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第十四話

「今日は珍しくずっと起きてたな。ちゃんと眠れたのか?」


 六限目も終わり授業から解放されて少し騒がしい教室の中で、酒井が訊いてきた。


「昨日はいろいろあって疲れたから、帰ってアニメ見てたらいつの間にか寝てたよ。……ていうか、昨日の放課後起こしてくれよ。起きたの夕方の六時過ぎだったんだぞ」

「ああ、わりいな。昨日急にバイト入って、お前を起こす時間もなかったんだよ。それに、そもそも授業中から寝てるお前が悪い」


 確かに。

 ぐうの音も出ない。


「まあ今日はバイトないし、さっさと帰るか」

「ああ、ごめん酒井。しばらくお前と帰れないかもしれない」

「あれ、そうなのか。そりゃまたなんで──」

「失礼します。黒木場さんはいらっしゃいますか?」


 酒井の声を遮るかのように、早織さんの澄んだ声が教室に響き渡る。


「……なんだ、お前またなにかやらかしたのか?」

「いや別にやらかしてないから……。今日から生徒会の手伝いをすることになったんだよ」

「せっ、生徒会!? お前が!?」


 そんなに驚かなくてもいいのに……。


「まあそういうわけで、しばらくは一緒に帰れない。じゃあ早織さん待ってるから行ってくるわ」

「さっ、早織さん……!? 名前で呼ぶ仲なのか!? すげぇなお前!」


 さっきからこいつの妙な反応はなんなんだ……。

 まあ無視しよう……。



 *



「今日からよろしくお願いしますね、黒木場さん」

「うん、よろしく。それで、今日はなにをすればいいんだ?」

「そうですね……今度の文化祭で使う備品の整理やリストアップをお願いします」


 そういえば、もうすぐ文化祭か。

 生徒会って備品の整理とかも担当するんだな……。

 そりゃ大変なわけだ。


「生徒会室に備品のダンボールがあるので、手分けして頑張りましょうねっ」


 仕事の話なのに、少し嬉しそうに話す早織さん。

 なんだか、遠くで伏見副会長として見ていた時とは大きく印象が変わって感じる。

 クールビューティというか、なんでもできる完璧な人って思ってたけど……早織さんのことを知れば知るほど、可愛らしい人なんだなって思う。


 そんなことを考えていると、早織さんが扉の前で足を止めた。


「……着きました。ここが生徒会室です」


 早織さんに促されるまま、生徒会室へと入る。

 本館校舎の四階、その端に位置する生徒会室の中を、俺は初めて見た。


 教室より一回り小さい部屋。

 その中央には長机とパイプ椅子が並べられており、机の上にはいくつかのダンボールが置かれていた。

 普通の教室で黒板が置かれてある場所にはホワイトボードがあり、周りの棚には本や資料が小綺麗にしまわれている。


 その部屋の中でも特に目につくのが、奥に位置する会長机だ。

 普通の机とは違い、かなり豪華な装飾が施されている……のだが。


 ……その机の上には乱雑に資料と思われる紙が散らばっており、どう考えても仕事ができるような場所じゃない。


 誰かが荒らした後なのではないかとも思ったが、


「さて、仕事に取り掛かりましょうか。えーっと、備品の資料は……」


 早織さんが特に触れてないので、おそらくいつもあんな状態なのだろう。


 ……まあ今は関係ないし、俺も仕事に取り掛かろう、そう思って机の上のダンボールへと手を伸ばしたその時。

 がちゃりと扉が開く。


「お疲れ様です、伏見副会長、と……?」


 声のした方を見ると、そこにいたのは。


 ……なぜか男子生徒の制服を着ている美少女だった。

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