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第12話 荒廃した町。

みなさま退屈して無いでしょうか? 楽しんでいるでしょうか?

 

不安な三鷹です、読んで頂ける皆様に深謝を。


 サラを仲間にして四人になった勇者御一行はサラの索敵が増えてより冒険が楽になった。


「そこ、木の根があるから気を付けて」

「うぉ! ありがとう」

「……どういたしまして」


 音消しの能力より彼女のその身に付いた探索能力がずば抜けていた、危険な道や罠に盗賊。

 自然と小さい頃からの特訓で森の中での生き方を知っていた。


「サラさんは本当にすごいな、指示通り歩いていたらあっという間に王都に着きそうだ」

「お世辞はいいわ…………後そこ獣のフン踏んでるわよ」

「え、うわっ! ってなんで私の時だけ事後報告なのよ!」

「あら御免なさい、全部カバーしきれないもので。ホホホ」

「この糞アマぁ!」

「やめないか、喧嘩しない。な?」

「「フンっ!」」

「あぁ、胃が痛い……」


 ユリアとサラは気が合わなかった、その事で胃を痛める勇者だった。


「なぁアレクこの二人を仲良くさせるいい方法ないか?」

「別に殴ったり蹴ったりしてませんし、いいんじゃないですか?」

「あのなぁ……」


 ガミガミと口喧嘩している風景をアレクは面白そうに眺めていた。

 自分が見たことのない光景だった、あの狭い部屋の中にいて人と接してこなかったアレクは、何気ない喧嘩の一幕でさえ新鮮に映った。

 

 微笑ましい旅は平穏に住むと思われた、だがサラが僅かな異常に気付く。


 「…………待って、この先に嫌な匂いがする」


 他の三人を手で制して周りを伺う、僅かな匂いの違いに気が付いた。

 みんなはポカンとしている、アレクでさえ感知できない距離からの判断、その培った経験は凄まじかった。


 「嫌な匂いってなんですか?」

 「気がつかない? まぁしょうがないわよね」


 先を急いで四人はサラの先導に従って歩いて行く、目の前に広がっている光景は皆を閉口させるに十分だった。


 「家が……燃えてる」

 

 ラインハルトがその光景を見て体を一歩後ろに下がった、手がじっとりと汗ばんだのが分かった。


 「盗賊の襲撃……では無いわね」

 「なんでわかるんですか?」

 「血の匂いがしないわ」

 「血の匂い……」


 盗賊に村を襲われる事は稀にだがある事だった、だがその場合食料の調達の他に殺人を犯している場合が多い。

 一切の血の匂いが感じられないこの空間は不自然と言ってよかった。


 「ねぇ、僕すごく嫌な予感がして来たよ」

 「アレクなんだその嫌な予感ってのは……」

 「勇者様、この家だけが燃えている惨状。書物に記載されてるんだ」

 

 アレクにはこの光景に合致する記述を知っていた、七つの使徒のうち戦場に焼却を行いその後に更地の土地に豊穣の大地を齎す厄介な力。


 「正しければこの後、緑に変わる」


 そう話した途端に焼却された大地が緑の大地に早変わりした。


 「坊や! 何この状況異常だわ!」

 「大賢者さん、何を知っているの?」


 思わず嫌な汗が垂れる、正直会いたく無い敵だった。

 

 緑に再生がなった土地の真ん中に一人ポツンと佇む女がいた。


 「……待ちわびたわ、女性を待たせるなんてマナーがなっていなくて?」


 花に囲まれた中で立ち上がる、遠目から見ても分かるほどの美貌。


 「……美しい」

 「勇者様ダメ! あの人に惑わされちゃダメ!」


 花の蜜に誘われる様に一人でに歩いて行くラインハルト、アレクの声なんて届いていなかった。


 「ふふっ、私の美貌に惑わない殿方なんて居ないわ。勇者ラインハルト、あなたの魔力吸わせて頂くわ」


 その言葉に二人の女性が反応した。


 「ハルトを行かせはしないわ!」

 「勇者さん、まずいわよ行っちゃダメ!」


 声をかけながらラインハルトを引っ張ろうとした、だがその行動をあろう事か大賢者アレクによって遮られてしまった。


 「ダメだよ行っちゃ!」

 「なんで! 坊や勇者が!」

 「ユリ姉、自分が伸ばした糸を見てごらん」

 「糸?」


 ユリアが勇者を捕まえようとした糸は緑の成る大地の上でポツリと千切れていた。


 「……何これ、どうゆう事」

 「あの緑の大地は認めたもの以外を拒絶する、魔の領域」

 「なんなのよそれ!」

 「彼女は色欲の使徒「レイネシア」そして彼女の能力理想の楽園(ミッドガルド)

 「ミッドガルド……」

 「彼女の楽園さ、緑が異常繁殖する理由は魔力の吸収能力、ユリ姉の糸も魔力が吸収されて届かなかったんだ」

 

 勇者を誘拐された事に思わず唇を噛んでしまうアレク、口の中に滲んだ血の味と目の前の幻想的な絵に錯覚を起こしそうだった。


 「勇者が惑わされたのは美貌なんかじゃない、レイネシアは魔力を蜜の様に広げて相手を誘惑させるんだ」

 「それに勇者が惑わされたって事?」

 「そうだよ、それに人が居なかったでしょう? その意味が今にわかるよ」


 臨戦態勢に入った三人に色欲の使徒「レイネシア」は上品に笑いながらその能力を解放する。


 【収穫(Harvest )】


 能力を解放した途端、緑の楽園から人の成れの果てが湧き出てた。


 「いやぁ! 何この人達! ゾ、ゾンビ?」

 「これが彼女の能力、彼女は魔力を媒体として敵を惑わせ操り、自分の配下としてしまう」

 「ねぇ坊や、あの人達生きてるの?」

 「もう死んでるよ、死んでも操る鬼畜さは流石二つ名だね」

 「どうするの? 近寄れないなら打つ手無いじゃない!」


 突発的な問題にアレクの頭は高速でフル回転して居た、どう対処するのが最適か。アレクは考える時間が欲しかった。


 「考えろ、考えるんだ!」

 「いやぁ! ゾンビがこっちに来たぁ!」


 ゆっくりとだが迫ってくるゾンビの大群に、三人は撤退していくしかなかった。

 ミッドガルドは最強に近い魔の領域ではあるが、その領域外では魔力の吸収が出来ない。

 それは唯一の弱点だった、だから領域外に急いで逃げたのだ。

 サラと共にアレクを担いで逃げるユリア、その背には聖剣が背負われて居た。


 「あれ? なんでユリ姉聖剣持ってるの?」

 「え? ハルトが煩いから持って居てくれって」

 「どんだけ嫌いなんですか勇者様……」

 「おうよ、おいらも悲しいぜ!」


 聖剣が声を挟む様に話に割り込んで来た。

 

 「小僧も大変なやつに会ったじゃねえか」

 「聖剣様も知ってるんですね」

 「あぁ『収穫(Harvest )』は勇者の能力でも便利な能力だったしな」

 「便利?」

 「魔力の分配と吸収だ、実に有用な能力だよ」

 「分配と吸収……」

 「何か気になることでもあったかい?」


 聖剣イフタフとの会話の中で、僅かだが希望の道が見えて来た気がした。

 アレクはもう少し聖剣に聞く事にした。


 「聖剣様、彼女の魔の領域はいつも一定範囲なんですよ、なんでか知ってますか?」

 「そりゃしらねぇな、逆によく知ってるな小僧」

 「えぇ、どの文献でも家一軒分と記載されてるんです、今も家一軒分程度です」

 「確か昔の相棒も収穫の能力発動の時は範囲指定していたな」

 「範囲指定?」

 「あぁ、予め範囲を指定してその中で仲間に分配と吸収を行っていた」

 「使いづらい能力だったんですね」

 「そうでもないぞ? 用は使い方次第だ!」


 聖剣との会話をして行くうちに、アレクは一つの推測と試す価値のある作戦を思いついた。

 

 「……仮説に過ぎなく危険な賭けですが、試したいことができました」


 推測から色欲のレイネシアを撃破する突破口を見つけたアレクはサラとユリアに協力を仰いだ。


 「ユリ姉、サラ姉! 力を貸して!」


 大賢者は絶対不可侵なる魔の領域「ミッドカルド」の攻略を開始した。

 

 

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