フランス3
お勉強を教えて下さるのは、主にディアーヌ様でした。フランソワ殿下や他のご兄弟も一緒です。王族としての立ち振る舞いから、宮廷に出入りする貴族の方々の人柄や家族構成など、楽しい逸話を交えて教えてくださいます。語学の勉強はそれぞれ別の先生が付いて教えて下さいました。フランス語やイタリア語、スペイン語、ラテン語、ギリシャ語まで!……お勉強は沢山あります。でも一流の先生に手取り足取り教えていただけるので、先生についていけば良いので、安心です。他にも詩歌や刺繍、乗馬や狩まで色んな事を学べて毎日が充実していて楽しい日々です。そしてみんなが私を沢山褒めて下さいます。聞いているこちらが恥ずかしくなってくるくらいに。古いお城や修道院で隠れるように暮らしていたスコットランドの日々が嘘のようです。
「君のような完璧な子供は見た事がないね」
アンリ国王陛下が褒めて下さいました。
アンリ国王陛下は活発な方で、忙しい中、よく私たちを狩に連れて行って下さいます。ディアーヌ様も一緒です。アンリ陛下もディアーヌ様も、狩りや乗馬がとてもおじょうずでいらっしゃっいました。子供の中では乗馬も狩も私が一番上手でした。凄いでしょう?男の子達よりずっと上手なのですよ。
婚約者のフランソワ殿下ともすっかり仲良くなりました。フランソワ殿下は体が弱くていらっしゃいますが、とてもやさしい方なのです。フランソワ殿下の他のご兄弟ともとっても仲良しです。ディアーヌ様は先生ですから毎日一緒にいらっしゃいます。ですが、王妃でいらっしゃるカトリーヌ様はあれ以来余りお会いすることもありません。元々あまりお子様や国王陛下とお過ごしにならないそうです。でもそれにしては……またご兄弟が産まれるそうです。次は十人目のお子様でしたかしら?カトリーヌ様は王妃としてのお勤めは立派に果たしていらっしゃる様です。相変わらず難しいご関係ですね?
でも私は婚約者ととても仲良しですし、このままでしたら、難しい事にはならないでしょう!
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『僕は君に助けてほしいんだ。助けられるのは君しかいないんだ』
誰かがまた私に話しかけてきました。
朝早く、薄暗く町はまだ眠っている時間に彼女は喪服を着て礼拝堂に立っていました。彼女の隣には背が高く男らしい、野性的な容貌の男性が寄り添っていました。
この男と結婚するために、彼女は全てを犠牲にしました。しょうがないのです。彼女の心も体もこの男の虜になってしまっているのですから。その甲斐あって彼女はこの男と結婚するのです。
教会には招待客も現れず、ミサも行われず、オルガンも鳴りませんでした。そんな中でひっそりと彼女は隣の男性と結婚の誓いをたてました……。
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……また暗い夢を見てしまいました。リアルで生々しく、嫌な夢!
しかし明日は私とフランソワ殿下との結婚式です。入念にみんなで準備して、最高に絢爛豪華な式にするつもりです。悪い夢のことなど忘れて、最高に美しい私を皆さんに見せなければ。
「マリッジ・ブルーというものかしら?」