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第八話

 日曜日。

 ついにこの日が来た。


 昨日は緊張で眠れないのでは、と思ってたが、服を買いに行った疲れが思ったより大きかったらしく、夜の十時にはそれはもうぐっすりと眠っていた。こんな調子じゃ一生一人で服買えないな……。


 ……まあそのおかげで、かなりコンディションの良い状態で今日を迎えることができた。


 少し早いけど出かける準備しておこうと、洗面所で髪型を整える。

 といっても寝癖とか直すだけだけど。

 いつも学校に行く時は面倒だから直してないけど、今日はふぉっくすさんと会うんだから失礼のないようにしないとね。


 鏡を見ておかしいところがないか確認する。

 ……眼鏡かけてないからあんま見えんな。

 寝る前に外してそのままだったのを忘れてた。

 まあ今は近づけば確認できるし、後で自分の部屋まで取りに行こう。






「……あれ?」


 寝癖も直し終わって、自分の部屋へ眼鏡を取りに来たんだけど……。

 なぜかどこにもない。確かに昨日机に置いといたはずなのに。


 ……ん? よく見たら眼鏡を置いといた場所になんか紙あるな。

 なになに……?


『私の眼鏡割れちゃったから新しいの買いに行ってきます♪ どうせ陸くん今日も家に引きこもってるだろうし、このままじゃ車運転できないから眼鏡借りてくネ! 愛しの母より♡』


「Oh……」


 なんてこった。通りで朝からいなかったのか……。

 というか人の眼鏡勝手に使うなよ……。しかも寄りによって今日って……。


 ……仕方がない、今日はコンタクトで行こう。

 あんまり好きじゃないんだけどなぁ、コンタクト……。




 ***




 いろいろあったがなんとか準備も終わり。

 俺は待ち合わせ場所である、西駅前のファミレス『ガーデニア』へと向かっていた。

 予定時間よりもかなり早く着いてしまいそうだが、まあ先に中で待っておこう。


 一応早く着くことを連絡した方がいいかもしれない。

 そう思ってスマホを取り出していると、ちょうど通知が来た。どうやらふぉっくすさんからのようだ。


『すみません、もう着いてしまったので先に中で待っていますね!』


 ふぉっくすさんももう着いたらしい。

 まだ待ち合わせ時間までは三十分程度ある。

 ふぉっくすさんも楽しみだったから早く着いてしまったのだろうか。もしそうだとしたら、なんだか嬉しい。


『俺ももうすぐ着きます! 今日はよろしくね!』


 そうメッセージを返して、少し早足で向かう。

 あまり待たせるのも申し訳ないしね。






「いらっしゃいませ! 何名様でしょうか?」

「あっ、あの、待ち合わせで……先に待ってる人が……」

「あっはい、先程伺っております! ご案内しますね!」


 待ち合わせしてる時に、何人で来たかを聞かれた時ってなんて答えればいいんだろうか……。

 なんかめちゃくちゃしどろもどろになってしまったが、店員さんに伝わったようで良かった。

 そのまま店員さんに連れられて、奥の方の角の席に案内される。


「それでは、ごゆっくりどうぞ!」

「あっ、ありがとうござい……?」


 案内された席には、女の子が一人。

 もしかして、別に待ち合わせしている人と間違えて案内されたのだろうか?


「すみません、間違え──」

「『クロノス』さん、ですよね?」


 その言葉に一瞬、心臓が強く跳ねる。


 な、なんでその名前を?

 えっ?

 ってことはこの子が──。


「初めまして、『ふぉっくす』です。今日はよろしくお願いしますね」


 ──微笑みながらそう告げる彼女が、いつもSNSで話しているふぉっくすさんだということを頭でちゃんと理解できたのは、そこから三十秒程経った後だった。

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