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フォレストドラゴンのいる日常 その4

 昼食を食べ終わった後は、魔物達の世話だ。


 リスカはモコモコウサギと戯れながら、一匹一匹を確認して健康状態に異常がないか確認。


 俺は放牧されているブルホーンのチェックだ。


 牧草の上に寝転んでいるブルホーンは、時折草を食みながらまったりとしている。


 その様子を見ると、吹き込む風や草の香りを嗅いでリラックスしているようだ。


 しかし、ふと見ると体に草や藁、土が付着しているのが目立つ。


 このままの状態でいるのは気持ちが悪いだろう。


 そう思って、俺は手持ちの豚毛ブラシを使ってブルホーンの汚れを落としてやる。


 何度も丁寧にブラシを動かしてやると、付着した物が落ちて、荒れていた毛並みが少し綺麗になる。


 ブルホーンも体についていた汚れが払われてスッキリしたのか、気持ち良さそうに目を細めた。


 普段は滅多にこういう姿を見せないブルホーンだからこそ達成感を覚えるな。


 大雑把に全体の汚れが落ちたら、今度は馬毛ブラシに切り替えて仕上げだ。


 豚毛ブラシは毛先が固くて鋭いので、汚れを取り払ったりするのに向いている。


 そして、毛先が繊細で柔らかい馬毛ブラシは、毛並みを整えるのに向いているのだ。


 ブラシを首から背中。背中からお腹へと流すように動かす。


 ブルホーンの毛は、ベルフのように分厚くないので優しくしてやることがポイントだ。


 その力加減や動かし方が掴めなくて、最初の頃は何度も怒らせてしまった。


 それが糧となって、今ではこいつが喜ぶようなブラッシングができるようになった自負がある。


「うわあ、ブルホーンの毛並み。すごく綺麗になったね!」


 自分の成長を感じながらブラッシングをしていると、リスカがモコモコウサギを抱えながらそんなことを言ってくれた。


 確かに改めて見てみるとブルホーンの毛並みは見違えるほどに綺麗になっている。


「モコモコウサギ達も、ちょっとだけ毛並みを整えようか」

「そうだな。こいつらよく転がるせいか毛が汚れ気味だからな……」


 フカフカの牧草の上だからあまり汚れは酷くないが、それでも微かに土がついていたり、埃や小さな枝が絡まっている個体もいる。


 モコモコウサギの毛はフワフワとしているので手入れが大変だが、後には売り物として刈り取るんだし、きちんと管理としておかないとな。


「じゃあ、手分けしてブラッシングしようか」

「――そのブラッシングとやらを、我もしてほしいぞ」


 俺がリスカにそう言った瞬間、フォレストドラゴンがぬっと近付いてきた。


「ブラッシングって言ったって整える毛はないだろ?」


 フォレストドラゴンの体を見る限り、モコモコウサギやブルホーンのような毛が生えている場所はない。


「毛は無くても、鱗や枝葉の手入れはしてほしい」


 そう言われてフォレストドラゴンの鱗を見てみると、土や泥、苔などに覆われている鱗の多いことに気が付いた。


「土とか苔とかは汚れに含まれるのか?」

「自然と半共生している我からすれば汚れとは言わないが、たまには綺麗な鱗を見てみたい」


 その気持ちのすべてを理解できはしないが、鱗を綺麗にしたいという部分はわかる気がする。


「わかった。じゃあ、俺が鱗を磨いてやるよ」

「おお、頼むぞ人間!」

「アデルだ。そんでもう一人の女の子が……」

「リスカだよ! よろしくね!」

「お、おお」


 俺達が名前を言うとフォレストドラゴンが怪訝そうに頷く。


「お前からすれば人間の顔の区別がつき難いかもしれないが、これから一緒に暮らすんだから名前くらい覚えてくれ」

「わかった」


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