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第8話 新たな仲間。 

よろしくお願いします。


 「……ちょっと考えさせて」

 少女はいきなりの事に整理する時間が必要だった。


 「……私のスキル、最低なスキル」

 膝を抱えて、自身の持っていたスキルに向き合わなければいけなかった。


 

 アレクとラインハルトは少女と別れ、町の復興のお手伝いしていた。


 「なぁアレク、いくら何でも最低なスキルなんて言われたら傷つくぞ」


 瓦礫を退かしながらラインハルトは苦言を呈していた。


 「僕は正直に言っただけです!」

 「……はぁ」


 瓦礫の上で足をブラブラさせながら大賢者は拗ねていた。

 まだ子供だったアレクは本音と建前の使い方を知らなかった。


 「それにしても本当にあの少女の力は凄いのか?」


 勇者が疑問に思うのも当然だった、大賢者のアレクなら兎も角、糸使いなどという微妙なスキルを欲しがる理由がわからなかった。


 「いーもん、信じていなくても」

 「あ、いやそうゆう事じゃなくてね……」


 いじけるアレクをラインハルトは宥めるのに必死だった。

 アレクが説明しないことが一番の問題なのだが、その説明をするほど機嫌が治っていないかった。

 糸使いの少女に勧誘した時すぐ仲間になってくれると思っていた、予想が外れたことへの身勝手な苛立ちを隠しきれなかった。


 

 瓦礫仕事も終わり、クタクタになりながらラインハルトとアレクは宿に帰ろうとした。

 夕陽が帰り道を照らしている時に、目の前に長い影を作って二人の道先を塞ぐ者がいた。


 「……ちょっと良い?」

 二人の前に現れたのは最低なスキルと言われた糸使いの少女だった。


 「貴方達に話があるの……」

 直ぐに踵を返して先へ進む少女、その顔の表情からどうゆう感情が渦巻いているのか読み取れない。

 慌てて後を追いかける二人、結局その道すがら会話などなく、無言で彼女の家までついていく事になった。


 「君の両親は無事だったんだな」

 「えぇ、勇者様のお陰で無事だったわ。ありがとう」

 

 少女の家族は魔族の壊滅から免れていた、その発言にラインハルトは安堵した。

 静かな部屋の中で少女は初めからビックリさせる発言をする。


 「私、勇者のパーティーに入るわ」

 「え”!?」

 「やったー!」


 何を考えてその結論に達したのか分からないが、少女はパーティーに入る事を決めたのだ。


 「何で? どうして?」


 ラインハルトは彼女がいきなり仲間になろうとした経緯がわからなかった。

 

 「私、あれから1日考えたわ。最低なスキルと言われて思い至る所もあったしね」

 「思い当たる所?」

 「えぇ、我が家に伝わっている謎の掟」


 少女の家には掟が存在していた、そこから自分が体験した考えたくない境遇を話してくれた。


 「私が10歳の時、選定式で『糸使い』のスキルが出た時、両親はその日のうちに私を忌子として爪弾きにしたのよ」

 「忌子……」

 「私は意味がわからず反発したわ、でも両親は掟だと言って許してはくれなかったわ」

 「そんな境遇だったのか」

 「昨日その意味がやっとわかった、私は犯罪者の子孫だったのね」

 「子孫、ユニークスキルは唯一の能力……か」

 「えぇ、限られた人のみに与えられた能力、つまり血族の力」


 ラインハルトは知らなかった事だが、ユニークスキルの特徴として同じ血族に宿る事が多い。

 少女は自分の謎の掟から子孫だと言う事を知ったのだ。


 「私が服屋にいたのは、忌子である私を実家から遠ざけられた為よ」

 「そうだったのか……」

 「別に気にしてないわ、糸使いに服屋。天職だと思っていたしね」


 明らかに強がりだと分かる発言だった、初めてあった強気な表情は鳴りを潜めて声もしおらしく話している。

 よくよく見れば目の周りには薄っすらと赤く腫れている事に気づく、一晩中泣き通した証だった。

 少女はそれでも二人の前には最大限気丈に振る舞っていた、強がりもここまで来れば才能なのかもしれない。


 「だから私、勇者の貴方を憎んでいた。私と違って英雄になった男に意地悪したくなったの」

 「……すまない」

 「謝らないで、寧ろ私の一方的な感情に任せた私が悪かったわ」


 姿勢を正して、吹っ切れた顔をしていた。自身の中で落とし所がついたのだろう。


 「坊やは私の力を、忌子の力を必要としてくれた。本当に私の様な力必要なの?」

 「えぇ、貴方の力は世界を救う力になる。断言します」

 「面と向かって言われると照れるわね……良いわこんな私で良ければ、勇者様の仲間として共に戦わせて下さい」


 夕日の照りつける部屋で少女は二人に向かって頭を下げた。

 元の色よりも夕日に照らされて真っ赤に燃える様に輝いた髪は、少女の意志の強さを表している様だった。


 「私の名前はユリア、『ユリア・スカーレット』よろしくね」


 こうして勇者と大賢者の二人に新たな仲間が加わる事になった。



 

 翌日、新たな仲間ユリアを含めて次の町に行く話が出た。

 目的地は勇者誕生の地「アクレイア」、アレクからの提案だった。

 ユリアはその日のうちに両親と別れを済まして二人について行く事を決めた。


 「本当に良いのか?」

 「両親に話したら、喜んで送り出してくれたわ」

 「そ、それは喜んで良いのか?」

 「良いんじゃない? 忌子だし」

 「そ、そうか」

 「意外と優しいのね勇者さんは、そうゆう所好きよ」

 「す、好きぃ!」

 「ふふっ、冗談よ。 さてどんな冒険が待ってるのかしら!」


 二人を置いてズンズン進んでいくユリアを見てアレクとラインハルトは目を合わせた。


 「……女ってのは強いんだな」

 「勇者様は弱いですけどね」

 「おい!」

 「あはははっ!」

 「ったく毒吐きやがって……まぁいいか」


 走っていく二人を見詰めながらやれやれと笑いながら勇者も後をついていく。


 「お前達走ってると危ないぞ! 特にアレク! 転んで昇天しても知らないからな!」


 三人は紡績の町を離れ次の町へと進んでいく。


 「ねぇハルト? 次の町は何て言うの?」

 「ハルトぉ!?」

 「勇者様なんて呼びづらいわ、ハルトで良いでしょ?」

 「ま、まぁいいけど」


 「じゃあお姉さんのことユリ姉って呼んでも良い?」

 「良いわよ坊や」

 「むぅ、坊やじゃない! アレクっていうもん!」

 「そうね、ごめんね坊や」

 「バカにして〜!」

 「あははっ!」


 次の町は「アクレイア」海に面した町で、潮風と風車が所々にある長閑な場所。

 新鮮な海産物が揚がる事でも有名だった。


 「あっ……」


 自分で歩けると豪語していたアレクは反対を押し切って徒歩で歩いていた。

 どこからその自信が湧いてくるのかが謎だが、案の定小石につまづいて転けそうになった。

 また教会に行かないといけないのかと、勇者はため息を出したが。

 

 「よっと!」


 ユリアがその糸を丁寧に手繰り寄せ、アレクの転倒を防いだ。

 

 「やっぱ坊やだわ、HP1なんだから気を付けなさい」

 「うーうー」


 「アレク、やっぱり君の定位置はここだな」

 「えー!」


 大賢者はやっぱり勇者の背中に乗って冒険に出る。


 「一人で歩けるように成ったら名前で呼んであげる」

 「言ったなぁ! 約束だからね!」

 「はいはい、喧嘩しないの」


 悩みがもっと増えた勇者は、自分の背から喧嘩を繰り広げる二人を見てガックシと頭を落とした。


 「次の町はアクレイアか……」

 「勇者様の生まれ故郷だね」

 「何でそこなの?」

 「いや俺も知らない、アレクが行きたいって言うんだ」

 「坊やなんで?」

 「勇者様の生まれ故郷には伝説のアイテムが眠ってるんだ」

 「「伝説のアイテム?」」


 ラインハルトは何故今更生まれ故郷に行く必要があるのか、その理由を聞いてなかった。


 「なんてアイテムなんだ?」

 「何で勇者様が知らないの……」

 「え?」


 ——聖剣だよ——


 ラインハルトはその発言に思わずアレクを落としそうになった。

 


 名前 ユリア・スカーレット

 職業 糸使い

 ステータス レベル37

 HP 256

 MP 345

 ATK 178

 DFE 135

 INT 276

 AGE 321

 称号 忌子 大罪人の子孫 


 補足 ユリアの歳は16歳、通常の16歳よりも若干高いです。 10歳の時に忌子として判明した後に暇さえあれば糸を操って遊んでいた。因みに糸は自分の服から使っている、胸が異常にデカイが能力発動後ぺったんこになる。

 どうゆう意味かは言わない、勘の良い読者は分かるはず。

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