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第四話

 特に噂が広まることもなく。


 家に帰ってきた俺は、いつものようにアニメを見ていた。

 今日放送されたのは『おふかい!』の二話。

 ちょっと変わってるけどムードメーカーでマイペースな女の子が、いろんなゲームやSNSのいろんな人といろんな場所でオフ会を行う、ほのぼの日常アニメだ。


 正直言うと、最初はあんまり期待していなかったアニメだった。

 けど蓋を開けてみれば、きつきみに負けないほどの面白さ。現時点で今季アニメランキングをつけるなら、トップスリーには絶対食い込むだろう。


 そんなにも面白い作品を、オタクが視聴するとどうなるかといえば。


「……オフ会したいな」


 簡単に影響を受ける。

 これはもうオタクの性なのだろう。

 酒井だって影響を受けたからあんな筋骨隆々になったんだし。


 だがしかし。

 筋トレとは違い、オフ会は相手が居ないと成り立たない。

 もし仮にオフ会に参加したとして、相手が陽キャだったら俺は光の粒子となって消え失せるだろう。


 なら陰キャ相手なら大丈夫か、といえばそんなことはない。

 趣味の合わない相手とオフ会してしまえば、コミュ障の俺は成すすべがない。そのまま沈黙とともに、闇の一部と化してしまうだろう。


 ゲームチームでのオフ会とかなら、共通の話題もあって楽しそうだが、あいにく俺は今大体のゲームは野良でやっている。


 うーん、どうするべきか。

 共通の趣味で、陽キャじゃない。それに話も弾みそうな相手なんてなかなか居な──。


 ……居るな。ふぉっくすさんが。


 ふぉっくすさんなら楽しく話せそうだし、前々から会って喋りたいと思っていたからちょうどいい。前にツイートで俺と同じ県に住んでるって言ってたから、交通費もそんなにかからないだろうし。


 最初から二人でオフ会をするのはもしかしたらハードルが高いのかもしれないが、俺が人生の中で培ってきたコミュニケーション能力は、そのほとんどが酒井と一対一での会話で形成されている。むしろ複数人でやるよりも良いかもしれない。


 よし、ふぉっくすさんを誘おう。

 思い立ったが吉日、早速ふぉっくすさんに連絡する。

 リプライ……よりはダイレクトメッセージの方がいいか。

 場所とかも決めないといけないし。


『こんばんは、ふぉっくすさん。いきなりDM送ってごめんね! アニメ見てたらオフ会したくなっちゃって……。もし良かったらだけど、今度暇な時にでもオフ会しない? 前から直接話してみたいと思ってたんだよね。』


 文面はこんな感じでいいかな。

 ……なんか少し出会い厨っぽい感じもするけど、まあ男の人相手だし問題ないか。


 ……しかし、いざ送るとなると恥ずかしいな。

 でもここで躊躇してしまったらいつまでたっても送れない。ええい、ままよ!


 送信!

 これであとは返信が来るのを待つだけ──


『ふぉっくす@祝きつきみ十二巻&転セカ六巻発売! さんからのダイレクトメッセージがあります。』

『是非! 是非行きたいです! 私もクロノスさんとお話したいです!』


 は、早いな……。時間を確認してみると、送ってから二十秒しか経っていない。

 たまたまSNSを開いていたのだろうか。

 なんにせよこれで決行すること自体は決まった。さらに二人で詳細を決める。



『よかった、断られなくて……。それで、日時とか場所とかはどうしようか。俺はいつでも暇だから、良かったらふぉっくすさんが決めてくれないかな?』


『私が断るわけないじゃないですか……! うーん、そうですね…… それじゃあ今週の日曜日の十四時に、西駅前のガーデニアとかどうですか?』


『了解、それじゃあよろしくね!』


『はい! よろしくお願いしますね!』



 ……決まってしまった。


 自分から誘ったものの、わりと勢い任せな部分もあったので、今更ながら緊張してくる。

 っていうかそもそも普段酒井以外と話さないのにちゃんと話せるのだろうか。

 急に不安になってきた。



 ……でも。


「……楽しみだな」




 結局その日は緊張と興奮で一睡もできず、次の日の授業中爆睡した。

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