第33話 原初の間。
10万超えましたね……長かった、いきなり長編って無理があったなぁ(遠い目)
皆さん、終盤まで駆け抜けますのでお見捨てなき様お願いします。
「なるほどのぅ、そうゆう理由でここに戻ってきたんじゃな?」
アレクのおじいちゃん、かつて聖人と呼ばれ王都の大聖堂で大司祭を務めた偉人。
シビージャ・サレスは教会で勇者たちに会った。
「良かろう、付いて来なさい」
有無を言わさぬ圧力をおじいちゃんから感じ一同ごくりと喉を鳴らす。
やはりこの場所には何かあると、行動が示していた。
やがて蘇生の間に到達する、至って普通な蘇生の間に見える。
おじいちゃんであるシビージャは後ろにいるみんなに振り返り、下にある一点を指差す。
「アレクよ、この文字が読めるか?」
「うん……この文字が気になってここにきたんだよ」
「……そうじゃったか、ならば話は早いな」
おじいちゃんはどこか悟った様な表情をして指差した場所を指して話す。
「ここはな、原初の間と呼ばれているのじゃ」
蘇生の間ではない、原初の間とは一体何のことだろうか。
ラインハルトは聞いたこともない真実の間について質問する。
「大神官殿、原初の間とは一体何でしょうか?」
「おぬしらは王都で最初の間を見たのだろう?」
質問を質問で返されたがその通りだったので勇者は頷く。
頷きを確認したシビージャは順を追って説明を開始する。
「最初の間、それは大勇者ブラストが設置した最初の蘇生の間じゃったな」
「はい」
「おかしいと思わないか? 蘇生魔法は賢者の証、ならば大勇者は勇者と賢者の称号を持っている事になる」
確かにそうだ、蘇生魔法を完成したのなら大勇者ブラストは賢者の称号を持っていてもおかしくない。
「……では大勇者は賢者でもあったと?」
「そんな超人いてたまるか、違うのじゃ。大勇者は蘇生魔法を完成しておらん」
「完成……していない?」
今行っている蘇生魔法が未完成とはどうゆうことなのだろうか。
「おぬしら蘇生魔法とは、一般的にレベルの消失で起こった魔力分を使用して起きる現象だと信じておる。じゃが違う、完璧な蘇生魔法はレベルが下がらん」
シビージャのおじいちゃんが言うには完璧な蘇生魔法にはデメリットが存在しないと言う。
「アレクよ、おぬしも蘇生魔法の習得者であるならば分かるであろう?」
「……おじいちゃんは一体どこまで知っているの?」
「かかかっ! なあに心配せんでも良い使徒ではないから安心するのじゃ」
優しい笑みをたたえているおじいちゃんは先に自分の存在を教えてくれた。
「貴方はティアラ姫であったな」
「え……はい、お初にお目にかかります」
「良い良い、そんなに畏まらなくても。言うなればわしとお主は兄妹じゃからな」
「兄妹……ですか?」
「わしもな、傲慢の使徒「マーレ」の息子なんじゃ」
「!」
おじいちゃんは真相を話し出す、魔族の子供だと言うことを。
「じゃから、王妃がずっとこの王都で賢者ソフィアの復活を企んでいたことを知っていた。知っていてわしは協力をした」
「なぜです!」
「ソフィアを救うためじゃ」
「救うため?」
おじいちゃんは下を指して話をする。
「アレクよ、この場所が何故王都の最初の間と同じ魔法陣をしているのか教えよう。ここはな英雄が生まれた3人の生まれ故郷にして賢者ソフィアが作り出した蘇生魔法の原典が記された場所じゃ」
「蘇生魔法の原典……」
「そう、デメリットのない完璧な蘇生魔法を行使するには膨大で綿密な魔法陣が必要。言うなれば蘇生魔法の膨大な補助装置じゃ」
「何でこんな所に……」
「アレクこう思ったことはないか? 何で自分はこんなにも貧弱なのじゃろうかと」
おじいちゃんが話し始めたことによって、頭がガンガンなるほどの静寂が蘇生の間に張り付いていた。
これから話すことはきっと、僕が生まれたことに関わってくるんだ。
そう思うと嫌が応にも目線が外れなくなる。
真剣な表情をしているアレクを見て選定式の日を思い出す。
まっすぐな目をして話してくれた様にシビージャ・サレスはアレクに真実を伝える。
——アレクは大勇者と賢者の間に生まれた子孫じゃ——
一瞬その言葉の意味を理解しかねた。
僕が勇者と賢者の子孫? そんな馬鹿な。
アレクは真実を知って激しく動揺をした、それと共にどこかカッチリと歯車がかみ合う様な感覚が押し寄せてくる。
本当のことだったら僕は、僕が生まれた意味って。
自然と目線はおじいちゃんに会う、シビージャは安心させる様に優しく頷いてくれた。
「アレクの聡明な頭なら今の言葉で真実にたどり着いたじゃろう?」
「……えぇ、僕は……僕は蘇生魔法によって誕生したんですね?」
何を言っているのか周りの皆んながポカンとする。
サラなんか関係ないやとばかりに周りを見渡しているくらいだ。
ユリアがアレクに疑問を言う。
「坊や、蘇生魔法によって生まれたってどうゆうこと?」
「ユリ姉、僕は本来生まれてくる人間じゃなかったって事だよ。僕は本来死産だったはずなんだ、お母さんのお腹の中で死んでいた存在、そうでしょおじいちゃん?」
「そうじゃ、アレクは生まれるはずの無い存在じゃった」
シビージャは懺悔する様にアレクに話をする。
「わしはな聖人と呼ばれて王都中に蘇生魔法に必要な魔力を溜めていた、私の母……マーレの指示によって。そんな時に母から使命が降った」
——賢者の子孫が絶える危険がある——
「密命を帯びて賢者の子孫、つまりはアレクの命を救うためにこの街に来たのじゃ。そうして原初の間から当時王都に溜まっていた魔力、つまり封印術を施して、アレクの命を救ったのじゃ」
アレクから一回も視線を離さずに話すシビージャはどこか決意に満ちた表情をしていた。
「生まれてから蘇生の間に転送されたのはアレクがもう蘇生を体験していたからじゃ、生まれる前にこの場所に登録されていたんじゃ。異常な状況から生まれたアレクは貧弱だった、それもそのはず本当なら死んでいる子供じゃからな」
みんなの視線を移動させる様に、シビージャは下の魔法陣を向く。
「ここは原典の蘇生魔法がある場所、なんのデメリットがない、故に魔力が足りなければ中途半端な人間が生き返る」
当時を振り返って悲しい表情をする。
「蘇生は成功した、でも代償はデカかった、HP1なんて子が産まれてしまった。アレクが死ぬ度に大勇者と賢者の記憶が流れて来るのは子孫じゃから、血の契約による繋がりは否定できるものではない。ましてや此処は原典、明瞭な記憶が流れ込んで来たんじゃろうな」
シビージャは勇者たちを見て頼み込む。あの日ラインハルト頼み込んだ様に頭を下げて。
「アレク、賢者はもう死人じゃ。賢者ソフィアは蘇生に耐えられる力を残しとらん。じゃから楽にさせて欲しい」
ソフィアの魔王の真実を暴露したのだ。
「おじいちゃん、魔王は蘇生に耐えられないって本当?」
「あぁ、傲慢の使徒「マーレ」は信じたくないみたいじゃが、アレクを見てそう結論ができた。未熟な蘇生魔法は人間を人間以外の何かに変化させてしまう。もう魔王は生きながら死んでいる」
そこからおじいちゃんは、魔王の居場所を教えてくれた。
「皆は魔王の居場所をしらんであろう? 魔王はな此処より東に行った場所に封印されておる。大勇者がかつてソフィアの鎮魂のために建てた祠がそこにある。そこで今でも封印されておるのじゃ」
話し終わったおじいちゃんは自分の役目を終えたと満足げな笑顔を浮かべていた。
長らくアレクのことを見守り、この話をするのを自分の使命だと感じていたのだろう。
そうして、ある懸念を勇者たちに話し出した。
「最後になるが、最大の懸念がある、それは最後の使徒「アルベルト」についてじゃ」
最後の使徒について話を始めたのだ。
「アルベルトはおそらく魔王に蘇生魔法を使用した場合、消え去ってしまうことを知っている。奴はそれを阻止しようと動いている」
大神官シビージャ・サレスは最後の使徒。強欲の「アルベルト」は真実を知って、魔王を守っていると言う。
追加で、みんなの前でこんな話もする。
「今、お前たちが向かったところで勝てぬだろうな、消滅の力はそれほどまでに強い」
「おじいちゃん、それじゃあどうすればいいの?」
不安になるアレク、諭す様に話すおじいちゃんはどこか孫に話す様な優しいものだった。
「強くなりなさい」
無茶なことを言うと思った、けど後に続いた言葉はその言葉の意味を助ける言葉だった。
「アレクよ、此処に血を垂らして祝詞を唱えるのじゃ。そなたならきっと更なる知識が得られるであろう。もう一度生き返るのじゃ」
そうしてアレクは最後の儀式を始めるのだった。




