15日目
早見視点の話になります。
さてさて、どうしたものでしょうか。
「明日は無事に終わるのかなぁ」そんな風につぶやきながら、明日の為の準備を進める。先生に気を使えと言った手前、私もそれなりに釣り合いの取れる振る舞いをしなければならない。
上はお気に入りの薄い青のサマーセーターにするとして、下はこの間買っておいたロングスカートを使おう。髪を仕事中と同じようにまとめておけば、清楚な印象になるだろう。
下着はどうしようか。。そう考えて少し恥ずかしくなる。
もちろんお見せするような状況にはならないつもりではあるけれど、男は狼というのは全ての先人が警告する言葉である。
「君が今日、このまま帰るようなら、今後、君の出版社では一切書かない。それでもいいのかな?」
想像してみて、あまりのギャップに笑ってしまう。流石に無いなぁ。仮にもラブストーリー作家だ。もう少しロマンチックに誘っていただきたいものである。
「君が笑うと、僕の心はいつも満たされる。これからも、こんな風に僕の心を温めてほしい。そうしたら僕は必ず君に愛の言葉を届けるから」
いやいやいや。。。どう頑張っても無理だろう。
先生に古臭いと言いながら、自分の想像の古臭さに呆れてしまう。まぁ、仕方ない乙女というのは古今東西、理想の王子様を胸に持っていて、現実のだれも、彼には勝てないのだ。
そんなことを思いながら私は、明日訪ねるであろう、東京駅近くの情報雑誌に目を通す。一夜漬けというなかれ、私だって、東京歴は長くない。
まぁ、知らない者同士で観光地を回るのもいいと思う。先生が少しでも周りの空気に刺激を受けてくれればいい。周りの恋人たちがどのように過ごしているのかを見るだけでも何か得るものがあるはずだ。
雑誌を見終わった後、私はコンビニのサラダボウルを晩御飯にして、眠りについた。布団の横には先ほど選んだ服と、花柄の下着の上下セットを準備しておいた。