第26話 魔王の正体。
もう止まらない、更新のボタンが離れないぃいい!
読んで頂いてありがとうございます、再開記念に何話か垂れ流します。
「蘇生の間?」
アレクは思はず聞き返してしまった、それもそのはず王都「ハルザ」にはもう立派な協会が城下町に存在しており、蘇生の間もあるのだから。
「お母様良いのですか?」
ティアラが目を見開き驚きを露わにする、ごく一部の者しか知り合えない場所、王族が守りし秘宝なのだから。
「此処の方達はもうご存知なのでしょう? ならば隠す必要はないでしょう」
あっけらかんと発言の訳を話してくれる、何とも大胆な人だ。 ティアラ姫は王妃の血を強く引き継いでいるのが良くわかる。
衝撃の秘密の公開にみんなが唖然とする中で、アレクはいまの発言の意味を整理して居た。
「王妃様、最初の間とは何でしょうか?」
「小さな英雄さん、その名の通り初めて設置された場所という意味です」
「初めて? 蘇生魔法は賢者が作り出したのでは?」
「そうです、その蘇生魔法を設置したのが大勇者で御座います」
「……初耳でした」
「ふふ、王族のみに伝わる口伝ですから、知らなくても当然でしょう」
少し得意げに話す王妃、そのまま話が長くなることを明示するかの如く近くの椅子に腰をかける。
周りの人を見渡して、ゆっくりと秘宝の話を始める。
「皆様、使徒がなぜ魔力を集める訳をご存知ですか?」
王妃は学校の先生の様に微笑みながらも周りを見渡して話し出す、その質問に間髪入れずに答えるのはやはりというかアレクだった。
「魔王復活の為です、先ほど考えて居ました。それしか魔力を集める理由がわかりません」
アレクは使徒の行動パターンからその共通項である魔力を集めること、そして自身が持っている膨大な知識を組み合わせた時に導かれる結論として、魔王の復活を可能性として挙げた。
「……そうです、勇者の甥は随分と頭がよろしいのですね?」
不審に思われながらもラインハルトは頭を掻く、正直ティアラの母である。
その言葉には確信めいた意味を持って居た、似た者親子だ。
勇者の頭を掻く姿を見て微笑する、ほぼバレていると見て間違いない、ただ話を合わせてくれているのだ。
「みなさんが知らない事ですが蘇生の間は魔力が集まる場所なのです」
王族に秘められた使命を話していく、その話の一つ一つが重い新事実。
蘇生の間のメカニズムが話される。
「死んだ場合、レベルの消失が起き減った魔力を利用して蘇生は成ります。 つまり、蘇生の工程は人から魔力を抜き出す技術が御座います、何処かで心当たりがありませんか? 魔力の吸収」
話しながらラインハルトを見やる、その瞳にはラインハルトの能力を言っていると言外に伝えている。
ラインハルトは自分のことを言われていると瞬時に理解して問われた質問の答えを言う。
「……ハーベストですね」
「そうです」
満足そうに話す王妃、さらに深い所まで話は続く。
「使徒に同じ能力がある、その意味が分かりますか?」
不敵な笑みを見せる、瞳は小さなアレクに向けられている、彼ならば答えられるだろうと分かっているのだ。
「勇者の能力に蘇生の力……封印術は蘇生の間で行われる。封印術には蘇生の術が入っている?」
ゆっくりと自分の考えをその場で話す、どこか確信が持てなくて眉をハの字にしている。
答えを聞いて王妃は嬉しそうに頷く。
「そうですよ、勇者の封印術は蘇生の術が入って居ます、と言うよりも蘇生術といっていいかもしれませんね」
勇者が王城の地下にある最初の間で行われる儀式、それは蘇生術の付与にあった。
「ですから、魔王を倒せないのです。生き返らせるのですから」
と、核心に近い話をする。
「魔王は死んでいるのですか?」
間を空けず質問を挟む、その理屈だと当然魔王は死んでいることになる。
だが王妃は首を横にふり否定を表す、代わりに言葉で正解を喋る。
「そこまでは分かりません、ただ魔王に蘇生魔法をかけて。100年周期で封印が成されている、何か秘密があるはずです」
その先は王妃でも知り得ないことだった、だがもう一つ気になる点がある。
「王妃殿下、私のマーメイドの涙も魔力を吸収します。それはどう説明すれば良いのでしょうか?」
サラが話の途中で会話を遮って聞いた、確かにマーメイドの涙も魔力を吸収するのだ。
話を折ったのに王妃は気を悪くする事なく話をしてくれる。
「マーメイドの涙、確かに秘宝になっている石ですね。鉱石にも一部魔力を帯びるものがあります、総じて魔石と呼ばれて居ます。実は蘇生の間の魔法はマーメイドの涙を元にしたと考えられて居ます」
サラが呆然とする、先祖が魔王の消滅に必要だと言ったマーメイドの涙は蘇生の元だと言うのだから。
「そ、そんな訳が無い。それではマーメイドの涙を使用しても魔王を消すことが叶わないではないか!」
語気を荒げて勢い余って立ち上がってしまう、自分の声の大きさに驚いたのか静かに小さく謝罪をして席に着く。
そんなサラの姿を見て王妃は真剣な目をして話し出す。
「皆さんには言って置かなければなりません、魔王の消滅は不可能です。今から最初の間に皆さんを案内しましょう、そこなら誰にも聞かれる心配は無いでしょう」
私について来なさいと言って先を進む王妃。
一同呆然として居たが、そのまま居間を出ていく王妃を見て、急いであとをついて行く。
王の間の王と王妃の椅子の間に人が一人通れる開きがある、実はそこからが最初の間への入り口になって居た。
すると王妃は自分の血を床に垂らす、何かの魔法なのか傷付けた指の血がすぐに治った。
ぼんやりと魔法の反応が現れて魔法陣が浮かび上がってくる。
「夫を殺した理由はこれです、王家の血が必要だったのです」
国王が弑逆された目的は最初の間に入るための生贄だったと話す。
殺された国王のことを思っているのか横顔はやや翳って見えた。
静かに自分の手を前に突き出し、浮かび上がる魔法陣に祈りの祝詞を捧げる。
——祝福の鐘の音よ、輪廻を与えし神の慈悲に感謝します、我らは世界の調停者として歯車の一部とならん事を——
選定式の祝詞がそこで呟かれる、呟いた後に歯車が動く音がする、ゆっくりと地下に進む道が開けたのだ。
「王妃様、今の祝詞は……」
「王族にだけに伝わる祝詞です、それが何か?」
質問の意図が分からなかったのだろう、アレクに向かって訝しがる目を向ける、アレクは今の祝詞で繋がる事実に一人だけ驚いたのだが、その事を言わずにみんなについて行った。
長い地下の階段を下って行くと深さにして20Mほど地下に行った所に良くある教会蘇生の間と正反対の、真っ暗な中で浮かび上がる魔法陣が存在して居た。
「見て分かりますか? これが最初の間です」
最初の間と呼ばれた魔法陣は七色に光り輝いて居た。その真ん中に立って王妃は振り返ってこう言ったのだ。
「封印の儀式には代々勇者の右手を犠牲にします、それは右手にある物を埋め込むからです」
ラインハルトを見つめ儀式の真相を語る。
「勇者の右腕にあるもの、それは魔王の右目です。魔王は魔力の塊、その力を使うのです。これが勇者が使徒から狙われる理由、そして王都の最初の間には特別な仕掛けがある」
薄暗く光り輝く魔法陣に反射しながら王妃の話は続く。
「勇者は約束をしました、魔王を救うと。それは決して明かされる事のない悲しい物語」
王族の中でも、特別な血を持つ者。代々王妃のみに伝えられて居た魔王の根底を崩しかねない事実。
「魔王は賢者です」
蘇生魔法を作り出した人は誰か、その考えに至ると発言の意味がガラッと変わる。
「勇者は魔王を殺したくないのです、だから封印しか出来ない。愛して居た人だから」
かつて遥か昔に起こった悲劇の話。
「話しましょう、何があったのかを」
王妃は全てを語る、本当の大勇者の物語を。




