表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/41

第25話 使徒が襲う条件。

皆様長らくお待たせしました、割烹に記載した通りあと数話で完結する所まで至ったので投稿再開いたします!


本当にお待たせしました。

 暴食と嫉妬を撃破した勇者達は王都が被った甚大な被害を目の当たりにしてすぐさま救出と援助に駆り出される。


 援助を行いながらもカーミラとリーミラの双子がなぜ王都を襲ったのかが不可解で仕方がなかった。

 国王と殺害して勇者にその罪を擦りつけようと画策した理由が今ひとつ分からない。

 悶々として悩んで居たが、復興よりも優先するべき事ではないと、自身の思考に蓋をした。


 王都の復興に数日の時間を費やした、特に目を見張るほどに率先して救援を行なって居たのはティアラだった。

 必死な顔で何かを忘れたい様に、一生懸命になって手助けする姿を市民は観て、心を打たれて一人また一人と助け合いの輪が広まって居た。


 ティアラは忘れてしまいたかった、お父さんが死んでしまったという事実を。

 涙を流さない様に市民に見せる笑顔は儚く歪な造形を形作ってる事にも気付けていなかった。


 一旦王都の復興作業は目処が立つ、そうなると勇者一行は今回の騒動を明らかにするために王城へと向かわなければいけない。


 未だに勇者には国王暗殺の嫌疑がかかっていた、今回の二人の使徒が王都を襲撃した事件が起きたために、半ば疑いの目は薄まっている、王城へ向かう訳は皆の前で潔白を示す一つの儀式が必要だったのだ。


 復興の手伝いを行いながら王城への謁見への準備を整える、今回は王妃への謁見となる。

 前回と同じ様に騎士の後ろを付いて行きながら歩いてく、重い足を引きずりながら。

 また大扉の前にラインハルト達は立つ、王妃に謁見するという大変な栄誉だというのにみんなの顔色は悪い。

 やがて音楽が鳴り響き大扉がギギギと音を立てて開く。

 真正面に見えたのは片椅子に誰もいない、王妃だけの姿。

 ピースが一枚足りない、居たはずの人が居ない。

 代わりに王の間に異様なほど存在感を放つ棺が一つ。


 ティアラは入った瞬間に王妃の顔を見て悟ってしまう、あの中にお父さんが眠っていると。

 フラフラと夢見心地な不確かな足取りで過度な装飾の施された棺の前に立つ。

 騎士団の人たちなのだろうか、ティアラに邪魔にならない場所から棺まで近寄り、見せる様に両端を持って持ち上げた。


 棺が徐々に開けられて行く、眠っているかの様な今は亡き父の姿。

 ティアラは周りを憚りもせずに泣き伏した。


「お父様! お父様ぁ!!」


 王の間に一人の少女の悲鳴が響く、誰も咎めることはない。

 虚しいまでに良く響く鳴き声は、その日太陽が沈むまで絶える事はなかった。



「なぁ、アレク。俺は一体何を倒して来たんだ……」


 ティアラを王の間に残してラインハルト達は広い王城の中で来客として用意されていた居間でティアラの帰りを待っていた。

 ラインハルトは最後に倒したカーミラの悲しそうな懺悔の表情が脳裏から離れない。

 人間とは異なる存在、魔族。

 その筈なのに、どこか人間らしい感情を持っていて、自分が人殺しをしたという罪悪感に苛まれる。


「勇者様……勇者様は魔王を倒すお方です、世界が破滅に向かっても良いのですか?」


 ラインハルトの隣のソファーから勇者をじっと見つめているアレクはそう答えた。


「確かに、今回の一件の様に魔族を倒さなければ王都はもっとひどい事になっていた、でもな考えてしまうんだよ……」


 誰にも答えの出ない、なまじ勇者はアレクのおじいちゃん「シビージャ・サレス」から人間と魔族は同じ種族だと知っている為に、今回の一件は同じ種族だということを強く印象に残してしまった出来事になっていた。


 ただただ時間が過ぎる、ラインハルトもユリアもサラも沈黙を保ち考えを巡らせていた。

 本当にこのままで良いのかと?

 世界の景色が段々と暗くなり、月の灯りが天井のガラスから仄かに漏れてくるまで、勇者達はその場を動かなかった。

 そんな時間になって、やっとティアラは王の間から出て来たのだ。


「……あれ、皆様ここで待っていたのですか?」


 どこかぼうっとした姿で立ち尽くしているティアラ、その姿を見てユリアが声をかける。


「ねぇ、お姫様大丈夫なの?」


 優しい声を聞いたティアラはまた泣き出しそうで、気を抜いたら巻き戻ってしまいそうになる涙腺を無理矢理引っ込める。


「えぇ、大丈夫ですよ。ありがとうございますユリアさん」


 みんな気づいている、心を読める聖女は。誰よりも強くなければと無理をしていることを。


「なぁ、聖女さん。泣きたい時はもっと泣いた方が良い。楽になる」


 相手の顔を見ずにサラはティアラに声をかける、サラもティアラのことが心配だった。


「……みなさん優しい、本当に綺麗な心の人達ばかり。 ……私は幸せ者ですね」


 少し気が緩んだのだろう、フッと微笑んだ笑顔には作り物の雰囲気は感じない。

 国王弑逆の報告から、実際に死を目の当たりにするまでどれだけの葛藤があったのだろうか。

 人に感謝を述べれるくらい他人を思いやれる王女を、みんな強い人だと感じた。




「結局、使徒の目的が分かりません」


 一人だけ天井を見上げて呟くアレク、その発言はみんなも同じだったのかまた沈黙が降りる。

 独り言なのだろうか、ブツブツとアレクは自分の考えをまとめずに吐き出していく。


「これまでの使徒を考えていました、憤怒、色欲、怠惰、そして暴食と嫉妬。その共通点を」


 まとめながら思いつく、一つの線にたどり着く様に。


「憤怒は感情を、色欲は魔力を怠惰は鉱石。 この3人に共通するものは、色欲が分かりやすいですね『魔力』です」


 指を折って数える。


「そうなると暴食と嫉妬も魔力を欲してこの王都を襲撃したとなるのですが……憤怒と同じ感情を集める魂胆?」


 また振り出しに戻る。首を横に振って再思考をしだす。


「違いますね、国王を殺す意図が分からなくなります。鉱石も王都からは取れませんので除外です。残るのは魔力ですが……私には見当が付きません」


 そこまで行って頭を掻き毟るアレク、よっぽど気にかかるのだろう。

 独り言は当然みんなにも聞こえていた、話を聞いていてティアラが一つ思い出す。


「……そう言えば一つだけ、魔力の高い場所が存在します……でも、どうなんでしょう」


 やや自信なさげに話し出すティアラ、アレクはわずかな情報でも知りたかった、ティアラの方に顔を向けて先を促す。


「ティア姉、どんなことでも良いんだ。その場所はどこ?」


 質問されてやや声に詰まるティアラ、話して良いのか迷う問題だった。


「話して良いのかしら……」

「良いのではないかしらティアラ?」

「お、お母様!」


 後ろを振り返るとティアラの母親、王妃殿下がいた。

 唖然とする中で空気も読まず勇者達の輪の中にズンズンと入って行く、その瞳には何かの決意が見える。


「…! これは王妃様! 失礼いたしました」


 急いで臣下の礼を取るラインハルト、その行動を見て皆も勇者と同じ行動を取る。

 王妃は鷹揚に頷いて、皆に顔を上げる様に促した。


「そんなかしこまらなくても大丈夫ですよ、小さな英雄さん貴方の考えは正しいわ」


 アレクの目を見て話しかける、自分の推察が正しいと言われてより一層期待が高まる。


「王族の方には心当たりがあるのですね? 一体どこだというのです?」


 ストレートに答えを聞くことにした、その答えは隠されるべき最高機密の秘密。


「これは王族のみに伝わる秘密の話、私は貴方達に託すと決めました」


 みんなの真ん中に立ち、ゆっくりと厳かに話し始める。


「勇者に封印術を施した別名「最初の間」。一番最初に設置された「蘇生の間」と言われている場所です」


 王族と聖女そして勇者しか入ることを許される事のない秘密の部屋。


 王国の最高にして秘匿されるべき、秘宝の眠りし場所。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ