戦友(とも)に別れを
鐘が鳴った。
鬨の声が響いた。
勝利を喜ぶ人々の笑みと足音が、大地を揺らした。
「勝負は俺の勝ちだったな」
今にも折れそうな剣を鞘にしまい、物言わぬ男にそう告げた。
日焼けた首を差し出すかの様に息絶えているのは、数日前まで俺が親友だと思っていた男だ。
どの物語にでもある、お約束通りの展開で裏切られるまでは。
なにがきっかけでこいつが裏切ったのか、そもそもこの争いがなんで起きたのか覚えていない。
覚えていられない程、この内乱のような、戦争のような争いは長い間続いていた。
勝者となった俺の主人が、疲弊したこの国を建て直すと叫ぶように宣言する。
これは、そういう争いか。
だからこいつは裏切ったのか。
理解すると同時に、親友だと思っていた男の亡骸を見る。
「なぁ、何の勝負してたか忘れちまったから、やっぱりさっきの勝利宣言はナシだ。次会った時、どんな勝負をおめぇとしてたか教えてくれ。で、勝負つけようぜ」
最後の一本、震えてなかなか火のつかない煙草を咥えて、後ろ手に手を振って歩き出す。
「あばよ、じゃねぇな。またな」
どうせ、一服終わるまでの命。
そう待たせることはないだろう。