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白と黒の王女は幸福で平和な夢を見る  作者: 陽菜


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エピローグ 光と闇の新しい世界

 アダムを完全に封印した後、ピットは生存者達をサンライト公国に避難させた。そして、クリスティー王国に繋がる扉を封じる儀式を行った。

「ピット、本当にいいのか?お前のふるさとだろう?」

 立ち会ってくれていたクレマンに聞かれ、ピットは「えぇ。これ以上はこちらの世界に迷惑になるだけでしょう」と微笑んだ。

「私は最後の女王としての役目を果たすためにここまで来ましたから。だから、後悔はしていません」

「……そうか」

 アポイナから贈呈された王冠は、サンライト公国にある別荘に飾っている。それはアイナに保護された生存者達がいつでも見に来ることが出来るようにするためだった。


 シャッテン王国では、セドリック王が死んだという報告が来た。ダニエル達はその対応に迫られているらしい。カリスはその手伝いをしているようだ。

 ルーチェ王国も、戦争の傷跡が残されている。ピットはクレマン達と一緒にその跡を直していった。



 そうして、久しぶりにきょうだい達で報告もかねて会う日。カリスは一人、湖を見ているとマルクが声をかけてきた。

「カリス、姉さん」

「マルクさん。どうしたのですか?」

「なんとなくここにいる気がして」

 そう言いながら隣に立ち、同じように湖を見る。しばらく沈黙が続いたが、

「……私、ピットの人生に邪魔だったんじゃないかなって思ってしまうんです」

「え、なんで?」

 カリスの突然の言葉に、彼は驚いた表情をする。

 あの姉が、カリスのことを邪魔だと思うハズがない。だって、ピットは誰よりもカリスのことを愛していたから。

「だって、私がいなかったらピットはずっとルーチェで過ごせたハズです。……私、そんな幸せを壊してしまったんじゃないかってどうしても考えてしまうんです」

 カリスは涙を浮かべていた。マルクはそっと、彼女の手を握る。

「……そもそも、もし邪魔だと思っていたらピット姉さんもシャッテン王国に行かなかったと思うよ、僕は」

「そう、ですかね……」

「うん。……姉さんだって、ピット姉さんの愛情の深さはよく知っているだろ?自分を犠牲にしてまで守る人なんだよ、あの人は」

「……そう、ですね……ピットの優しさは、私が誰よりも知っています」

 そう言って涙を拭う彼女を見て、マルクは強く決意する。

「……ねぇ、カリス姉さん」

「はい、なんでしょうか?」

「僕、姉さんのことが好きなんだ」

 ――ピット姉さんには、これから幸せになってほしい。

 カリスは……これから、僕が守りたいから。


 夜、風に当たっているとジョセフが「ピット姉さん」と呼んだ。

「ジョセフさん。寝ないんですか?」

「ちょっと眠れなくてね……姉さんは?」

「私もそんな感じです」

 アハハ……と困ったように笑う姉に微笑み返し、ジョセフは隣に立つ。

「……星がきれいだね」

「ん?そうですね。ここまでゆっくり夜空を見たのなんていつぶりでしょう……」

 ピットはずっと一人で抱えてきた。それを知っているからこそ、その言葉に胸を締め付けられた。

「……私ね、何回か諦めそうになったんです」

 不意に、ピットが言葉を紡ぐ。

「たった一人で、きょうだい達を助けないといけない……そう考えた時、本当に出来るのかって思っていたんです。同時に、悲しくもなりました。もしかしたらどっちも救える道なんてないかもしれないって……」

「……姉さん」

「でも、みんなの笑顔を見ていたら諦めたらダメだって思わされた。……だから、ずっと頑張ってきたんです」

 その間、彼女はずっと孤独だったのだろう。自分なら耐えられない。……それが出来てしまうのが、「女王」たる彼女の強さだったのだろう。

「……ありがとう、見捨てないでいてくれて」

 カリス一人だけを助けるなら、ここまで苦労しなかっただろう。でも、彼女はどんなに冷たくされても決して見捨てなかった。

 ピットは小さく笑う。

「……別に、私が勝手にしたことですよ」

「それでも、姉さんが苦労したのは事実でしょ?何か欲しいものとかないの?」

「ほしいもの、ですか……特にないですね……」

 そうだよなぁ、とジョセフは思う。彼女は自身の名声などどうでもいいと思う人だ、そんなこと考えているわけもない。

「あ、そうだ。それなら一つだけ……」

「ん?何?僕に準備出来るもの?」

 しかし、ふと思いついたと言いたげに呟く彼女にジョセフは見る。

「むしろ、あなたにしか言えないことですよ」

「え、何々?」

「そんなに緊張しなくても、聞くだけでいいですよ」

 戸惑っているジョセフにクスクスとピットは笑う。そして、

「……私ね、ひとめぼれした初恋の人がいるんです」

「へ、へぇ……」

 それを聞いて、ジョセフは顔を引きつらせる。なぜなら、彼はピットのことが初めて会った時から好きだったからだ。

「何回も繰り返した今でも、私はその人が本当に好きなんです。頭がよくて、気遣ってくれて……きっと、私にはもったいないって思うほどに」

「……ん?」

 誰のことを言っているのだろうか?ジョセフの頭には、該当する人がいないのだが……。

「ジョセフさん」

 ピットは頬を染めながら、ジョセフを見た。

「私、あなたのことが好きです。ずっとずっと昔から」



 二つの国は、二人の王女のおかげで手を取り合うことが出来た。


 クレマンとダニエルは王として即位し、数年後にはアーダとクリステルを王妃として迎えた。

 コリンヌとエリーナは姉妹のように仲良くなり、よく出かけているようだ。

 ピットはジョセフとともに、クリスティー王国の封印が解けないように守護者として生きていった。

 カリスは両国のかけはしとしてマルクと一緒に幸せな時を過ごしていった。



 彼らの絆は時を超え続いていく。アイナはそれを見届けた後、行方知れずとなった。

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