腹立たしい・・・


「うわ、嫌な奴。」

読んだリリエルが呆れた様に言う。

確かに、書き方はそうかもね。

してやられた事は腹立たしいけれど、書いてある内容はそうじゃない。

セアクトラの領主も、黒鷲の団長も、くそ司祭も、自分の事ばかりだった。

でも、デダリオは私を見て、正面から対峙してくれた。

そこだけは他の奴等と違うところ。


だから、ウリカも居場所として受け入れていたのかもしれない。


「で、宿引き払うの?」

「どうしようか。滞在費も嵩むし、此処を使う?」

「その方が良いかもね。エウスもエルも此処に来るなら、都合も良いし。」

そっか。

そういえばそうね。

「アリアーラン様。」

リリエルとこの後について話していると、大きな箱を持った侍女が声を掛けてきた。


「何?」

「お食事ですがもう少し時間がかかります。その前に、傷の手当てをしたいのですが。」

何それ?

「ご飯なんか頼んでないよ?」

「はい。朝の時点でデダリオ様より仰せつかっております。」

リリエルの疑問に侍女が淡々と答える。

手回しが良すぎる。

「まぁ食事はともかく、アリアちゃんの傷の手当は必要だね。」

「売られた。」

「違うっての!」

否定するリリエルを見たら、少し気持ちが軽くなった。


いろいろありすぎて困惑している事は変わりない。

自分の我儘を通しだだけなのもわかっている。

それでも、一段落には変わりないのか、多少気持ちが軽くなったような気はした。



落ち着いたら、あの丘に眠るお母さんに報告に行こう。

ここからだと二か月くらいかかるかな。

今まで行った場所、今なら違う気持ちや目で見れるだろうか。

違った景色に見えると良いな。

今までもこれからも、人殺しという事実は変わらないし、続くのでしょうね。

それでも、私は生きている。

居場所ももらった。

私が私として存在出来る。

その事で、お母さんは少しでも安らかに眠ってくれるだろうか。

「っ!!」


傷の手当てを受けながらそんな事に思いを馳せていたら、後頭部に鈍痛。

殴られたようで、何事かと振り返る。

「お主は何故そうなのじゃ・・・」

「エルメラ!」

「余が来た事すら気付かぬとは、腑抜けているにもほどがあるのじゃ。」

そっか。

そこまで抜けていたのね。

本当に気付かなかったわ。

自分でもここまで気が抜けるなんて思ってもみなかった。

手当てもいつの間にか終わっているし・・・


「エウスから聞いたが、この屋敷は使用していいそうじゃな。」

「うん。これ。」

エルメラにデダリオからの手紙を渡す。


「ほう・・・これは都合が良い。」

読んだエルメラは口の端を吊り上げて嗤う。

「ちょうど拠点が欲しかったところじゃ。」

「え、私の・・・」

「お主の物という事は余の物じゃろう。」

・・・

そうね。

これくらいで多少でも恩が返せるなら、それでいい。

「アリアーラン様、先程もお伝えしましたが事情があり、今後使える拠点があると助かります。その点についてはこの後説明します故。」

そういえば、エウスが現れた時にそんな事を言っていたわね。

別に使うななんて言ってないけど。

「別に良いよ。」

「うむ。心配せずとも屋敷と使用人含め、余に任せるのじゃ。」

・・・

初めからそのつもりだったんでしょ。


「で、アリアちゃんはどうしてこうなったのかしら?」

エルメラとの話しが一区切りついたところで、マリアが満面の笑顔で話しかけてくる。

「いひゃい、いひゃいれす・・・」

頬を抓る指の力が本気だ・・・

私だってなりたくてなったわけじゃないのに。

「まぁあまり期待はしてなかったけれど。」

信用されてなかったのね。

「とりあえず、後で傷を見せてね。」

そうだ!

「マリア、私の前に・・・」

「待つのじゃ!」

ウリカの事をお願いしてみよう思ったら、エルメラがそれを掻き消した。

「先ずは現状の整理じゃ。細かい事はその後にせい。」

確かに、そうよね。


何故エルメラが此処にいるのか。

それすらまだ聞いてなかったもの。

「皆様、お食事の準備が出来ましたので、食堂へご案内します。」

そこへ、傷の手当てをしてくれた侍女が来て言った。

「ちょうど場も出来たようじゃしの。」





「端的に言う。エルメラデウス領が国に巻き上げられた。」

・・・

は?

いや、結論はそうなんだろうけどさ。

「なんで!?」

食事中にもかかわらず、リリエルが椅子から勢いよく立ち上がって声を上げた。

「それってもうエルの城じゃなくなったって事?あたしはどこに帰ればいいのよ!」

確かにその通り。

お城が無くなったら、あの国での居場所が無い。

お母さんに報告した後、私はどうなるのだろう。


「リリエル様、落ち着いてくだされ。事情を含め説明しますので。」

エウスに窘められると、リリエルは椅子に座りなおす。

「面白く無い故、簡単に経緯だけ説明する。面白くない故・・・」

・・・

エルメラがかなり不満そうに言った。

本当に嫌だったんでしょうね。



「エルってさ、王様とどんな関係なの?」

話しを聞き終わったリリエルが笑みを浮かべながら聞く。

かなり興味津々だ。

「何か言ったか?」

それに対してエルメラも笑みで返した。

「こっそり王様と逢引きとか、気になるもん。」

惚けるエルメラに、リリエルはさらに踏み込んだ。

「聞き流すところじゃ。二度は言わんぞ。」

エルメラも引かずに返すが、笑みを浮かべているのは口だけで目が笑ってない。

恐い・・・


「それでね、この国にある別邸に行く前に、あななたちと合流する必要があったのよ。入れ違いになったら困るでしょ。」

マリアが二人を放置して話しを続けた。

なるほど。

ランフェルツ公国に別邸なんか持っていたんだ。

「確かに、入違ってお城に行ったら面倒な事になりそうね。」

「その時は使いを出すから心配無用じゃが、かなりの無駄な時間を浪費する事になる故避けたいところじゃった。」

あ、戻ってきた。

「しかしよくやった。別邸だけでは不便じゃかなら、都市内にあるこの拠点を手に入れたのは僥倖じゃ。」

要らないと思っていたけど、役に立つならいい。

私じゃどうにもできないし。


「別邸ってどこにあんの?」

私も気になる。

「半日ほど郊外に向かうと、貴族街があるのよ。」

そんな場所があるなんて。

「ただねぇ、貴族の住宅地だから普通の人は近付かないし、歩いていたら不審な目で見られるわよ。だいたいの貴族が自分の地位に胡坐をかいている人間だからねぇ。」

いや、そんなところで生活したくないんだけど。

「あたし此処でいい。」

楽しみそうな雰囲気で聞いたリリエルだったが、マリアの話しで嫌そうな顔をしながら言った。

「私も。」


「うむ。ただし、場所の確認だけはしておくのじゃ。ここで生活しても構わんが有事の際には集まれるようにの。」

どのみち、この国で生活する必要があるから仕方ない。

そう考えれば、デダリオをいきなり殺さなくて良かった。

この都市に居られない様な状況になっていたら生活の場所を探さなければならなかったから。

「余は貴族街でやらねばならぬ事があるから、エウスと共に別邸に居る。」

「それって、さっき話してた宰相の件だよね?」

「うむ。狸の化けの皮を剥がす必要があるのじゃ。」

その辺に関しては、私は何か出来そうな気はしない。


「私はどうすればいいのかしら?」

「手は借りるかもしれんが、それまでは好きにすればよい。」

マリアは確認すると、顎に指を当てどうしようかという仕草をする。

そうだ!

「アリアちゃんの傷もあるし、とりあえず此処に居る事にするわ。」

「うむ、問題無い。」

「私の傷より、マリアに治して欲しい人が居るの!」

「あら。」

思わず椅子から立ち上がって言った私に、マリアが首を傾げて笑みを浮かべた。


「そういえば、お主の此処での話しを聞いておらんかったの。デダリオと何があったのじゃ?」

エルメラの問いに、私はマリアにお願いする事になった経緯を話した。





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