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第七話

「それにしても、クロにぃもったいないよね。趣味と服装と性格変えたら絶対モテるのに」

「……いやそれ褒めてないよね? 多分どんな奴でもそこまで変えたらモテると思うよ……」


 服装はまだなんとかなるけど趣味と性格はもうどうにもならない。というか俺からオタク趣味取ったらホントになんも残らんぞ……。


「あははっ、冗談だよ! 私もアニメとかよく見るし。でも、私としてはあんまりクロにぃにモテてほしくないんだけどね。一緒に遊ぶ時間少なくなるの嫌だし」

「心配しなくても、俺がそんなモテる機会なんて未来永劫ないと思うよ」


 そんな会話をしながら、駅に併設されている商業施設のアパレルショップへと向かう。

 昔っからずっと一緒に遊んでいたのもあってか、美羽ちゃんは俺を本当の兄のように慕ってくれてるんだよな。

 ……いや、酒井に対しては結構手厳しいから本当の兄以上に慕ってくれてるな……。

 可哀想な酒井……。


「あ、そうだ。クロにぃはどんな服がいいとかある? トップスは明るめのが好きとか、ボトムスはチノパンが良いとかさっ」

「い、いや……特にこだわりはないかな。美羽ちゃんが適当に見繕ってよ」


 そんなトップスだかトッポギだか専門用語で言われてもなにも分からない。なんだよチノパンって。チンパンジーの進化前か?

 下手を打たないように、美羽ちゃんに全部任せてしまった方が良さそうだ。


「りょーかいっ! そしてとうちゃーく!」


 そんなこんなであっという間に目的地へと着く。

 アパレルショップなんかに自分から足を運ぶなんて思ってもみなかったが……。やっぱりこう、服がずらりと並んでるのを見ると、陰キャの血が『ここは危険!』って騒ぎ出し始めるな……。


「み、美羽ちゃん。おっ俺はどどどうすればいい?」

「クロにぃ緊張しすぎ……。もっとリラックスして大丈夫だよ。 私が服選ぶから、クロにぃにはその服を試着室で着てみてもらいますっ! じゃあまずこの服着てみようか!」


 そう言って早速服を渡してきた。

 やっぱり頼もしい。

 酒井が来てたら二人でワタワタしてなにもできないまま帰ってただろう。なんだかんだ酒井も陰キャ気質強いし。見た目はあれだけども。


 渡された服を持って試着室へと入る。

 勝手に入っていいか分からなかったけど、周りのお客さんも特に店員に言わないで入ってるっぽいしまあ大丈夫だろう。


 さっさと着替えてこんなところから帰りたい。

 ……なんか、家以外で服脱ぐのちょっと恥ずかしいな。目の前が全身鏡だから余計に変な感じするし……。



 着替え終わって、鏡に映った自分を見る。

 うーん……分からん。万年ジャージマンにはこれが良いのか悪いのか判別できんな。


「クロにぃ、どうー? 着替え終わったら一旦出てきてねー」

「あ、おっけー」


 試着室の外から声がかけられる。まあ美羽ちゃんに見てもらえば善し悪しも分かるだろう。


「どうかな、美羽ちゃん」

「うん、いい感じだね! やっぱりクロにぃ、結構華奢な体付きだからメンズよりユニセックスの服の方が似合うっぽいね。よし、じゃあ次はこれ着てみて!」


 そう言って、別の服を渡してくる美羽ちゃん。


「ま、まだ着るの? この服結構いい感じならもうこの服買ったらいいんじゃ……」

「何言ってるのさクロにぃ、一着だけで判断なんかできないよ! まだまだ着てもらうからねっ!」


 ……当分は帰れそうにないな。




 ***




 なんとか無事に服を買うことができた。三時間かかったけど。


「今日はありがとね、美羽ちゃん」

「ううん、私も楽しかったよ! ……そういえば、なんで急に服なんて買ったの? いつもウチに来る時もジャージなのに。……も、もしかして、デートとかっ!?」

「そんなわけないだろ……。明日、ネットの友達と会うんだよ。今までずっと仲良くしてきた人だから、さすがにジャージとかで行って幻滅させたくなくてね」

「なーんだ、そうなんだね。てっきり彼女でもできたのかと思っちゃった」


 美羽ちゃんはなんでこんなに僕への評価が高いのだろうか。僕に彼女ができるくらいなら、酒井なんかとっくに彼女いそうだけどな。

 ……まああいつ『二次元以外と付き合うとか無理だろ』とか言ってたけど。模範的オタクだな……。


 そんなことを話している内に、酒井の家へと着く。


「じゃあねクロにぃ、また今度遊ぼうね!」

「うん、また今度ね」


 美羽ちゃんを見送ってから、俺も帰路に就く。


 ……まさか陰キャの自分が服を買いに行くなんて。

 なんというか、俺もやれば服くらい買えるんだぞ、みたいな達成感が少し出てきた。実際は美羽ちゃんにおんぶに抱っこの状態だったけども。


 ともあれ、これで明日のオフ会の準備万端だ。なにも憂うことはなくなった。

 赤信号で待ってる間、特にやることがないのでSNSを開く。


『準備万端。明日楽しみだなぁ。』


 そんなツイートで時間を潰しつつ。

 明日、楽しい一日になりますように。そんなことを思いながら、青になった横断歩道を渡るのだった。





『ふぉっくす@祝きつきみ十二巻&転セカ六巻発売! さんからいいねされました。』

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