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縁談1

シャトラールの事件があってから、お義兄様やメートランドはさらに再婚相手を早く選ぶよう、催促するようになりました。元夫の弟シャルル9世、スペインのドン・カルロス、デンマーク王、ハプスブルク家のカール公、いろんな国の国王や王位継承権を持つ王子が候補に挙がっていました。こういった人たちとは直接会うことはまずありません。肖像画で容貌を想像して、お義兄様やメートランド、外交官のメルヴィルなどの情報から人となりを判断するのです。


 「イメージが湧かないわ」

 

 思わず呟いてしまいます。

 

 先夫はいつもそばに居たフランソワ陛下でした。毎日のようにともに食事をし、勉強をし、狩りをしたり舞踏会で踊ったり、お茶会でお話をしたりしていました。それと比べると、顔を実際に見知っているのは元夫の弟だったシャルル陛下だけで、あとは肖像画から選べと言われても……全くどんな夫婦になるのか、想像つきません。

 スコットランド女王としては、出来るだけ高貴な方と結ばれたい。そうするとスペインのドン・カルロス殿下か、フランスのシャルル国王陛下でしょうか。ですが、どちらもカトリックの有力者なので、お隣のイングランドのエリザベス陛下が反対なさいます。イングランドのカトリック信者が活気づいて、エリザベス陛下の治世が不安定になるからなのでしょう。シャルル陛下はご母堂のカトリーヌ様が反対なさっているようです。わたしがお嫌いですものね?わたしもカトリーヌ様が好きではありませんからお互い様ですが。そればかりではなく、国外の有力貴族の方との縁談は、スコットランドの承継権や統治権についての交渉まで事細かに必要となり、遅々として進みません。私はすっかり嫌になってしまいました。

 そんな中でお隣のエリザベス陛下が縁談の相手として勧めていらしたのが、ロバート・ダッドリー卿でした。ロバート卿は生粋のイングランド貴族で、かつてはノーサンバランド公爵の家系でお父様が宰相をなさっていたこともある、有力貴族の出身でいらっしゃいます。ですが、かつてエリザベス陛下の恋の相手として噂となったこともある方でした。いまだに結婚していらっしゃらないものの、エリザベス陛下とは大変仲良しでいらっしゃるようです。


 「私はロバートを大変信用しているのです。妹同然のあなたと、信頼している彼が結婚するならこれに勝る喜びはありません」

 

 エリザベス陛下はそんなことを手紙に書いてロバート様を勧められました。

 

 ですが、かつて自分の恋人だった方を私に勧めるなんて!!悪趣味にもほどがあります。それにロバート様は王家の尊き青き血を引いておられない。ほかの縁談のお相手とは比べ物になりません。

 私は、イングランドとの交渉を担当しているメルヴィルにうまく断るように伝えました。


 「もちろんですとも。お任せください」

 

 メルヴィルも快諾してくれました。とんでもない話ですもの。当然ですよね?

 こうして私の再婚相手はなかなか決まらなかったのですが、そんな中でお義兄様やメートランドは運命の相手を見つけたらしく、次々に結婚したのです。メートランドは私の古くからの侍女、4人のメアリーの一人である、メアリー・フレミングと、お義兄様は幼なじみのアン・ケイス様と結婚なさいました。結婚式は新教徒式の簡素なものでしたが、幸せそうに微笑み合っていて……。私も早く良い相手に巡り会いたいです……。

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