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レッドブルーム  作者: 松茸
7/11

寂滅と意義

「…もしかして…」

レキは記憶を探るようにゆっくりと口を開いた。

「ハサミ…とか…?」

ミッドナイトは驚いたようであった。瞳孔が少し小さくなり、しかし隙を見せることなくすぐに元の表情に戻った。

「…ほんと、レキちゃん凄いわ〜」

レキは少し肩をなでおろした。ミッドナイトは「そっか〜」と言うなり少し残念そうな面影を残す。

「最後までわからない方がかっこいいと思ったんだけどな〜」

そう言うとレキはおもむろに右ポケットからハサミを取り出すと、慣れた手つきで指の間をくるくると遊ばせた。レキは髪を切ってもらった時の情景が蘇る。と同時に寒気がレキを襲う。

「だからあんなにハサミの使い方が上手だったんですね?」

ミッドナイトはただじっと手の中で踊っているハサミを見つめている。

反射した光が狂気を放つ。

「…そうだよ」

ハサミを見続けているミッドナイトの横顔は何を考えているか想像がつかない。

ミッドナイトは手を止め、レキを見た。

「そういえば『武器』の仕組み、話してなかったよね」

ミッドナイトはクリアのいるドアの方を見て、「話したら怒るかなぁ」と漏らした。

「まあいいや〜」

ミッドナイトはハサミを手のひらに乗せてレキに見せた。

「さっき言ったけどこれもクリアの発明品〜。武器とヒトの波長を一体化できるようにできてる」

「ハサミとヒトを…?」

無言で頷くミッドナイト。

「そう。クリアが開発したこの武器は、人間の本来持つ力を何十、何百倍って拡張して放出することができるようにできてるの」

「触って見て」

レキが言われた通りにそのハサミに手を触れる。ひんやりとしていると思ったそのハサミは人肌に暖かく、レキの指先から神経を通って全身に熱を伝えた。そしてしばらく手を触れているとレキは何かを感じ取ったようだ。

「このハサミ…脈を打ってる…?」

「正解〜」

レキとミッドナイトの視線が合う。不思議でしょ、と言わんばかりにミッドナイトは笑う。

「この武器は僕と一体化してる。この一体化が高まれば高まるほど僕が繰り出せる力だったり技もより巨大になる。例えば…」

ミッドナイトはハサミをレキに渡し、クリアが飲み干したティーカップを手にとった。

「そのハサミでこのティーカップを切ってみて」

「このハサミでですか?!」

ミッドナイトは面白そうに頷く。レキはティーカップにハサミを当て思い切り力をかけた。しかしヒビすら入らない。

「貸して」

レキはハサミとティーカップを渡すと、次の瞬間驚きで口をあんぐり開けていた。なんとそのティーカップは綺麗に真っ二つに割れていた。正確に言うと、「裂けていた」。

「どうして…」

まるでマジックを見ているようだとレキは思った。期待通りの反応をしたレキを見てミッドナイトは苦笑する。

「普通の武器じゃ出来ないようなことも、人間の微量の波長と合わせることで何十倍にも膨れ上がる。クリアの発明、凄いでしょ〜」

「本当にすごいです…」

「クリアの前ではあんまり褒めすぎないでね?あとがめんどくさいからさ〜」

少し笑ってミッドナイトが付け足す。

「詳しいことはクリアに聞くといいよ〜。武器の詳細全部話したらあとあと五月蝿そうだからやめとくわ」

ミッドナイトは裂けたティーカップをテーブルに戻すと、ハサミを体のどこかにしまった。

「じゃあここを出ようか〜。君の部屋に案内するよ」

「私の部屋があるんですか?」

「もちろん。引越しの手続きはもう終わらしておいたから、今日はゆっくりと休みな〜」

引越しの手続が終わったという事実には驚いたが、もはや反応する体力もないようだ。レキの口からは「私の住所知ってるんだ…」という感想しか出てこなかった。

クリアの研究室を出て長い長い廊下といくつものドアを抜ける。しばらくするとミッドナイトがドアの前で止まった。真っ黒なドアが自宅のドアを連想させる。

「ここが今日から君の部屋だよ〜。好きに使って?ただし今日はもう外には出ない方がいいかも〜。ここは迷ったら最後、見つかんない可能性もなくはないからさ?」

ふふふ、と笑うミッドナイトに相反してレキは乾いた笑いで合図ちを打つ。

ミッドナイトはドアに腕を押し付けた。慌ててれきもピアスを外してドアに押し当てた。

カチャ

ロックが外れる音がした。

「…おやすみ〜。良い夜を…」

「おやすみなさい」

部屋は思いの外広かった。そこにはベットやテレビ、キッチンも完備しており本棚には数冊本が入っていた。寒色のライトが部屋の雰囲気をどこか冷たくしている。部屋の中を探索したいのも山々だったが、レキはベットに倒れこんだ。

「このベット…ダブルベットだぁ…」

だんだんとレキの意識が遠のいていく。

「あ…大家さんになんて言おうかな…」

そのままレキは電池が切れたように深い眠りについてしまった。

まるで明日起きる大冒険の準備をするかのように。


Chapter7 end


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