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第十五話

「ええっと……そっちの人は?」


 男装少女が少し困惑気味に早織さんへと訊ねる。


「しばらくの間、生徒会の仕事を手伝ってもらうことになった黒木場さんです」

「あ、そうなんだ……って、手伝い!? ホント? 黒木場くん!」

「えっ、あっ、はい」


 すごい勢いで訊いてくるな……。


「ああ、これで普段の激務も少しは楽になるんだね……!」


 天を仰ぎながら涙ぐむ男装少女。

 よ、よっぽど大変だったんだな……。


「……っと、ボクの自己紹介がまだだったね。ボクは二年B組の水無瀬楓(みなせかえで)。生徒会会計を務めてますっ! よろしくねっ!」

「あ、一年F組の黒木場陸です。よろしくお願いします」


 俺も軽く自己紹介を済ます。

 ……ていうかなんで男子の制服を着ているのだろうか……。


「それにしても、まだ伏見副会長達しか来ていないのかー。他の三人はなにしてるんだろう?」

「牧庶務は受験勉強で来られないと連絡がありました。ただ……」


 既に諦めていると言わんばかりの顔をしながら、続けて早織さんが話す。


「……橘書記は『今週までにダイヤランクに上げないといけないから』とかよく分からないことを言い残して帰りました。桜井会長は……ふふっ……」


 いや目が笑ってない。怖い。


「はぁ……。ということはいつも通り二人で……いや、今日は黒木場くんがいるから三人での仕事だね」


 ……なるほど。

 なんとなく、なんでこんなに早織さんたちが忙しそうにしているのかがわかった気がする。

 もしかしたらいつもこの二人だけで、生徒会の仕事のほとんどを行っているのかもしれない。

 そう考えると、さっきの水無瀬先輩や昨日の早織さんの反応にも頷ける。

 ……せめて、少しでも二人の負担がなくなるように頑張ろう……。



 *



「えっと……。ウィッグが二個に、未使用の風船が二袋……。っと、これは……? ってうわっ! ……な、なんでマネキンの頭だけがここに……」

「あ、それ去年ボクのクラスの飾り付けで使ったんだー」

「あーなるほど。水無瀬先輩のクラスってお化け屋敷かなにかだったんですか?」

「ううん、ボードゲームカフェだったよー」

「あっ、そうなんですね。……あれ?」


 なんでボードゲームカフェでマネキンの頭なんか飾ってるんだ……?

 ま、まあいいか。


 それにしても……。

 なんだか水無瀬先輩、話しやすい気がする。

 いつもなら初対面の相手なんて話すどころか一緒にいるのだってしんどいのに、水無瀬会計からはそれを感じない。

 俺の陽キャレーダーにも引っかからないし。

 みんながみんな、こんな人ばっかりなら俺のコミュ障も治るのにな……。


「こっちのダンボールは終わりましたよ」

「俺の方のも終わったよ。あと何個だ?」

「ええっと……あと一つかな? ラストスパートだね!」


 備品の整理に取り掛かってから一時間半。

 作業はだいぶ順調に進んでいた。

 この調子ならあと十五分もかからないだろう


「そういえば、黒木場さんは生徒会の手伝いをする期間っていつまでか決めてますか?」


 不意に早織さんがそんなことを訊いてくる。

 いつまでって……。

 そういえば考えてなかったな。

 うーん……。といっても別に結構先まで暇だからなぁ……。


「いや。期間は決めてないけど、当分の間は手伝えると思うよ。まあ忙しくなくなるまでは手伝うつも、り……」


 俺はそこまで話して、二人が小刻みに震えているのに気づいた。

 しまった、なにか怒らせてしまったのだろうか──。


「えっ、神?」 「神様ですか?」


 違った逆だった。


「神って……そんな大袈裟な……」

「大袈裟なんかじゃないですよ! 私たちが普段どれだけ苦労してるか……! 分かってくれる人なんて黒木場さんくらいです!」

「そうそう! 会長なんて多分自分の仕事内容知らないからね……。それに比べたら、黒木場くんなんて神にも仏にも見えるよ!」


 苦労してるんだなこの二人……。

 さっきも思ったけど、せめて俺が手伝っている間は負担を減らせるように努力したい。


 そんなことを考えつつながらも、俺は作業を進めていった。

5/26 黒木場から水無瀬への呼び方に少し違和感を覚えたので修正しました。

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