僕なりの愛情
意味がわかると、ちょっとゾッとする系です。
テーマは「家族の愛情」
僕には、愛情をたくさんくれる両親がいます。
毎日声をかけてくれる母。
毎日触れ合ってくれる父。
僕は、とても幸せです。
母は、僕が学校から帰ってくると、言葉をかけてくれます。
テストの点数を見て、僕の姿を見て、母は
父は、仕事から帰ってくると、顔を触ってくれます。
お酒を飲んで、僕の姿を見て、父は
だから、僕は、両親が、大好きです。
色んな愛情を教えてくれる両親が、とても大好きです。
でも、そんな幸せなある日。
両親が、僕に愛情をくれなくなりました。
両親が、僕を無視した最初の日。
僕は、捨てられる恐怖で、一睡もできませんでした。
こんな痛みだらけの体でも
こんな歪みだらけの心でも
父と母は、僕にとって、唯一愛情をくれる存在でした。
でも、そんな日々ももう終わり。
僕は、両親からもらった愛情を、もう一度両親に教えてあげることにしました。
きっと両親は、僕にあげる愛情を、亡くしてしまったのです。
だからね、もう大丈夫だよ。
僕は、両親の頭をバットで殴りました。父がそうしてくれたように。
そうして、僕の部屋の壁に杭を打ち付けて。両親に首輪をかけて繋いであげました。
目覚めて泣き叫ぶ母のお腹を力いっぱいに蹴りました。母がそうしてくれたように。
これが、両親に与えられた僕への愛情。
僕なりの、精一杯の愛情のお返し。
きっといつか、両親の心の中に、愛情がたくさん溢れ返れば、また僕を愛してくれる。
だから、僕は今日から両親のお世話をしてあげる事にしました。
暴れ狂い、楔を引きちぎろうとする父。
そういう時には、父の大好きなお酒を全身に浴びせてあげて、金属バットで何度も何度も殴ります。
鈍い音ともにうめき声が鳴り、頭蓋骨は陥没し、やがて大人しくなる。
そうだよ、父さん。大人しくしていれば、たくさん撫でであげる。
泣き叫び、助けを求めようとする母。
そういう時には、母のタバコに火をつけて、体中に何度も何度も押し付けます。
小さく皮膚が焦げる音ともに、肉の焼けるいい匂いが漂い、やがて怯え出す。
そうだよ、母さん。大人しくしていれば、たくさん優しくしてあげる。
こうして僕は、両親にたくさんの愛情を返してあげました。
ご飯は僕の気が向いたら。それ以外の時間は僕の部屋で過ごさせてあげました。
元々、僕の部屋といっても両親が用意してくれた、簡素な部屋です。
何もないこの部屋だけど。きっと、両親には、僕の事だけを考える時間が必要なんだと思います。
そうして、4日ほど経ってみて。
両親は、もう息をするだけの人形になってしまって。
僕が呼びかけても、僕が愛しても、……僕が泣いても。
両親が、僕に愛情をくれることはありませんでした。
僕は悲しくて、毎日泣きました。
どうしてこうなってしまったんだろう。
どこで間違えてしまったんだろう。
父さんも、母さんも、大好きだったのに。
僕はただ、いつもように、愛情が欲しかっただけなのに。
両親に愛情をあげ始めてから、6日目。
父さんと、母さんは、動かなくなりました。
ああ、そんな、そんな、そんな……。
僕にもわかる。これは、いつも母さんが僕にくれていた言葉。
"死ぬ"ということ。
"死んで"しまったら、母さんも父さんも、喜ぶということ。
でも、僕は……
僕は、嬉しくなんてなかったんだ。
なんでだろう。
初めての感情だったんだ。
胸が苦しくて、息ができなくて、涙がぽろぽろ溢れて。
どうしても、この胸の穴を埋めなきゃいけない。
だから、だからね。僕は、きっと1人じゃ生きていけないんだ。
僕は、幸せです。
だって、両親に、こんなにもたくさんの愛情をもらったんだから。
でもね。両親の、空っぽになってしまった愛情は、満たしてあげられなかった。
何が足りなかったんだろう?何がいけなかったんだろう?
いつまで考えてもわからない僕は、もう一度やり直すことにしました。
おかえり、お母さん。お父さん。
今度は間違わないよ。今度は、ちゃんと愛情を込めて育ててあげる。
お母さんとお父さんは、頭を殴ったからか、今はまだ、眠っています。
でも、若い両親が目覚めたら、もう一度やり直すんだ。
僕が両親からもらった愛情。今度は、僕がその愛情を返してあげて、愛してもらうんだ。
だからね、お父さん、お母さん。早くいい子で起きるんだよ。
起きたら、また、たくさん愛してあげるからね。
Dear My Father.
Dear My Mother.
From Beloved son.