第30話 大犯罪者の子孫。
続きです、読んでいただいてありがとうございます。
(どこ? ここ?)
ユリアは気が付いたら真っ白な空間に居た。
さっきまでアレクを守る為にみんなで囲んで。
私はいつの間にか壁に飛ばされてて。
(あぁ、これ私だけ死んじゃうんだ)
本気になった傲慢の速さは知覚出来ない程の速さで。
ゆっくりと何故か走馬灯の様に自分が蘇生する感触が分かる。
「ねぇ、お姉さん遊ぼ?」
真っ白な空間の中で、目の前にポツンと小さな可愛らしい少女がいた。
(誰?)
誰だかわからない、ただ分かることは真っ赤に燃える様な綺麗な茜色の髪をしているということ。
「ねぇ、ねぇ遊ぼ?」
少女はずっとこちらを見て遊ぼうと話しかけてくる。
綺麗なドレスを着飾って、貴族のお嬢様の様に。
一つ違和感を感じるとしたら、その手に子供用の西洋人形がいることくらいだ。
「あれ? 聞こえないのかな? やっと会えたのに」
異質な光景なのに自然と恐怖を感じなかった。
ユリアは少女に同質の感覚を感じていた。
(誰なんだろう、取り敢えず遊んで欲しいのね)
ユリアは謎の少女の前へと進みでる。
少女と一歩程の距離まで詰めたらユリアから声をかけた。
「お嬢さん? 何して遊ぶの?」
「これ!」
遊んでくれる事に気を良くしたのか、可愛らしい笑顔を向けて西洋人形を差し出した。
(お人形遊びがしたいのね、まぁ夢だしいいわ)
ほんの気休め、そうなんの意味のない夢の話。
ユリアは西洋人形に手を伸ばそうとした。
「ふふふ、お姉さんもお人形さんだね!」
「え?」
言っている意味がわからなかった、急に自分の体が前へと進む。
可笑しい、私は右足を出そうとしたはず。
なんで左足が前に出る?
「あれ? 可笑しいな、うまく動けない」
「ふふふ、新しいお人形さんだ!」
目の前の少女はより一層楽しそうに声をあげる。
そうして今度は西洋人形がありえない動きをする。
「ほらアニー、新しいお友達だよ! 遊んであげましょう!」
少女から手が離れた西洋人形が。
勝手に動き出したのだ。
(何これ、怖い、やだやだ!)
ユリアは必死に逃げようとする、だが全く体が動かない。
手こずっているうちに西洋人形は目の前に来て笑いかける。
「貴方も、人形になったんだね。私はアニー、彼女の操り人形よ」
自分の意思に反してユリアは西洋人形と一緒にダンスを踊る。
抵抗していた感情も人形と踊るに連れて慣れてくる。
最初に抱いた恐怖が抜け落ちている事を忘れている。
「ねぇ、お姉さん。私のこと好き?」
謎の少女が急にそんな質問を投げかけて来た。
不思議な空間の中でユリア自体も楽しんでいたのだろうか。
口が勝手にこう答える。
「うん、好き」
答えを聞いた少女は気を良くしてユリアに抱きついた。
その瞬間ユリアに溶け込む様にして、小さな少女が消える。
「……え」
消えた後にはさっきとは真逆の真っ暗な空間に変わる。
その中で見えるのはキラキラと光る細い一本の管。
「これは……糸?」
余りにも綺麗で濃密な魔力を糸に纏わせていることが分かる。
ユリアは好奇心から糸を手繰り寄せる。
するとドンドン遠くにある小さな物が、ドンドン大きくなっていく。
心臓の高鳴りを感じながら、ユリアは手繰り寄せる。
いつまで手繰り寄せていたのだろうか、もう目の前までその存在は近くにいた。
「……お姉さん、お姉さんもここまで来たんだね」
さっき白い空間にいた真っ赤な少女だった。
今度は声にならない恐怖が押し寄せる。
ここに居たくない、不安になる。
なんなんだろう、この少女は。
この力は。
「私ね、お友達が欲しかっただけなんだ。お姉さんはもう友達がいるみたい」
悲しそうに話す少女は、真っ赤な瞳をこちらに向ける。
「お姉さんなら、この力。違う事に使えるのかもしれない……」
「違うこと?」
「うん、渡してあげる。全てを操る力」
「操る……力」
「そう、本当のユニークスキル「マリオネット」を」
言ったと同時に少女の赤とユリアの赤が混ざり合った感じがした。
視界が冴えてくる、ぼやけて居た世界に覚醒の時が来る。
道が見える、傲慢に蹴られた時、引っ掛けた時。
繋がってる、私はマーレと糸で繋がっている。
じゃあ簡単な事だ、操ってしまえばいい。
マリオネットの力で。
周りにしたらほんの僅かな時間だった。
蹴られて壁に激突したユリアに対してティアラが回復させようと駆け寄った時。
ユリアが一人でに立ち上がったのだ。
意識は朦朧として居て、どこを見ているのが定かでは無い。
そんな状態のユリアがおもむろに腕をあげる。
全く無意味な行動。
アレクすらも首を傾げた、だけど一人だけ驚いた存在がいた。
「な……ぜ、私の右手が上がっている?」
良く見るとユリアと同じ様にマーレも右手をあげていたのだ。
次第にユリアの双眸に光が戻って来る。
ユリアに生命の力強さが戻った時、彼女は言った。
「大犯罪者……マリオネット」
一人にしか聞こえない呟き、噛みしめる様に、飲み込む様に。
「そう、これが貴方の力。そして私の力」
ゆっくりと真っ赤に燃える様な瞳は傲慢の使徒「マーレ」に向かう。
マーレを見ている様でどこか違うものを見ている。
「こんな狭い空間なら、私の糸が全て届いちゃうじゃない」
どこか確信めいた発言をする、さっきからマーレの背中から冷や汗が止まらない。
「ねぇ坊や、私本当の糸の使い方が分かったわ」
「……ユリ姉、まさか最初の間で記憶を覗いたんだね」
「あ、そうゆう事か、記憶。そうね記憶だわ悲しい孤独な少女の記憶」
一人ぼっちで話し相手もいなくて、きっと友達が欲しかったんだ。
操って、自分の思い通りにして。
だからきっと最低なスキルなんて呼ばれちゃって。
そっか、そうか。
私のスキルが最低な理由分かっちゃったわ。
緊迫した状況を切り裂く様にユリアの笑い声が響く。
マーレは動かない、いや、動けない。
「みんな、もうこの勝負は勝ちよ。傲慢はもう、私の手の中にある」
彼女の両手は操り師の様に動き始めた。
名前 ユリア・スカーレット
職業 糸使い→マリオネット(進化)
ステータス レベル36
HP 235
MP 331
ATK 156
DFE 121
INT 254
AGE 308
称号 忌子 大罪人の子孫 全てを操る者
ユリアが覚醒する理由。
尺(文字数の関係上)です。違和感を感じると思います、ここで覚醒?
ごめんなさい、詰め詰めで行かないと15万を超えることに気づきました。




