第36話 大賢者に託されたもの。
こんばんわ、いつもありがとうございます。
「これが大勇者様と賢者様の記憶」
アレクの脳内には膨大なかつての古代の記憶が移り変わるように流れ込んで来た。
最後には二人が仲良く手を繋いでいる姿が見える。
「貴方たちが僕のご先祖様……」
目の前にいたのは大勇者ブラストと賢者のソフィアだった。
「あら、可愛い子。どこから来たの?」
「おお、俺に似て凛々しいな」
「凛々しい? 貴方はどこを見ているの、可愛いじゃない!」
「いやいや、この子の瞳を見てみろ! なんと覚悟の据わった男の目だ!」
言い争っている二人を見て、仲が良いことが伺える。
アレクは二人に邪魔にならないように小さく微笑した。
その微笑に気がついたのか二人の視線がアレクに向かう。
「笑ってくれたわね? よかった怖い顔をしていたから心配したのよ」
「いい笑顔だ、どうしたんだ? こんな所まで来て?」
二人は自分のことを心配していたのだ、そんなに怖い顔をしていたのだろうか。
「二人の記憶を覗きに原初の間からやって来ました、僕の名はアレク・クリューエル。あなた方の子孫です」
改めて声を大きくして話す、そうすると驚いたような反応が二人からあった。
「あら、私の子供だったのね通りで可愛いはずね」
「なるほど俺の子孫だったのか、通りで格好いいはずだ」
両方とも自分を称えるような反応を指名したからますます笑ってしまう。
その様子を見ながらも二人は確認するように話をしだす。
「でもここに来たってことは、私を助けに来たのね」
優しく話すソフィアはアレクがここに来た理由を知った。
少し驚きながらもアレクは流石は賢者と舌を巻いた。
「……そうです、貴方を、賢者を蘇生しに最後の語りをしに来ました」
そうすると二人は申し訳ないような悲しい表情をした。
「……そうか、ソフィアも遂に救われるのだな」
「ありがとう、アレク。私の子孫」
二人は溶け合うように光となって、アレクの胸に消えて行った。
最初からそこが居場所だったように、自然とアレクの力となる。
「これで最後の魔力が集う、アレク。いまの貴方なら完璧な蘇生魔法が使えるはずよ」
消えゆく記憶の残滓の中で微かに聞こえるつぶやくをアレクは逃さなかった。
「うん、助けるから。待っていてねご先祖さま」
何もない空間の中で二人が笑った気がした。
そうすると今度は何もない空間が一気に広大は平原へと様変わりした。
そこにはこの世のものとは思えない一人の年老いた老人がいた。
アレクは話に無かった事態に目を丸くする、なのに何故か引き寄せられる。
「え………っと、こんにちわ」
年老いた老人がこっちを向く。その瞳はアレクと同じ緑色をしていた。
「おぉ、なんじゃこんな所に迷い込んだのか?」
老人はアレクのことを認識してそんな言葉をかける。
「僕はご先祖様を遡ってここまで来ました、貴方は私のご先祖さまなのですか?」
未知の体験にアレクは心が踊る、今まで自分の記憶の中でこの老人は一回も出ていなかったのだ。
そんなアレクの興奮をよそにマイペースにヒゲに手を当てて老人は考え込む。
「ふむ、なるほどなるほど。ではこの子が……」
意味のわからないことを呟きながら得心する老人、何が何だかアレクには検討もつかない。
そうすると老人の方から声を掛けられた。
「お主、大賢者だったりするのか?」
それは自分の職業、大賢者のことだった。
「なるほどなぁ、お主がここに来た理由がわかった。ほれ、右手を出してみぃ」
手招きをして右手を差し出すように要求する老人、アレクはスッと右手を差し出した。
「ホッホッホ、魔の極致、真髄、全てを会得したか子供よ。なればきっと大丈夫じゃ、わしからのプレゼントじゃ」
ポウッっと光が右手に宿る、そうすると自分の力が変化したのを知った。
「これは……」
「どうやら大賢者なんて称号を間違って受け取ったようじゃな。 神様も気まぐれ多きもの故、許してほしい。これが本当のお前の能力じゃ、受け取るがいい」
大賢者アレクの職業ランクが上昇。
レジェンドスキル(伝説的な職業)からジェネシススキル(神話の職業)へと移行しました。
「ジェネシススキル……」
「そうじゃ、蘇生の魔法は創世の力、言うなれば神の御技。一人の子供にできる力では無い、お主は神から託されたのじゃ、そしてわしに引き合わせた。もうそれくらいで分かるじゃろう?」
そう話すと急に老人との距離が開く、一瞬の出来事だった。
え? っと声を出した瞬間には原初の間に戻っていた。
「あれ? 戻って来ちゃった」
原初の間に戻ったアレクはそこにみんなが集まっていることを確認した。
「皆さんも、ここに集まっていたのですね」
あの出来事はなんだったんだろうとと首を傾げたが、みんなが集まっていることで意識を切り替えた。
「さぁ、アレクもこうして戻って来たことだ、向かうとしよう魔王の眠る祠へ」
ラインハルトが手を高く掲げて声を出す。
最強の番人が潜む魔王の場所へ、勇者一行は歩みを始めた。
伝説になる物語の最後の戦い。
名前 アレク・クリューエル
職業 大賢者 (ジェネシススキル)
ステータス レベル1
HP 1
MP 測定不能
ATK 3
DFE 2
INT 測定不能
AGE 2
称号 無名の天才、求道者、豆腐の角で死ぬ男、神に託されし子供




