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レッドブルーム  作者: 松茸
11/11

改良とハイド

「ミッドナイトさん!」

レキとミッドフィルターは駆け寄ると、現場の状況を理解出来ずに戸惑う。今、ただひとつ分かっているのは「任務失敗」。思わずレキは聞く。

「ミッドナイトさん、マークさんは…」

ミッドナイトは目線を下に落とした。

「…ッッ!」

「大丈夫。気を失っているだけだから。フィル、本部に応援呼んで」

「は、はい!」

ミッドフィルターはすぐさま連絡を取りにその場所を離れた。そのときレキは、ミッドナイトの足元に転がる死体を見てしまった。

咄嗟にレキは口を覆った。一気にこみ上げてくるものを抑えることがだんだん難しくなる。耳鳴りと嗚咽が混じり、もはや何が何だかわからない。

するとミッドナイトはもの悲しい顔でゆっくりレキの肩をさすった。耳元で「大丈夫、大丈夫」と囁く音だけが命綱となり、なんとか意識を保っていた。

しばらくすると耳鳴りも収まり、嗚咽も落ち着いてきた。レキは先の情景を思い出さないようにするのに必死だった。

連絡を取り終わったミッドフィルターが戻ってきた。

遠いい目をしたミッドナイトはレキを支えて立ち上がると、静かに言った。

「もう少しできっと人が集まって来る。その前に逃げよう。」

「でもどうやって…」

レキがそう言ったときには、隣に車のようなボートのような得体の知れない乗り物が止まっていた。

「急いで!」

運転をしている恰幅のいい女性が言った。

気絶したマークと3人を乗せた乗り物は、教会を後にした。

牧師の死体に近づく影には誰も気付くことはなかった。


本部に戻るとバーがある表からではなく、裏口から中に入った。マークは途中僅かに意識を取り戻したが、虚ろな目をして喋ることはない。ミッドフィルターはマークの腕をつかんで様子を伺っている。レキは自分が何をすればいいのかわからず、心配だけが先走っている。ただ一人、ミッドナイトだけはひどく冷静だ。

女性がドアの前で言う。

「さあ、ここまでで十分だよ。あとは私に任せな。それとクリアのやつを呼んどくれ」

「フィル、お願い」

「は、はい!」

ミッドフィルターはクリアを呼びに走って奥の方に消えて行った。

女性はドアに腰を当てた。どうやら女性のリングはベルトに仕込んであるようだ。

中に運び入れようとしたときに、女性がミッドナイトに言った。

「上から呼び出し入ってたよ。今回の任務はお前たちのせいでは無いからお咎めは無いだろうが…。上に一発言ってやんな!」

そう言い残すとマークを連れて中に入って行った。ドアが閉まる。ミッドナイトは無心でドアを見つめている。

「ミッドナイトさん…?」

「…あぁ…ごめんね?」

少し気を使ったように笑う。レキはマークのことをよほど心配しているんだなと思い、胸が痛んだ。

「マークさん…大丈夫でしょうか」

「ん?あぁ…マークは大丈夫だと思うよ?あんなことで死ぬようなやわなやつじゃ無いし〜。こんなんで死んだら僕をバカに出来ないでしょ」

そう言って笑うと背筋を伸ばし、大きく息を吐いた。

「じゃあ行くか…」

「行くって…」

「トップが集まるとこだよ。今行けるのは僕とレキちゃんしかいないから付いてきてもらうけどいいね?」

「はい」

ミッドナイトはドアに背を向けて進み始めた。ミッドナイトの後に続くレキ。

いつしか銃口を向けられた大ホールを通り、奥の部屋へと進んで行く。奥のそのまた奥に、今までとは明らかに違うドアがそこにあった。

金の装飾を施した立派な縁に、二つある取手の部分はピカピカに磨き上げられている。ミッドナイトは取っ手を手前に引いた。中はエレベーターほどの広さで、床には赤字に金で刺繍割れた絨毯が敷かれている。上には小さいモニターが設置されている。モニターから機械音がする。

「モニターにリングをかざしてください」

ミッドナイトは腕を突き出した。レキも耳のリングをモニターに向けた。

「承認しました、お入りください」

ミッドナイトは入ってきたドアを押し開けた。そこは先ほど通ってきた廊下ではない。今までのどの部屋よりも広く、どこまでも続いている部屋の規模から察するに、地下に降りてきたのかとレキは推測した。

レキの足音がヒタヒタと空気を揺らす。ミッドナイトは出てきたところにある大きなモニターに向かって話し始めた。

「ミッドナイト、ただいま帰還しました。現場報告と成果を報告します」

いつものミッドナイトとは全くもって違う、形式張った喋り方。するとモニターに人型のシルエットが表示され、声が聞こえてきた。

「その必要はない」

威厳に満ちた厳しい声。

「…今回のこと、しっかり説明してもらえるんですよね?ただの手違いとは言わせませんよ」

「今回の任務失敗はこちらの責任だ。諜報部との連携がうまくできていなかったため、連絡の伝達が遅れた。そこは謝ろう。」

ミッドナイトのか顔はモニターの光を受けてさらに表情がないように見える。

「負傷者が出たようだな。早急に対処する。今回の任務については他言無用だ。詳しいことがわかったら連絡を入れる。以上だ」

モニターが切れた。明らかに、一方的に切られたことに対してミッドナイトは憤りを感じる。

「…ふざけんな…」

ミッドナイトはモニターを思い切り叩きつけた。レキは驚いて肩をすくめた。

画面に亀裂が入る。めり込んだ手には抑え切れない怒りが込められているようだった。


Chapter 11 end


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