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フランス1

さて、そうこうしている間に船はフランスに到着しました。


 私はフランスとスコットランドを結ぶため、フランス王太子フランソワの婚約者となるのです。




 私はサン・ジェルマンに到着しました。港には私を出迎えるために、叔父様が用意した音楽家が歓迎の音楽を奏で、詩人が歓迎の詩を吟じてくれました。




 「始めましてスコットランド女王メアリー陛下、私はあなたの母上の弟、ギース公爵フランソワ・ド・ロレーヌです」




 まだ青年の様に見える、金髪に澄んだ緑色の目できれいに整えられた髭をした、精悍で上品な紳士が言いました。




 「こちらこそ始めまして、ギース公様。フランスは初めてですので、わからないことばかりです。色々教えて頂ければと、思います。これから叔父様とお呼びしてもよろしいですか?」


 「もちろんですとも。私もメアリー様とお呼びしてもよろしいですか?」




 こんな会話をしながら、私は叔父様の用意してくださった馬車に乗り、フランス宮廷に向かいました。




 到着したフランス宮廷はスコットランドとは比べ物にならない、華やかな宮廷でした。


 スコットランドの粗野な城とは違って、フランスの宮廷は精悍な騎士達に守られながらも、豪華なゴブラン織りのタペストリーや、宮廷画家の素晴らしい絵画などで彩られ、華やかな宮廷でした。




 私は早速国王陛下とディアーヌ様に簡単な挨拶を交わしてから、王宮に与えられた自室に向かいました。国王陛下とディアーヌ様は絵に描いたよう様に美しいお二人でした。ディアーヌ様は透き通るような白い肌と、幾分ふくよかな姿態、卵型の顔に整った目鼻立ち……お名前のとおり月の女王の様に美しく、とってもお似合いのお二人でした。


 それから、次から次へと私を見物に人がやってきました。


 小さなスコットランド女王にしてフランス王太子の婚約者ですもの。一目見たくなるのも当然でしょう。私も皆さんの期待に応えるべく、美しく着飾って、皆さんを迎えました。


 ミルク色の滑らかな肌、大きな黒い瞳、赤みの強い金髪。こう言ってはなんですけれど、私以上の美少女にお目にかかった事はありません。立ち振る舞いもお母さまにフランス流を叩き込まれておりますから、完璧です。


 きっと皆さんの期待に応えられたことでしょう。


 皆さん、敬意を払って私に挨拶をしてくださいました。




 ただ一人私に敬意を払わずジロジロ眺めている貴婦人がいました。


 目がギョロっとしていて少々威圧感があるものの、容姿は極々普通の方です。ですが、とても趣味の良いドレスをお召しの貴婦人です。


 挨拶もなく、あんまり不躾にジロジロ見てくるものですから、思わず気分が悪くなってきてしまいました。




 「スコットランド女王の前ですが、お分かりですか?」




 イライラして嫌味な話し方をしてしまいました。


 すると相手は意外な言葉を返してきたのです。




 「フランス王妃の前とお分かりですか?」




 フランス王妃?


 国王陛下のお隣にはいつもディアーヌ様がいらっしゃいました。ディアーヌ様が王妃ではなかったのでしょうか?


 後で真っ青になった侍女から先程の女性について教えてもらいました。


 先程の女性は確かにフランス王妃でいらっしゃる、カトリーヌ・ド・メディチ様とおっしゃるそうなのです。


 フィレンチェの大層お金持ちの薬屋さん出身で、カトリーヌ様のお爺さまがローマ教皇でいらっしゃったところ、まだ国王陛下が王太子ではなく、第二王子でいらっしゃるアンリ陛下と結婚なさったそうです。


 ですが、アンリ陛下が愛していらっしゃるのはずっとディアーヌ様で、カトリーヌ様とは形だけの夫婦なのだそうです。


 フランス王室では正式な王妃の他に本当に愛している方を寵妃として娶ることができるのだそうです。


 本当に愛している方と正式に結婚できれば良いのですけれど、上手くいかないものらしいのです。




 何だか……難しいです。私は婚約者と仲良くなって、愛して愛される、幸せな夫婦になりたいです!

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