第18話 炭鉱の町「ダグレフト」。
気付けばもう10万文字の半分に到達しました。
10万文字で終わる気がしない、頑張っていきます。
勇者は鍛錬場で不意に遭遇した暴食のマルスを自身の力で退ける事に成功した。
ラインハルトは自身の力を知り着実に成長をしている感触を肌で感じたのだ。
「みんなが待っている、この事を話さないとな!」
走って帰る勇者の足取りは羽根が足に着いたように軽く、見えない重い壁は消え去っていた。
心地良い心臓の鼓動を数えながら、息を荒くして王都に帰っていく。
王都は夕陽に照らされてどこか暖かく許された気がした、仲間の待つ宿へ駆け込む。
「みんな! 俺に新しい力が……」
扉を勢い良く開けた先にはティアラ姫を含めた四人が地図を見て悩んでいた。
「うーん……っあ! 勇者様お帰りなさい!」
アレクがいち早くラインハルトの帰りに気付く、勇者は四人の真剣な表情に自分の話題など霧散していた。
「アレク、どうしたんだ? みんなして地図を見て」
「それが、今日観光していた時に炭鉱夫に遭いまして」
そこから勇者と離れた後みんなで王都を堪能していた事を話してくれた、昼過ぎの甘味処での話に耳を傾けた時、奇妙な会話をサラが聞いていた。
「勇者さん、炭鉱の町「ダグレフト」の坑道を塞ぐモンスターが居るらしくてね」
「モンスター?」
「それをみんなで使徒じゃないかってね」
可能性の低い予測だった、だがアレクが食いついたのだと言う。
「勇者様、恐らく怠惰の使徒「ラドン」だと思われます」
「怠惰……」
「そうです、伝承から大男で惰眠を貪り。そのイビキは周りの物を破壊すると言われています」
「イビキだと?」
「常に眠ってるらしいです」
大賢者が話に乗って来るようなら噂の類でも信用度が跳ね上がる。
「行ってみるか」
「あれ? ハルトあんたなんか吹っ切れた顔してるわね」
「分かるか? そうなんだよ、皆んな聞いてくれ! 光魔法の使い方が分かったんだ!」
子どもの様に話し出す勇者の会話を皆んな微笑みながら聞いていた。
勇者を元気付ける為に買った皆んなのお土産の出番は、どうやら必要が無かった様だ。
翌朝になり早朝の涼しい風を感じる、太陽がまだ微笑んでる内に五人は王都を離れる。
目指すは怠惰が居ると思われる炭鉱の町「ダグレフト」へ。
「ダグレフト」への道中で。
「そう言えばアレクに聞きたい事があったんだ、使徒は魔法が使えるのか?」
「あれ? 言ってませんでしたっけ? 使えますよ」
さも当然の様に返答したアレク、勇者は自分の浅慮に呆れた。
「なんてこった……聞かなかった私が悪かったが、使える魔法を教えてくれないか?」
「あっはい、そもそも七人の二つ名は「傲慢」「嫉妬」「憤怒」「怠惰」「強欲」「暴食」「色欲」が付きます」
「それは私も知って居る、七人の特徴を表した二つ名だな」
「それぞれ使える魔法が異なります、傲慢は「炎」嫉妬は「土」憤怒は「雷」怠惰は「風」強欲は「水」暴食は「氷」色欲は「毒」です」
会話途中に割り込んできたのはユリアとサラだった。
「え! 色欲って毒魔法使えたの?」
「それは本当か大賢者さん?」
「え、えぇだから嫌な敵だったんですよ」
顔を青くする二人、毒魔法はジワジワとその身を侵食する危険な魔法だった。
「私そんな事も知らずに突撃したの……」
「大賢者さん、ちょっとお姉さんとこっち来ようか?」
「え? え、え?」
何も悪くない大賢者は、何故かお仕置きをされる羽目になった。
「と言うことは怠惰は風魔法が使えるのですね」
一人マイペースに話し出すのはティアラ姫だった。
「アレク、この際だ。 怠惰の能力を教えてくれ」
勇者の提案に皆んなが聞く、なんだかんだ言ってアレクの知識は破格なのだ。
ユリアとサラも手を止めて話を聞く。
「そうですね、皆さんに能力を知ってもらうのは大事なことでした。怠惰の能力はインパクト (Impact)です、音波で敵を吹き飛ばす見えない攻撃で危険な能力です」
「インパクト……」
五人は黙ってしまった、重ねてアレクは追記する。
「しかも七人のうち怠惰は魔法との相性が良いのです、風魔法とインパクトは非常に厄介です」
「こう言っては何だが勝てるのか?」
「勝てると思います、怠惰は強力な能力を持っていますが非常にとろいのです」
怠惰の使徒「ラドン」は強力な力を秘めて入るが、その本体が遅く攻略はし易いとのアレクの予想だった。
「要は当たらなければ大丈夫ですよ!」
大賢者が珍しく楽勝と言う、もうフラグでしかない。
数日かけて炭鉱都市「ダグレフト」到着した。
街の真ん中にぽっかりと空いたデカイ穴、有名なダグレフト炭鉱採石場だった。
穴を中心にして円を描く様に家が立ち並ぶ、家の煙突からはもくもくと灰色の煙が絶え間なく湧き出る。
美観など一切考慮されてない無骨な雰囲気が、剥き出しの野性味を醸し出していて味があった。
「なんか、油臭いわ」
「わぁ! たんこう! たんこう!」
「宝なさそう……」
「ほえ〜穴が深いですわね」
「……取り敢えずアレクは教会な」
再登録を済まして、早速炭鉱への入場許可を頂く。
「さぁ、噂の坑道へと行こうか!」
意気込んでランタンを翳しながら突入する勇者御一行。
歩き出して30分、問題の場所は意外と近場にあった。
「……なんだはこれ岩か?」
「何このイビキ、耳が破れる」
「勇者さん、起こしたら不味い戻ろう」
「あ、鉱石発見しましたわ!」
「岩の様な肌、凶悪なイビキ音。間違いないですよ怠惰の使徒「ラドン」です」
目の前を隙間なく埋め尽くす怪物、怠惰の使徒「ラドン」がいた。
勇者がポロリとこぼした言葉。
「これ、どうやって倒すんだ?」
他の四人も同じ思いだった。