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第6話 大賢者の実力。

今日の分です。読んで頂き皆様ありがとうございます。

「シールダーのバリアは絶対防御、何とかしてあの障壁を消さないと……そうだっ!」


 アレクは敵の魔法を封じる手を思い付く、その膨大な知識から敵の弱点を知り尽くしていた。


「ねぇお姉さん、お姉さんの職業ってとってもレアだよね?」


 前にいた少年から突然に聞かれて、ドキリと心臓が一つ飛び跳ねた。


「な、なんで知ってるの?」

「僕を運ぶ時、能力を使ってたよね」

「……分からない様にひっそりと使ったのに」

「お姉さんの職業は『糸使い』でしょ?」


 糸使い、それはこの紡績の町ヘルザでは天職と言って良い程の職業だった。


「お姉さん、その力があれば勇者を助ける事が出来る」

「どうやって? この力は戦闘向きじゃないわ」

「僕の言う通りに糸を紡いで! 勇者は動けない、だからその力であいつから遠ざけさせて!」

「……わ、分かったわやってみる!」


 そう言って糸を紡ぎ始めた、不思議な光景。

 アレクの言う通りに糸を展開していく少女、何が何だかわからなかった。

 数秒したら辺り一面を覆う様に糸の川が出来た。


「なんですかそのお嬢さんの力、その力で何が出来る?」

「こうするんですよ!」


 大賢者の指示により糸の川は形を変えて壁の様に変化した。

 糸の壁は勇者とマルスの間に遮る様に展開された、吹いてしまえば意味がないくらい稚拙な壁だった。


「……糸の壁、そんなもの目眩しに過ぎない」

「そうだね、でも勇者を離す事が出来たよ」

「別に構わんよ、もはや勇者に興味などない」


 糸の壁で視界を防いだと同時に勇者の身柄を引き寄せた。


「フッ、それがどうした? また近づけば良い事」

「させないよ!」


 アレクは魔法を行使した無詠唱(・・・)で。

 視界を遮られたところからの炎の槍がマルス目掛けて放たれた。


「なに!」


 素早くマルスは炎の槍を躱す、間一髪のタイミングだった。

 炎の槍はやがて目の前の糸に炎が移り糸の壁は真っ赤な炎の壁に変わった。


「詠唱破棄だと!? 少年、貴様それは上級魔法だぞ!」

「詠唱破棄なんて欠陥魔法と一緒にして貰うのは止めて欲しいな」

「……欠陥魔法、何を言っている」

「僕のは無詠唱だよ」

「またか少年、無詠唱なんて夢の魔法だ」


 無詠唱は存在すら怪しい伝説の魔法だった。マルスはその眉唾物の技術を信じられなかった。

 アレクは自分で詠唱破棄の欠陥に気付き無詠唱を獲得した、少年の天才性は既存の魔法から伝説上の魔法の発見へ至る程の頭を持っていた。


「おじさん糸の力を馬鹿にしたよね?」

「それがどうしたんだ?」

「気付かない? おじさん今自分が拘束されてることに」

「何ぃ!? ……まさか! それが最初から目的!」

「気付くのが遅すぎたね、おじさんはもう魔法を使えないよ」

「!?」


 無詠唱で魔法を発動させた事により自身が糸によって拘束されていた事に気が付けなかった、アレクは意識を誘導させていた。

 最初から勇者の確保と、この糸によるマルスの拘束が目的だった。

 マルスは自分の体が動かないことを今更ながらに知った、大賢者の罠に嵌められた。

 だがおかしい点があった、ただの糸では引きちぎれるのに何故だ?


「どうして引きちぎれない? 一体何をした!」

「『強靭』と『硬糸化』おまけに『魔力封印』も付与させてもらったよ」

「三つを同時に……ありえない、ありえないぞ貴様! 何者なんだ!」


 三つの同時の魔法行使は通常の魔法使いからかけ離れた状況だった、単発が基本として存在する魔法の発動を三つもそして無詠唱で。

 激しく汗を流しながら焦り出すマルス、こんな失態許されるはずがなかった。


「さっきも言ったでしょ、僕は『大賢者』なんだ」

「そんな! そんな馬鹿な話があるか!」

「信じてくれなくても良いよ、君は勇者に滅ぼされる運命なんだから」


 大賢者のアレクはラインハルトに隠されている力を知っていた、その為勇者の元に駆け寄ってこう話しかけた。


「勇者様、彼を封印して下さい」

「封印? その力は魔王に使う力では……」

「いいえ違います、あなたは本当の力を知らない」

「……よく分からないけど、言う通りにすればいいのか?」

「はい、勇者様に封印してもらう事に意味があるのです」

「私の意味……」


 ラインハルトは全く理解していなかった、勇者の力も封印術の真価も。


「マルス、貴様を封印する」

「勇者め! 少年に助けられて恥ずかしくないのか!」

「恥ずかしいさ、情けないとも思う。でも……それ以上に私には使命があるんだ!」

「止めろ、分かっているのか? 私は憤怒のマルスだぞ! 私に何かあれば他の二つ名が黙っていないぞ!」

「別に良いさ、掛かって来るなら今度こそ私が倒すまで! マルス! 貴様を封印する! 私は王国の守護者だ!」


 勇者の右腕から虹色の光が漏れ出す。


 『封印!』


 右手の封印の魔法陣から光は一瞬にして周りに広がった、虹色に色鮮やかに輝く光は包み込む様にマルスの体を覆う。

 強烈な目も眩むような閃光と共にマルスの体が霞の様に消えていく。


「そんな! そんなぁ! 魔王様! まおうさ…………ま」


 勇者が一人で挑んでボロボロに負けた二つ名をもつ魔族。

 勇者にとって苦い記憶となっている使徒との戦いは、大賢者のアレクの鮮やかな戦いと指示によって憤怒の使徒「マルス」は消滅する事となった。


「封印できた……この私が手も足も出なかった二つ名を」


 ラインハルトはこのアレクという少年を見た。


「(この子は天才だ)」


 自分では倒せなかった魔族をいとも簡単に撃破してしまった、その知識と力に感嘆した。


「ありがとうアレク、君のお陰で憤怒を封印する事が出来た」

「封印は勇者様の力でしょ?」


 憤怒を倒した立役者にして張本人は無邪気に笑っていた、勇者は真っ白で純粋な少年の心に胸が一杯になった。


「本当にありがとう、私の恩人だな君は」


 虹色の光が魔族の消滅とともに光が収まっていく、それとは対照的に魔法陣に書かれている色が黄色に変化していった。

 封印した時と同じ様に一瞬黄色の光がみんなを照らした、その後に勇者の脳の中に聞き慣れない声がした。


 勇者ラインハルトは憤怒の使徒「マルス」を封印しました。


 能力が新たに獲得。

「バリア(Barrier)」


 頭の中に神からの神託が届いたのだ。


「え?……能力が増えた」

「そうです、勇者は昔から七人の使徒を封印してきました。そうして覚醒に至る」

「……覚醒?」

「真の勇者へと」

「真の……勇者」


 勇者は知らなかった、自身の本当の力を。

 自分の力を過信していた為に知ろうとしなかった、勇者の力。


「物語で勇者は八つの能力を使いこなす、封印の時に光魔法だけ残して後は魔王と共に封印の力として消滅してしまう」


「……聞いた事がある、偉大な大勇者の物語だ」


「その能力は元々勇者様の力なんです」


「私の……力」


「どの物語でも最初の勇者は弱いんですよ? だけど強くなる、力を取り戻して。だからまだまだ強くなる、魔王に立ち向かえる位に」


 アレクはラインハルトの目をじっと見つめた。


「だからあなたは『腰抜け』なんかじゃありません、勇者ラインハルト」


 小さな体がその時ラインハルトには大きく見えた。


「私は貴方を導く光になりましょう、それが大賢者の使命です」


 この時から、勇者と大賢者は掛け替えのない友になる。


 永遠に語り継がれることになる、伝説の物語の幕が上がったのだ。



 名前 ラインハルト・ミュラー

 職業 勇者

 ステータス レベル95

 HP 985

 MP 273

 ATK 865

 DFE 786

 INT 342

 AGE 564

 称号 剣聖 光の任命者 王国の守護者

 光魔法レベル1 分散ディスパーション

 解放能力 バリア【障壁】(Barrier)

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