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女神ノ穢レ  作者: 紅雪
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四章 主ニ捧グ理明ノ焔 - 33.脅迫

翌日、早速リリエルと二人でお店からデダリオの屋敷を観察している。

それよりも、私は目の前に置かれたお菓子の方が気になっていた。

・・・

少し前にご飯を食べたばかりなのに。

あまりに美味しそうで、追加で買ってしまった。

どうしたものか。

ご飯も美味しかった。

きっとこれも。

うーん。

「アリアちゃん、さっきからお菓子ばっか見てどうしたの?早く食べなよ。」

うっさい。


「でも、ご飯食べてまだそんな時間経ってないし。」

「えぇっ!」

「何よ?」

驚きの声を上げるリリエルに不満の目を向ける。

「かわいい。」

リリエルは笑顔でそれだけ言った。

「は?」

何を言い出したのかまったくわからない。

「少し前まで復讐がすべてで、他はどうでもいいって態度だったのに。最近女の子らしさがたまに出てくるんだもん。」

え・・・

いや。

「えぇ!?」

そんな事、意識した事無かった。

「うんうん、女子の悩みだよねぇ。」

そういうものなの?


意識した事なんて無い。

そりゃ、復讐が私にとってのすべてだったのだから。

傷が無くなった事による変化なのかもしれない。

未だに自分の身体じゃないみたいな感覚は消えないけれど、それでも傷の無い身体は嬉しく思う。

きっと、これが気持ちの変化。

こんな思い、できるなんて想像もしてなかった。


「若いうちに楽しめる事は楽しまないと。」

「いや、リリエルに言われるのはちょっと・・・」

「だってあたしも同じだもん。」

そうよね。

リリエルも一緒よね。

普段は可愛らしい女の子で、私とは違うなんて思っていたけど。

せっかくだから出来る事はしよう。


きっと今後も血生臭い生活からはきっと逃れられない。

それは私が塵であり、滓が存在し、それを巡る状況が変わらない限りは。


「おいしい。」

生きるのに必要な栄養源じゃない。

食べたいと思って、食べる楽しみや味って、楽しいんだと最近知った。

流石に最低限の味は必要だと思っていたけど、そうじゃない。

これが、普通なのよね。

「だけどさ、何日も居たら飽きるよね。」

「そうなの?」

「まぁ、アリアちゃんもそのうちわかるよ。」

そう。

こんなにおいしいのに。


「ねぇ。良かったら僕もご一緒していい・・・や、すみません、何でもないです!」

リリエルと雑談をしていると、一人の青年が爽やかな笑顔で話しかけてきたが、私が見ると逃げるように離れて言った。

「ぷぷ。」

「何あれ?私が何かしたみたいじゃない。」

私の顔を見るなり慌てて離れるなんて。

もう火傷の跡も無いのに。

「って、何で笑ってるのよ。」

「それそれ。」

「だから何?」

「アリアちゃん、可愛いんだけどね、眼が恐い。」

眼?


「瞳の色が無くなり吸い込まれるような闇で、相手を見据えるのは恐いんだよ。あたしはもう見慣れたけど、普通の人から見たらね。」

「え、私そんな眼してるの?」

そんなつもりは無かったのだけど。

「してた。今までそうしてきたから、沁みついてるんじゃない。」

「そう、かもね。」

好きでなったわけじゃないけれど、どうしようもない。

きっとこれからもそう。


だけど、いつか変わるのだろうか。




「今日は収穫無しだね。」

「そうね。」

長居するのも良くないとリリエルが言うので、朝から居たお店はお昼を食べて切り上げた。

時間をおいて夜は、別のお店で夕食を摂りながら窓の外を確認していたが、屋敷への出入りは無し。

昼間は多少あったものの、訪ねて来た人ばかりのようだった。

「そんな都合良く出て来ないか。」

「初日だものね。」

「うん。」

「とりあえず、また明日の朝から見張ろうか。」

「そうね。」


ただ、居座る日数が長くなればなるだけ、それはそれで気取られる可能性もある。

出来れば、早いうちに当たりをつけたいところね。




翌日、お店で朝食を食べつつ見張っていると、昨日の心配は他所に本人を確認できた。

「視線を向けないでね。」

「わかってる。」

「デダリオって呼ばれてたから、あの豚が本人で間違いないでしょ。」

言い方・・・

まぁ、殺す私が言えた事じゃないけれど。


屋敷前に停まった馬車に乗り込む、肥え太った中年男性。

デダリオと呼ばれていたので間違いない。

本人の視認は出来た。

後は、夜にでも屋敷内の居場所を窓からでも確認できたらいい。


「思ったより早く終わりそうだね。」

「そうね。」

これで、エルメラから聞いた情報では終わり。

他に関わった奴が居なければ。

終わってエルメラデウス領に戻ったら、改めてエルメラに確認してみよう。

他に無いと言われたなら、一段落した報告をお母さんにしよう。

ついでにガリウにも。

「今回はほんと、長旅だったね。帰りに王都で遊んで帰ろ?」

「うん、それも良いね。」

今までは無かった発想。

終わったら、私はちゃんと楽しめるだろうか・・・


「よし・・・」

「私で遊ばないでよね。」

笑みを浮かべて私を見るリリエルに釘を刺す。

「えぇ、もっと楽しもうよ。」

いや、楽しいのはあんただけだから。




そんな雑談をしながら、お昼を食べて帰ろうという話しになり、食べている最中に朝方出て言った馬車が戻ってきた。

デダリオを乗せた。

昔なら、出発した時に後を付けて馬車の中で殺していたでしょうね。

そんな事を思いながら、門の前に停車した馬車に目をやる。

何処かに行って帰って来たのだろう、馬車からデダリオが降りたのを横目に確認した。


もう本人の見た目は記憶した。

見ると沸々としそうだから見ない事にする。

後は、今夜から準備を詰めるだけだ。


「アリアちゃん、大人しくしてね。」

そんな事を思いながら続きを食べていると、突然リリエルが真面目な顔をして小声で言う。

その態度に私も警戒した。

誰かがこちらに近付いてくる気配がする。


おそらく、デダリオ本人だ。


「やぁお嬢さん方。」

やっぱり。

何故私たちのところに?

気持ちが落ち着かない。

どうしたらいい?

「何?」


リリエルが冷たい目を向けて確認する。

ここは、任せた方が良い。

私がデダリオを見たら、口を開いたら、理性より感情が勝りそうだから。


「態度の悪い小娘だな。」

「態度の悪いおっさんだな。あたしに用は無いんだけど。食事の邪魔だからどっか行ってくれる?」

そこまで言っていいのね。

「お前に無くても俺にはある。食事ならうちの屋敷で出すから来ないか?」

デダリオは言うと、自分の屋敷を指差す。

「此処より良い食事を出してやるぞ。」

待って。

それより意味がわからない。

何故、食事に誘うの?

「え、やだ。何されるかわかんないし。」

「別に何もせん。話しをしたいだけだ。」


行ったら・・・間違いなく殺す。

そう思ってリリエルを見る。

わかっているという様に、リリエルは頷いた。


「あたしたちが可愛いのはわかるけどさ、他を当たりなよ。肥え太ったおっさんに興味はないんだよ。」

「本当に口の悪い小娘だな。」

デダリオは顔を顰めて言うが、そこまでの苛立ちは感じない。

あんな事を言われれば怒りそうなものだけど。

それなのにあの余裕は何?

何か企んでいる?

「わかった、言い方を変えよう。」

「変えても一緒だって。気持ち悪いんだよ。」


リリエルが嫌そうに言うも、デダリオは冷静な眼差しで私たちを見た後、料理の乗っている机に顔を近づける。

「本当に気持ち悪ぃな。」

「黙れ塵共。」

!?

小声だが、低い声音に威圧。

嫌そうに離れようとするリリエルも動きを止めた。


「黙って俺の屋敷に来いって言ってんだよ。アリアーランとリリエル、だったか?」

名前まで知っているってどういう事?

何故デダリオは私たちの事を?

「誰それ?」

「惚けても無駄だ。それとも、此処で殺し合いを始めて追われる身になりたいか?」

「・・・」

「・・・」

「この都市の警備兵に追わせる事も可能な立場なんだがな。」


「アリアちゃん、逃げるの無理っぽい。」

リリエルが諦め混じりに言う。

正体が知られているなら、後でなんて考えても仕方がない。

もう行くしかないと思うと、その言葉に頷いた。

「まぁ、口は悪いが良い判断だ。お前らとは渡っている場数が違う。俺と張り合えると思うな。」

デダリオは言うと、顎で屋敷の方を指した。



私とリリエルは食事半ばで立ち上がると、デダリオの前を歩き屋敷への門を潜った。




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