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第2話 勇者様にスカウトされる。

クリックありがとう御座います、2話目です。

 

 アレクが大賢者になった事はその日の内に町中に広まった。

 人の噂とは口に戸は立てれないもので知らないうちに広まってしまうものらしい。

 騒動の中に巻き込まれた本人と言うと。


「ねぇねぇおじいちゃん! 僕は大賢者なんでしょ? 大賢者ってすごい?」

「う……うむ凄いのぅ」

「なんか嬉しそうじゃないね? どうしたのおじいちゃん」

「アレクが大賢者だと知れたらこの国の王様がお主をどう扱うか……」

「大丈夫だよおじいちゃん! 僕勇者の一員になって魔王を倒してみるのが夢だったんだ!」

「はぁ……心配じゃ」


 自分が伝説の大賢者になったことでアレクははしゃいでいた、無邪気故だろうアレクは何も心配も抱かずにいた。


 そんなアレクの元にやたらと身なりの良い人が訪れたのはその数日後だった。


「すいません、この町に大賢者に成ったという人がいると伺ったのですが」


 風貌は精悍で真面目一辺倒を絵に描いたような男が辺鄙なこの町にやって来た。

 町の人々は一瞬にしてその男が誰なのか分かった。

 5年前二十歳にして王国騎士団1番隊長になり、今や魔王を倒す勇者の称号を神から授かった男だった。


 名をラインハルト・ミュラーという。


「英雄だ……本物の勇者だ!」


 勇者が解き放つ凛々しい姿にアレクは見惚れた、佇まいは堂々としていて自信があるのが分かる。

 誰でも惹きつけてしまう鋭く青い双眸に、何処を向いても名高い絵画になるような好青年だった。


「おかしいな……この村にいると聞いていたのですが」


 ラインハルトはいつまで経っても出てこない村人を訝しがり噂はやはり噂の類だったのかと諦めかけていた。

 そんな時に、一人の少年がこっちに向かって走って来た、いや走るほどスピードが速くない、むしろ遅い。


「何だあの子は?」


 目をキラキラと輝かせこっちに向かって来ていた少年は、小石に躓き見事に転倒。

 そのまま転倒したと思ったら。


 消えた。


「は?」


 あまりの超常現象にさすがの勇者も疑問の言葉しか無かった。なぜ消えた? 瞬間移動か?

 それがラインハルトと大賢者アレクの初めての邂逅だった。



 勇者が訪問した日の夜。


「いやーおもてなしが遅くなってすいません勇者様」

「い、いえとんでもございません」


 慇懃丁寧に村長の歓待に答えているラインハルト、結局あの転倒事件後ラインハルトは村長に呼び出されて歓迎会を催されていた。


「もてなしの品もこの様な粗末なものですいません、なにぶんいきなりのご訪問だったもので準備が至らず」

「いえいえ、とんでもない! こちらこそ急に押しかけてしまって申し訳ございません。」

「いえいえ、こちらこそ」

「いえいえいえ」

「いえいえいえいえ」

「いえいえいえいえいえ」

「……」

「……」


 全く埒のあかない譲り合いの後、沈黙が場を支配した。

 勇者は思い切って本題に入ることにした。


「私が今回この町に訪問したのはもう理解なさっていると思います、それはこの町に生まれたという大賢者のことです」

「はぁ、大賢者ですか」

「ご存知ない?」

「へぇ、そんな子供がいた様ないなかった様な」


 確かに大賢者の噂は町に広まっていた、だか嘘の類だとみんな勘違いしていた。

 現にアレクの存在は親しい人しか知らなかった、この町では両親と神官のおじいちゃんくらいしか存在を知らなかったのである。


「嘘を……行っている風ではありませんね」

「はい、一体どこから出て来た噂なのか皆目検討もつきません」

「仕方ない、噂はやはり噂であったか……」


 みるからに肩を落とし落胆の表情して勇者は諦めようとしていた。

 その様子を村長の歓迎会の末席に連なっていた神官のおじいちゃんは見ていた。


「……アレクは気を落とすだろうて」


 自分の忠告を無視して飛び出したアレクは小石にぶつかって転倒し今は蘇生の間で眠っていた。

 あんなにも目を輝かせて飛び出て行ったアレクを見ておじいちゃんは一人悩んだ。


 可愛い子には旅をさせろ……か。


 自分の中であれ程までに夢中に求めているアレクを見たことがない、あそこまでアレクがやる気を出して動いたことはこれまでに無かったのだ。

 だからおじいちゃんは可愛い孫を、アレクを、憧れの勇者に託すことを決意したのだった。



「ちょっといいかの?」

「はい?」


 ラインハルトが振り返るとそこにはこの村の神官であるシビージャ・サレスがいた。


「こ、これは大司祭どの! お久しぶりでございます」

「よいよい、今宵は無礼講じゃ。気を楽にせい」

「で、ですが」

「昔のことは昔のことよ、今はただのおじいちゃんじゃ」


 ラインハルトがまだ王国騎士団に新兵としていた時に、王都の大聖堂で大司祭を賜り、王国にその人ありと謳われた聖人、それがアレクのおじいちゃん、大神官シビージャ・サレスだった。


「あなたほどの人がどうしてこんな辺鄙な場所に……」

「まぁ、人生とは奇妙なものでの。案外この様な自然に囲まれた生活というのは安らぐものじゃ」

「そうですか、あなたがまた王都に戻って頂ければと思ってしまいますが野暮でしょうね」

「今はこの生活が幸せじゃからの……」

「やはり王都はお嫌いですか?」

「そうじゃな……お主もわしの気持ちが分かるのではないか?」

「……はい」


 王国で勇者として称号を神から授かったラインハルトはその重責ゆえ、周りからの圧力に疲弊していた。

 期待されることはとても誇らしい事だったが、日に日に成果の出ない日々、周りの貴族や民からの視線に耐えきれなくなっていた。


「私がこんなにも弱い人間だと初めて知りました。今回もあるか分からない大賢者の噂を聞いて、いても居られず飛び出して来たのですよ」

「カカカッ! 勇者殿とあられるお方がその様な弱気を言いなさる!」

「茶化さないでくださいシビーシャ殿、私は本当に……弱い」

「……弱い、か……お主の求めるものはそれよりも弱いぞ?」


 勇者はシビーシャの話し出す会話が全く検討が付かずに首を傾げた。


「……どうゆう事ですか?」

「わしにはな、おじいちゃんと呼んでくれる奇特な少年がおってな」

「……はぁ」

「アレクと言うのじゃが、たいそう貧弱ゆえ毎回死んでは蘇生してを繰り返している」

「そんな子がいるのですか? 信じられません」

「驚くなよ? わしがその子を一番最初に抱き上げたのじゃ、蘇生の間でな」

「蘇生の間で? どれだけ貧弱なんですかその子……」

「HP1じゃ」

「……は?」

「HP1なんじゃよその子は」

「そんな……ありえない」


 HP1なんて異質な存在、認めるわけにはいかなかった。


「そう、あり得ないほど貧弱な子なのだ、アレクはそれ故に家と教会しか世界を知らん」

「……それは可哀想に」

「じゃから連れ出してくれんか? ワシの可愛い孫をな」

「いくらシビージャ殿の頼みでも……HP1の子は……」

「それが大賢者でもか?」

「……大賢者?!」


 シビージャの驚愕の発言にラインハルトは目を丸くした。自分の信頼する人からの爆弾発言、大賢者がその様な子供だと誰が予想するだろうか。


「シビージャ殿……それは真ですか?」

「真じゃ、この町に大賢者はおる……だがHPは『1』じゃ」


 衝撃的な発言にラインハルトは目の前がくらっとよろけた。

 HP1だと?! そんなのどうやって一緒に連れて行けば良いというのだ。

 そんな不安を見抜いて居たのだろう、シビージャは勇者の前で頭を下げた。


「頼む、一生の願いじゃ。あの子に、世界を見せてあげてくれ!」


 目の前で頭を下げたまま懇願している嘗ての大司祭の姿があった。

 自分が新兵だった頃からは想像できない光景に勇者は声が一瞬詰まった、尊敬する人物から頭を垂らされている事実、真面目で愚直な勇者が断る事ができるはずも無かった。


「分かりました、この勇者ラインハルトが守ってあげましょう!」


 短くも真剣にラインハルトは答えたのだった。




名前 ラインハルト・ミュラー

 職業 勇者

 ステータス レベル95

 HP 985

 MP 273

 ATK 865

 DFE 786

 INT 342

 AGE 564

 称号 剣聖 光の任命者 王国の守護者

 光魔法レベル1 分散 (ディスパーション)


 ラインハルトは騎士団に所属中の時に巫女より勇者の神託が降る。 騎士団時代にも突出した剣技と光魔法のコンビネーションで数多くの功績を残す。 勇者に任命されてから魔王に向かったがその部下に惨敗。 悲嘆にくれる中で自分の仲間を探しに旅を決意。 最初に出会ったのがアレクという少年だった。


また1時間ほど後に投稿します、よろしければ読んで頂けると嬉しいです。

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