マイナカードはキラキラネームを衰退させるか
6月初め、戸籍法が改正され、戸籍に読み仮名がつけられることとなった。2024年度中に施行される。これにより「キラキラネームが衰退するかも?」という推測もあったが、私は「ほとんど変わらない」と考えている。
うちの子どもの同級生(中学生高校生)も、キラキラネームがそれなりに居る。女の子は2音、男の子は3音で画数が多い漢字、または男女ともに英単語の当て字、などが多く、読みと漢字の相互変換が難しいことは共通している。ただし同じ読みで漢字違いが何組もあり、読みだけでは姓名同じ例もあった。
改正戸籍法では、市区町村が持っている読み仮名の情報を元に「これを戸籍に流用して良いか」の確認が市区町村から確認されるのと、新規の戸籍届出の際に誤解させるような読み仮名(例示されたのは「一郎」と書いて「さぶろう」だったかな)を禁止する、だったと思う。「空」「蒼空」「宙」「宇宙」はたぶん全て受け付けられるだろうし、「宇宙」も多分大丈夫だけど「小宇宙」はちょっと怪しいし「小相撲」は都市伝説すぎてなんとも言えない。また、泡姫や黄熊が許容されるかどうかは実際に運用されてみないと分からないし、市区町村ごとに判断が揺れてトラブルの元になるかもしれない。
国会議員においては、本名にキラキラネームらしい名前は少なかった。これは年齢層がかなり高いこと、芸名や通称名も許容されること、親の名前を継ぐケースがあること、なども考えられる。「水脈」はキラキラネームじゃない!と主張されている人はいたなあ(世代的には「澪」、今なら「美緒」「美桜」「未央」あたりが多そうな気がする)。「博文」「博文」「博文」の揺れはどうにかして欲しい気もするが(一番最後は文部科学省大臣経験者だったりする)。
胡桃沢耕史の「翔んでる警視」シリーズ(1981年〜1994年)の主人公「岩崎白昼夢」は高校の国語教師だった親につけられたキラキラネームが嫌で改名をしようとしたが「正当な理由がない」と家庭裁判所に認められず、「改名を簡単にする会」に参加している、という設定があったと記憶している。明治の文豪・森鴎外がつけた子どもの名前のエピソードを知っていると、あり得る話なのかもしれない。なお最高裁のホームページによると、正当な事由とは「名の変更をしないとその人の社会生活において支障を来す場合」を言い、「単なる個人的趣味、感情、信仰上の希望等のみでは足りない」とされている。
元同僚で、子どもにつけた名前の画数が悪かったので、普段は別の字を使って実績を積んで家庭裁判所に変更を申請する、という人がいた(姓名判断の画数は、参考にする本ごとに揺れがあるので気にしなくても?と感じたが、親御さんにとっては重大な問題だったようだ)。また、漢字の読みが気に入らないので、戸籍に読み仮名が記載されていないことを利用して普段から気に入った読み仮名にして既成事実化する、という人もいた。ただ後者のケースは、今回の戸籍法改正で抜け道を塞がれることになりそうだ。
うちの下の子は協会健保の保険証に印刷された漢字に間違いがあり(2年くらい気づかなかった)、会社の総務に訂正を依頼したが正しい表記の保険証は何年も経つのに届かない。マイナ保険証の手続きをした後、「そういえば」とマイナポータルの情報を確認してみたら正しい漢字が登録されていた。
今回、マイナカードへの他の情報リンク作業をミスりまくって戸籍法を改正してまで読み仮名をつけたわけだが、本来は照合のキーとなるのが個人番号だった筈。缶切りが缶詰の中にあって慌てた、って事象なんだろうか。
役所って、建物や制度に愛称名ってことでキラキラネームつけたがるよね。個人番号カードにマイナンバーカード 、ポイント制度がマイナポイント、保険証機能がマイナ保険証。「俺、頭イイぜ」アピールなのかなあ。