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女神ノ穢レ  作者: 紅雪
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二章 姉妹ニ捧グ静寂ノ黒 - 15.実験

デリオは気の利く好青年だった。

ただ、痣を持っていたため、町人に迷惑を掛ける事にならないかだけいつも懸念していたらしい。

それは現実となってしまったが。


あんな事になってしまっても、火葬の時はそれなりの人が集まった。

もっとも、それは死亡した二人も一緒にお願いしたいと言われたため、二人に集まっただけかもしれないが、そこまでは推し量れない。

そんな邪推をする必要も無い。


デリオの異変は一カ月程前から起こっていたらしい。

それは些細な事からだった。

警備隊でもあったデリオは朝、畑に向かうついでに村の状況を確認する。

夕方にもう一度見回りをするが、その前後は町人からの頼み事があれば嫌な顔をせず受けていた。


だが、そのうちぼーっとするようになったらしい。

畑に行くのを忘れているようだったり、見回りの事を忘れているようだったり、頼み事を受けた後に忘れていたり。

その頻度も高くなり、エルメラに報告が行った。


エルメラは丁度いいと思ったのだろう。

私とリリエルがケープニアに向かうついでに寄れると。

確認若しくは処理。

それが可能だから。

手近なところで言えば黒鷲、が正解かどうかは怪しいと思わないでもない。

黒鷲のところに向かえばこの件に対応出来る。

そう考えて私に情報を伝えたとしても不思議ではない。


ただ、どちらにしろ殺す順番が変わるだけなので、私は構わない。




「街道から逸れたけど、寄り道?」

サウルの町を出て街道に戻り、暫く進んだところで逸れる。

分岐などの道が無く、人が入らなさそうなところ。

「うん。今夜は野宿だけどいい?」

「全然大丈夫!たまにはそっちの方が楽しい。」

私にとっては当たり前の生活だったけど。

エルメラに会ってからはその機会もだいぶ減った。

ありがたい事ではあるのだけど。

「で、何するの?」

「もうちょっと待って。やる時に説明するから。」

「じゃぁ野宿の場所が決まったら?」

「ううん。夜はちょっと・・・朝になったらね。」

「もう!気になるじゃん!」

後ろでばたばたしないでほしい。

馬も困っているじゃない。




滓の痣が力を発現した場合。

初回の戦闘時違和感を感じた。

確かに力も強く耐久性も高い。

普通の人からしてみればバケモノなのでしょうね。

ただ、動きはそこまで速くないし、動きが単調。

なにより、その場から動かない。


道中、その違和感をリリエルに話したら教えてくれた。

仮説としては脳が侵食され機能しなくなる。

そのためほとんど動かずに、近付いた生き物を反射的に攻撃しているのだろうと。

ただ、動かないわけではないので放置もできない。

だからこそ、エルメラが対処しているのだろう。


デリオの呆けた状態は脳が浸食され始めたと考えていいかもしれない。

それが発現の前兆だとすれば、避難や隔離等の対応も取れる。

私が思いつくくらいだから、エルメラは気付いているのでしょうね。

それが、末端まで共有されるのかどうか。


事象はそんなに多くないとエルメラは言っていたが、私は既に2回も巻き込まれた。

これはエルメラと関わったからではあるけど。

私一人であれば遭遇していない可能性は高い。

ただ、今後も短期間で起こる様であれば、人間の敵意が滓にも向かう可能性は否定できないと思わされた。

エルメラはその辺をどう考えているのだろうか。

それについても帰ったら聞いてみたいと思っている。


ただ、それも復讐のついででしかない。

それが終わるまでは、エルメラに協力するのかどうかも考えたくない。




翌朝、林の中で実験を始める。

「リリエル、私が炎を出すからそれを氷で包んでくれない。小さめで。」

「え、それじゃ消えちゃうじゃん。」

「大丈夫、消えない。」

普通の火は水で消せたり、空気が無いと消えてしまう。

厳密には空気ではないと思うけど。

密閉すると消えるから、おそらく空気中の何かの成分で燃えている。

それはさておき。

「本当に?」

「試してみればわかるから。」

「わかった。」

私は右手の人差し指を動かして止める。

「陽炎。」

掌を上に向けると小さな炎が揺らめいた。

「それを包めばいいの?」

「うん。」

「ちなみに、氷って火があたると溶けるよね?」

「もちろん。」

ならいい。

「じゃぁ、なるべく長時間穴が開かないように包んで。」

「わかった。」

リリエルが陽炎の炎に右手を向ける。

「蒼標。」

炎が氷に包まれる。


「これでいいの?」

「うん。」

見ていると、陽炎によって氷が解けている。

蒸発した水で中が曇って見えにくい。

「ほんとだ、消えないなんて不思議。」

私はその氷を掴むと、遠くに放り投げた。

「あ、何するの!?」

一緒に見ていたリリエルが私の行動に不満を漏らす。

「危ないから。」

「え、どういう事?」

「いいから、木の幹に隠れよう。」

訳が分からないという顔をしながらも、私の言う通りにする。


「何が起きるの?」

多分、予想通りなら。

「氷の礫が凄い勢いで飛んで来る。」

「え!?それ当たったら死ぬじゃん。」

当たり所が悪ければね。

「想定通りなら、なんだけ・・・」

その時、投げた方向から破裂音がして地面や木の幹、枝、葉等に何かが当たるような音が連続して起きる。

私が隠れた木にも当たったようで、衝撃が伝わって来た。

「げっ、本当に飛んで来た。」

リリエルが言いながら、木の反対側に回る。

「氷刺さってるじゃん!こわっ!」

リリエルが居る事が前提だけど、大きさを調整すればかなり使えそう。


・・・私は戦争でもするつもりなの?


「こんな危ないので何するつもり?」

「盗賊団とか、数が多そうじゃない?」

ゼラウス本人は絶対、直接私が、この手で殺す。

だけど、一人一人相手にするのは現実的じゃない。

デニエラ村とは違う。

雑魚だったとしても相手は盗賊団なのだから、数が多い程不利になる。

私の復讐はここで終わりじゃない。

だから、利用できるものは利用するのよ。

「なるほどね。」

「あくまで数を減らすためよ。ゼラウスを直接相手にするために。」

「あ、じゃぁあたしも黒鷲の本拠に行って良いの?」

「リリエルさえ良ければ。」

「もっちろん。」


独りで果たす。

そう思っていたけど、知らない雑魚まで相手にするのは違う。

私の都合などおかまい無しに、相手は攻撃してくるだろうから。

だったら、私もそれなりの準備はしたい。

炎を撒き散らすだけなら楽なのだけど、それじゃ確実に相手を追い詰められない。

逃げられる可能性もある。

建物が燃えたらそれどころじゃないし。


「ねぇ、なんか焦げ臭くない?」

・・・

「あ!」

私は慌てて陽炎の炎を見に行った。まだ揺らめいている。

「え、まだ消えてないの!?」

「もう少し。それまで燃え広がらないようにしないと。」

周りにある枝や葉、雑草などを炎から避ける。

「これが消えたら、ケープニアに向かうね。」

「うん。」


問題は事象の発生まで時間がかかる、というところね。

置く場所についても問題だわ。

陽炎にしろ氷にしろ、浮かせて置くことはできない。

人が集まっている場所に置く、という行為も非現実的。

時間については陽炎次第で改善する事は可能かも知れない。

試した事はないが、温度や大きさを変更すれば短時間で氷内の圧力を上げる事が可能だと思う。

やはり、一番の問題は運用面ね。

その辺は現地に向かいつつ、考慮しようかな。


炎が消えた事を確認して、そんな事を考えながら馬を置いていた場所に戻る。

・・・

居ない。

どういう事?

「さっきの音にびっくりして逃げたんじゃない?」

・・・

「徒歩だね。」

言われなくても分かってるわよ。

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