1話 行こう、異世界
初めまして、知紅八斗です。この度、執筆をはじめました。まだ、このサイトに不慣れなため、文章が崩れてしまっている部分や見にくい部分があるかもしれません。また、初めて小説を作るので、表現の仕方に違和感があったり、文脈がおかしい場合があります。日々、勉強をし力を身につけていきますので、何卒、温かい目でよろしくお願いいたします。
日本・東京にある、とある日本家屋にて。
「全く…人間どもめ…好き放題に生きよってからに…なんと腹立たしい…!」
そう愚痴を漏らすのは魔王と呼ばれ畏れられる存在。
「魔王ともあろうお方がそう愚痴を漏らすなど情けないですぞ」
魔王が家族のように慕っている男、大天狗がそう言った。
「しかしな…大天狗よ。我もそうだが、他の妖怪たちも不満が溜まっていてな。そろそろ限界ではないかと思っているのだ…」
妖怪の中にも比較的温厚なものもいるが、やはり血の気の多い者の方が多い。彼らが今に至るまで大人しくしてきたのは奇跡だ。いや…まぁ…山奥にのこのことやってきた人間を食らっているのは知っているが…。あとはあれか…廃墟で人間を食らったり、川で食らったり…海で…あれ?結構現役バリバリでやってるな!?
「ま、まぁ…とにかくだ!そろそろ我も限界を感じているのだ!何か打開策を考えねば…そうだ!邪魔な人間どもを力でねじ伏せるのはどうだ!」
うんうん。我もたまには大暴れしたいしもうこれでいくか。
「なりませんぞ!今の人間は昔の人間とは違い、数も多く優れた武器を持っておりますゆえ!奴らと争えば我々はひとたまりもないですぞ!」
大天狗は妖怪の中でも冷静に物事を見ている方だ。魔王の言った意見はすぐに反対されてしまった。
「わ、わかっておる!そこまで我とてアホではない!」
全く…何か良い手は無いものか。まぁ少し夜道を歩いて考えるとするか。
魔王が夜道へ向かおうと外へ出るとすぐに声がかかった。
「魔王様!見てください!美味そうな人間を捕まえました!」
眷属の一人で、確か…すまん。名は忘れた。
「ひぃいい!!た、助けて!!お、おおおお、お願いします!!!!」
ふむ。ひどく怯えているな。無理もないか…このあと待っている運命を考えるならな。まぁとりあえずここで騒がれてもうるさいし、他の人間に見られると厄介だな。
「おい、お前。食うならさっさと食え。我はいらん。」
全く、我とて人間なら誰でも良いわけではない。できるなら若い女がいいな。このような豚のように太った小汚い人間など食いたくもないわ。
「へへへ、魔王様は意外と遠慮しがちですからな!ならば、一人でじっくりと食べようと思います!」
はいはい、さっさと食べなー。
ん?なんだ?その人間が持っている本は?
「おい人間…その本をよこせ…!」
おお…相変わらず人間の技術はすごいものだ。こんな細かい絵まで描けるのか。最近、やることがなくて時間を持て余していたところだ。ちょうどいい。これで時間が潰れそうだ。
魔王は先ほどまで悩んでいたことなど忘れ、自室へと戻り本を読み始めた。
「なになに…ちっ!字が読めん!仕方ない、妖術を使うか…」
そういうと、魔王は妖術を使い本を改めて読み始めた。
「本の名前は…い、異世界転生物語?」
この一冊の本との出会いが妖怪たちの運命を変えることになるのだったーーーー
本を読み終わった魔王はすぐに大天狗を呼び出した。
「魔王よ。どうされましたかな?」
また、なにか良からぬことを考えたのかという顔で大天狗が言った。
「ふん!今度は違うぞ!!」
そう言うと魔王は一呼吸おき、自身ありげに話を続けた。
「我々、魑魅魍魎は異世界へとーーー引っ越しをする!!」
それを聞いた大天狗は最初こそ困惑をしたが、なにより面白そうだと思っていた。いつもまともなこと言っているように見える大天狗だが、彼も妖怪。今の生活には退屈している。かといって、この世界の人間に危害を加えればこちらが滅ぼされると考え耐えてきた。魔王の言う異世界はどうやら科学文明が発達しておらず、人間も弱く、住みやすい環境があるとのことだ。
「確かに…それは少し興味がありますな。しかし、その情報はどこで手に入れたのですか?」
その問いに魔王は…
「おお!よく聞いてくれたな!この本だ!この本に全て書いてあるぞ!」
といって、魔王が見せてきたのはカラフルな表紙の本だった。
「ま、まさか…この本のことを全て鵜呑みにしたのですか…?」
大天狗はまさかと思いながら、魔王に聞いてみた。
「む?そうだぞ?」
たわけが!!と叫びそうになったがあることに気がつきそれをやめた。魔王がいつもに増して自信ありげなのだ。
「まさか…もうすでに異世界とやらに行く方法を見つけたのですが?」
待ってました!と言わんばかりに魔王が答えた。
「当然だ!我は魔王ぞ?すでに方法は考えておる!明日、全ての妖怪どもを恐山へ集めろ!」
その日、恐山では日本中から集められた妖怪たちが集っていた。
その数、数万。
集まった妖怪たちは魔王が何をするのか、ついに待ち焦がれていた人間どもとの争いを始めるのかと、それぞれが違う眼差しで魔王を見つめていた。
「魔王様!ついに人間と争うのですかぁ!フヒヒッ」
「俺に先陣は任せてくれ!人間どもに俺の力を見せつけてやる!!」
「魔王様よ…人間と争うのであれば念入りに準備を…人間の肉で料理をしますがゆえ」
「あらぁ…久しぶりに魔王様をみたわぁ…面白そうなことを考えている顔ねぇ…」
さて、そろそろか。
「魑魅魍魎の諸君!よく集まってくれた!さて、今日集まってもらったのはだな、日本…いや、この世界から我々は去ることにした!!」
そういうと妖怪たちが響めき出した。
「知っての通り、人間の文明は急発達し日々、我らの住処が人間どもに奪われている!はっきり言おう!我々が人間と全面戦争をしたところで勝ち目はない!!人間に負けるという屈辱的な気持ちは分かる!しかし、事実である!そこでだ…我は新たなる故郷を見つけた!」
魔王は空に手を突き出し、一つの妖術を使い異世界の姿を映し出した。
「見よ!これは異世界である!この日本のある世界よりも化学文明は発達しておらず、人間も弱い!我らが住むには最も適した場所だ!日本でお前たちは人間の愚行に耐えに耐えてきた!だが、それがもう限界なのはわかっている!さあ!行こうではないか!!ここを我らの第二の故郷にするぞ!!!」
さて、まだこの異世界について分からないことの方が多いが、そんなことで躊躇う妖怪など存在しない。これまで人間と大規模に争わずにきたのは我がそう命令したからだ。それがなければ今頃ここにこれほどまでの魑魅魍魎は集まらなかっただろう。
「さあ!行くぞ!!我に続け!!!」
この恐山はあの世と近く、この世界からもっとも別次元に近い場所だ。ここで、異世界へと繋がる鬼門を開く。
「「「うぉおおおおおおおお!!」」」
魑魅魍魎の雄叫びが鳴り響く。
その日ーー日本から妖怪が消えた。
次回は、異世界の街で妖怪たちが好き勝手に暴れまわります。