第二話
「図書委員への連絡です。急遽集まりがあります。各クラスの図書委員は十六時四十分までに図書室へ集まってください。繰り返します──」
机の中の教科書をバッグに詰めていると、教室の角隅の上の方に設置されてるスピーカーからあまり音質の良くない放送が流れる。
こうやって突然呼ばれたりするから委員は大変だな。
誰だ? ウチのクラスの図書委員は。
「呼ばれたみたいだぞ、お前」
……そういえば俺じゃん。
最近活動がなかったからすっかり忘れていた。
委員を決める時、前日の徹夜アニメ視聴会によって爆睡していた俺は起きたら図書委員になっていた。
「ま、お前遅くなるみたいだし先に帰っとくわ。委員の仕事頑張れよ。あー、帰ったらラブトレ見返そ」
酒井が早く帰れて羨ましいだろ? みたいな目でからかってくる。
覚えとけよ、次の生徒会選挙の時に立候補用紙に酒井智也って書いて提出してやるからな。
そんなくだらないことを考えつつ、図書室へ足を運ぶ。
この学校の図書室は別館にあるから結構遠い。ただそのおかげか、あまり利用者がいないから休み時間は過ごしやすかったりする。陽キャも少ないし。
図書室へ着くと、既に大半の図書委員は集まってるようだった。急いで俺も席に着く。
俺の着席を確認すると、前で注目を集めている女子が話し始める。
「これで全員集まりましたね。急な呼び出しに関わらず、集まっていただきありがとうございます。本日は、来月の図書月間を我々生徒会と図書委員会で連携して行うための第一回企画会議として集まってもらいました。具体的な経緯は──」
凛とした態度で話す彼女は確か……生徒会副会長の伏見早織さんだったか。
一年生なのに生徒会長から副会長に指名されたらしい。同じ一年生として格の違いを感じる。
「──そのため読書推進のみならず、図書室の利用者増加を目的として、今回我々生徒会と図書委員会が連携する運びとなりました。遅くなりましたが私は、この企画のリーダーとして担当させてもらう伏見早織です。分からない点があればいつでも聞きに来てください」
……それにしても、しっかりしてるなぁ。
頭脳明晰で、容姿端麗。長く透き通った髪に、白い雪のような肌。
正に高嶺の花って感じだ。噂だと男子だけじゃなくて女子にもモテてるらしい。
……なんか、一時期すごくハマってたアニメのキャラに似ている気がする。クールな感じとか。
あの時『最高のヒロイン! 付き合いたい!』みたいなツイートばっかしててフォロワー激減したんだよなぁ……。
……嫌なことを思い出してしまった。話に集中しないと。
「というわけで、今から配るプリントに行えそうな企画を書いて来てください。期限は……そうですね、今週の金曜日にしましょう。その日の放課後にまた会議を開くので、その時に提出をお願いします」
なんか宿題出てた。そもそも企画ってなんだ?
やばい、全然話聞いてなかった……。
配られたプリントを見る。
どうやら来月の図書月間にできる企画を考えろ、との事だ。
うーん、そんなのパッと思いつかないな。まあまだ時間はあるし、家でゆっくり考えとこう。
「それでは本日の会議を終わります。皆さん、お疲れ様でした」
会議も終わったらしい。ほとんど話を聞いてなかったが、まあ問題ないだろう。
カバンを持って足早に学校を出る。
今日は楽しみにしてたラノベの発売日なので、本屋に寄らないといけない。
委員会活動で予想外に時間を取られてしまったが、急いで買って帰ろう。
本屋に着くと、お目当てのラノベが積まれていた。
『転生者が蔓延る世界で送るスローライフ』。御しきれない転生チート達を仲間にした主人公が、苦労しながらもスローライフを楽しむ名作だ。
今日はこれだけを楽しみに生きてきたからな。早く読みたい。
急いでレジに並ぶと、ウチの制服を着ている人が会計しているのに気づく。別に珍しいことでもないのだが、その後ろ姿に見覚えがあった。
間違いなく伏見副会長だろう。参考書でも買ってるのだろうか。
それにしても、俺も結構早く本屋に着いたと思ったのだが、それよりも早く着いてるとは。
さすがは副会長。キビキビと行動できる人じゃなきゃ務まらないのだろう。
俺もあんな人みたいに……なるのはまあ無理だろうな。絶対ラノベとか読まないだろうし。
会計済ませた俺は、何だか今日縁がある副会長を軽く尊敬しながら、帰路に着くのだった。