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第十二話

 昼休みも終わり……。


 午前の授業は恐怖で全然集中できなかったが、問題が解決してからの午後の授業は驚くほど集中できている──というわけでもなく。

 むしろ安心してしまって爆睡を決め込んでしまった。

 昨日眠れなかったから仕方ないね。


 ……まあそんなこんなで、案の定目が覚めた時には既に放課後になっていた。

 しかも外は結構暗くなっている。授業が終わってだいぶ時間が経ってるみたいだ。

 時計を見てみれば、既に短針が六の文字を追い越していた。

 どれだけ眠ってたんだ俺……。

 酒井も起こしてくれたらよかったのに。


 こんな時間だ。

 教室には外で部活動の練習に勤しんでる人達の声や、吹奏楽部の楽器の音しか聞こえてこない。

 他のクラスメイトはみんな帰ったのだろう。

 俺もさっさと帰って、録り溜めしてるアニメでも見よう──。


「起きたのですね、黒木場さん」

「ふふぇあぁ!?」


 ……俺の声とは到底思いたくないほどの情けない声を出してしまった。

 隣の席へと顔を向けると、伏見副会長が苦笑を浮かべていた。


「ごめんなさい、驚かせるつもりはなかったんですけど……。一緒に帰ろうと思って来てたのですが、どうやらお疲れのようでしたので、起きるまでここで待っていたんです」


 な、なるほど。

 どうしてここにいるのかは理解できた。

 しかし、一緒に帰るっていうのは何ステップか急に距離が縮まってるような気がしないでもないけど……。

 そもそも友達がいない俺には距離感とか分かんないし、俺が知らないだけで男女が一緒に帰るのは普通のことなんだろう。


「そ、そうなんですか。別に起こしてもらってもよかったんですけどね。副会長を待たせてしまうのも申し訳ないですし……」

「……敬語」

「えっ?」

「その……。敬語じゃなくて、普段SNSでの話し方で大丈夫ですよ。……そっ、それに呼び方も『副会長』じゃなくて名前で呼んでもらえると嬉しいです」


 ……言われてみれば、確かに。

 普段ふぉっくすさんに対しては砕けた話し方をしてるのに、なぜか伏見副会長として話す時にはつい言葉が畏まってしまう。

 ふぉっくすさんはいつも俺に対して敬語だったから俺的には違和感はないけど、俺が敬語で話すのは伏見副会長的には違和感を覚えてしまうのだろう。


「……うん、じゃあそうさせてもらうよ、伏見さん」

「はい、ありがとうございます! ……でもその、できれば『早織』って呼んでもらえるとその、すごく嬉しいというか……」


 …………。


「……早織副会長」

「よ、呼び捨てで……!」


 いやいやいや無理無理無理!

 そもそも酒井を呼び捨てにし始めたのですら高校に入ってからなのに、女の子の下の名前を呼び捨てだなんて……!

 というか急に距離詰めすぎなのでは!?

 なんかちょっと目怖いし!


「……せめて早織さんで許してください……。これ以上は身が持ちそうにないです……」

「むぅ……。仕方ないですね……」


 残念そうに頬を少し膨らませる早織さん。可愛い。

 ……っていうかこの人こんなキャラだったっけ……。

 なんかもっとこう、クールビューティって感じの人だったような気が……。


「……さて、とりあえず帰りましょうか。もうだいぶ外も暗くなりましたし」

「えっ? うわ、ホントだ」


 さっきよりもだいぶ外が暗くなっている。そんなに経ってないように感じたけど、日が落ち始めると一気に暗くなるな……。


「さあさあ、早く帰りましょうよ、黒木場さんっ」

「はいはい、今行くよ」


 教室のドアの前で急かしてくる早織さんに適当に返事をしながら、机の中の荷物をカバンに詰め終わる。


 ……っていうかなんか冷静に考えたらすごいことになった気がする。

 まさかあの副会長と一緒に帰る日が来るなんて。

 なんだかんだ普段とは違う日常に少し楽しさを覚えながら、俺は誰もいなくなった教室を後にした。

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