フランス4
そして1558年4月予定通り、パリのノートルダム寺院で私と王太子フランソワ殿下との結婚式が行われました。私は15才、フランソワ殿下は14才です。結婚の前にはスコットランドとフランスの細かい取り決めが沢山決められました。フランソワ殿下はフランスの王太子であるだけでなく、結婚によって私の配偶者としてスコットランド王になるようです。私はよくわからなかったのですが、叔父様とお母様が連絡を取りあって決められたそうなので、おっしゃる通りにサインしました。血が繋がったお二人ですもの。私に悪意があるわけがありませんよね?
結婚式は200年ぶりの王太子の結婚式ということで絢爛豪華に仕立てられました。やはりフランス宮廷は華やかですね!王家の威信を国民皆に知らしめるため、細部までこだわって仕立てられました。カトリーヌ様もイタリア仕込みの装飾や芸術の知識を沢山披露してくださいました。こういったところは頼りになる方です。
ノートルダム寺院の前には仮御殿がしつらえられ、それを金のユリを織り込んだ青いキプロス絹の王室用天街が覆っていて、ユリの刺繍のある青いじゅうたんが寺院から仮御殿までに敷かれていました。楽師たちが赤や黄色の衣装をつけて、様々な楽器を演奏しながら先頭に立って行進しています。そのあとを私たちが歩んでいくのです。
私は主役の一人として頑張りました。私の身長はグングン伸びて今や180cmの長身ですから、何をしていても目立ちます。ディアーヌ様仕込みの優雅な物腰でスコットランド女王、フランス王太子妃として立派に振る舞ってみせました。
ドレスは特別にわがままを訊いていただいて、大好きな色の白を基調とした洗練された装いにしました。百合の花のような壮麗で高級な白いドレスに身をまとい、首元にはとても高価な宝石のペンダント、頭には真珠、ダイヤモンド、ルビー、サファイヤ、エメラルドの宝石がふんだんに散りばめられ、中央には大きな赤い宝石がついたゴールドのクラウンをつけました。王位を示すベルベッドのマントとトレーンには、シルクとパールで刺繍が施されていました。12mのトレーンは若い2名の女性が持って歩きました。
「晴れ渡った真昼の太陽のように輝いている、天上の女神よりもお美しい」
詩人が私をほめたたえてくれました。頑張った甲斐があるというものです。
フランソワ殿下は今は私より背が低いですが、もうすぐ追いつきそうです。鼻は相変わらず悪く、熱もしょっちゅう出されるのですが、穏やかで優しく立派な紳士に成長なさっています。私達は今でもとっても仲良しで、とっても幸せな夫婦になれそうです。
この年の11月、イングランドではカトリック教会を復活させたメアリー様がお亡くなりになりました。その後にイングランド国王に即位したのがメアリー陛下の庶子の妹、エリザベス様です。エリザベス様はヘンリー8世の愛人の子供で、庶子なので、本来はイングランド承継権はなく、本当は私が継ぐべきなのだと、アンリ国王陛下から伺いました。エリザベス様は私がブリテン島にいない事を良い事に、イングランドを盗んだのです。
「エリザベスは大罪人ですのね?」
「そうだよ。エリザベスはヘンリー8世の重婚による庶子にすぎず、ヘンリー8世自身も庶子扱いしていた。ヘンリー7世の曾孫にあたる君こそ正当な王位継承者だ」
アンリ陛下は私の代わりに不正を正すべく、イングランドに抗議し、他国の皆さんにも事実をお知らせしてくださいました。