ベッドは友達
母のドレスを涙でびちょびちょにした私はそのまま疲れ果てて眠りについた。
元来動ける程ないはずの筋肉を無理やり動かした代償は大きく、再びベッド生活へと戻った。検診の来た医者はひどく驚き、今までの体について教えてくれた。
病に弱く成長も乏しい体は体力や食欲を奪いさらに病弱さに拍車をかけていき5歳から10年間寝たきりとなっていた、むしろ生きているのが不思議なほど衰弱していたらしい。
そんな体を無理やり動かせは当然の結果といえば結果だろう、うっかりにもほどがある。
あれから母が何度か見舞いにきては少しづつ家具も増やして人間らしい部屋になってきた。
些か私からすれば少女趣味なような気がするがほぼ精神年齢5歳の少女からすればこうゆうのが好みなのかもしれない。家具が増えるたびに早まる鼓動を感じれば仕方ないと思わざるおえない。
しかしながら暇が過ぎる、意識があるのに動かない体に不満を抱かないわけがない。寝たきりだった幼い精神を持つエーレとは違い悠久とも言われる時間を生きる悪魔は快楽主義で奔放な性格・・・だった気がする私にとってはひどく退屈な時間だけが過ぎて行く。
悪魔としての本分は思い出せても自身に関する記憶がごっそり抜け落ちている、これも病弱な体に入り無理やり生かそうとして魔力を使った弊害かもしれない。すごく困る事はないが悪魔としての名前がわからないということはかなり使える能力が制限されてくる、少しの肉体強化と悪意や害意などがわかる程度しか使えない。
あくまでも困ることがないだけでひどく悩ましいことには変わりない。契約内容がどんなものであれ能力さえ使用できれば早急に終わらすことができるだろう。頭が良ければ面倒だがいくらでもやりようがあるだろうが思いつかないあたりかなりの脳筋だった可能性が高い。
それに眷属先さえ分かりさえすれば象徴とされる生き物を操り情報収集も出来たはずだ。
迂闊すぎてどうして契約したのか疑問に思えたが存外何も考えてなかったのかもしれないなと思いつつ通算10回目、天井の模様を数えることにした。