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第10話 聖剣を狙う者。

クリックありがとうございます!

 

 勇者一行は聖剣「イフタフ」を手に入れた事により王都「ハルザ」を目指していた。

 一度帰還して魔族の一人を撃破したことを報告するためだった。


「いやー久しぶりのシャバの空気はいいねぇ!」


 聖剣は相変わらず空気を読まずに我が道を行っていた。

 

「アレク、至急聖剣を黙らせる方法を教えてくれ」

「それが出来なかったから、大勇者も海に捨てたんじゃないでしょうか」

「愉快で良いじゃない!」


 蚊帳の外のアレクとユリアは若干楽しんでいた。


「……くぅー、それにしてもあんたが今代の勇者さんかい?」

「え……あ、はいそうですが」

「あんた、弱すぎるな」

「は?」


 イフタフは勇者のコンプレックスに遠慮なく突き刺して来た。


「そんなこと、自分でも知ってますよ。だから使徒を倒して強くなるんだ」

「いやそうじゃねぇ、そうじゃねぇんだよ。俺の相棒だった男に比べて魔力が少ない」

「どうゆう事だ?」

「これが時代なのかもな……勇者の質が落ちている」

「質が……落ちている?」


 聖剣イフタフの発言は興味深いものだった。


「聖剣さん、質が落ちているって。そんなことあるんですか?」

「あぁ、明らかにこの男の魔力が低い」

「それは、使徒の力を回収してないからではないですか?」

「お前さん一つ回収してたと言っていたな、一つ回収してその魔力……期待薄だな」


 イフタフは相棒の弱さが気になった、今では伝説の大勇者と言われているかつての相棒の十分の一すら無い。

 その事がイフタフには質が低下したからと自分に言い聞かせても、余りの格差に疑問を抱かざるを得なかった。

 しかし勇者の魔力の少なさよりも気になっていた事がある。

 それはおんぶされている少年のことだった。


「(……それに比べてこいつ、なんて馬鹿げた魔力なんだ。本当に人間なのか?)」


 背負われている少年アレクに恐怖するほどの困惑を持ったが、その考えを声に出して話す事はなかった。




 王都へは一日では到達できない、そのまま夜になった。

 みんなが寝静まった時。

 うるさいという理由で聖剣は一つだけポツンと遠くに立て掛けられていた。


「けっ、俺は聖剣さまだってのに冷たいもんだねぇ」

 聖剣イフタフは悪態をついていた。

 そんな聖剣に近づく怪しい人影が居た。


「あら、お一人?」

「……誰だ?」

「私の名前はサラ、お見知り置きを」


 暗い森の中から音も無く此方に進み出てきた。

 自らの自信の高さだろうか、顔を隠す事もなくその姿を月光の下に晒す。

 短くボブカットされた青い髪、目は妖艶な見入ってしまう様なイエローオパール。

 バランスの取れたしなやかな肢体は、一つの技能に特化した者の特有な雰囲気を纏っていた。

 

「私に何の用だ」

「貴方を奪いに来たの」

「……やばそうな奴が来たな」

「ヘルザの町から隠れて追っていたの、私はお宝に目が無いのよ」

「お宝とは嬉しいことを言ってくれるねぇ」


 この女はヘルザの町から諦めもせず追跡してきていた、優秀な追跡術と身の隠し方は一流だと判断できる。


「だから騒がないで貰える?」

「そりゃ無理ってもんだ、悪かったな」


 聖剣イフタフはこの謎の女に何故か恐怖を抱く事はなかった、叫べば全て解決する問題だと。


「いいわ、関係ないから」


 【黙りなさい】


 不思議なことにそう発言した瞬間に周りの音が削り取られた、音が伝達を拒んだ。


「!?(なんだ、声が!)」

「ふふっ、良い子ね」


 大賢者にすら黙らせられないその聖剣を、何のマジックか音一つすら布切れの音もしない無音状態を作り出した。

 悠々と聖剣に近寄る女は無警戒にも聖剣に遠慮なく触れてしまう。

 触れた瞬間に聖剣に何かが繋がっていたのだろう、ピンっ! と切れる音がした。


「……あら、無粋な事をする方がいるみたいね」

「何してんの……って聞く必要無いみたいね」


 待ち構えていた様に暗がりの中から一人出て来る。


「あんた、何者?」

「私? 私はユリア、流石は大賢者ってところかしら」

「……何で大賢者が出て来るのよ」

「聖剣を取ったら来るだろうと予測してたみたいよ」


 伝承通りに行く場合聖剣を狙う輩はいると踏んでいた。


「へぇ興味深いわ、その大賢者さん」

「ダメよ、今寝てるから。まだ子供なの」


 ユリアはアレクに言われて今日の見張りを行っていた。


「ヘルザからって事は私の事も知ってるのかしら」

「糸使いさんでしょ? ほんと最低なスキルわね」

「あらそう? 私気に入ってるのよ?」

「私をこんな状態にしておいてよく言うわ」

「頑張れば解けるんじゃない? 試してみれば?」


 ユリアは大賢者に言われた通り、木々を利用して細い糸を何重にも展開していた。

 予めアレクは糸に『強靭』と『柔軟』、『筋力低下』、『魔力封印』の四つの能力をかけ合わせていた。

 謎の女はその糸に手繰り寄せられて身動きができなくなるまで、まるで蜘蛛の糸の様に気付いたら手遅れになっていた。


 「私、アレクから聞いて本当にいるか疑わしかったのよね。いや、今でもと言ってもいいかしら」

 「何の話?」

 「昔々、世界を股にかけて世界中の宝を手に入れた伝説の大盗賊がいたらしいわね」

 「それが何?」

 「でも、一つだけ取れなかった。海深く沈んだと言われる聖剣、今でもその聖剣を盗みに時代を超えて狙っているって話で終わるのよねぇ」

 「……」

 「約2000年前の御伽噺、あなた大盗賊の子孫じゃない?」


 アレクには御伽噺の聖剣の存在が証明された今、それを狙うと言われていた大盗賊の話に警戒心を高めていた。

 まんまと罠に嵌ったサラという女はその可能性が高かった。

  

 「貴方には私、なんかシンパシー感じるわ。同類の匂いがする」

 「嫌なこと言わないでよ、私の一族は代々一つの事を成そうとしていただけだわ。あなたと一緒にしないで」

 「という事は、本当に子孫な訳?」

 「あら怖気付いた? そうよ私は大盗賊の子孫よ」

 「本当にいたんだ……まぁいいわ、それで一つのことって何? 聖剣を盗むほどのことなの?」

 「いいわ何も知らないお嬢さん、我が一族の目的。それは、魔王の完全消滅」

 「完全消滅ですって!」


 謎の女は代々その使命を果たそうとしていた。


 「聖剣はその鍵を握って居る、そう伝えられてるわ。その為に一族は世代を超えて力を蓄えて来た。勇者は封印は出来ても倒す事が出来ない、それで祭り上げられるのだから良い御身分だわ」

 

 大盗賊の子孫にして、サラという女は魔王が毎回封印していた事を知っていた。


 「何で……封印は一部しか知らないってハルトが」

 「そうよ、一部しか知らない話」

 「貴方が知ってるのはおかしいわ!」

 「おかしくないわ、その一部の人間って事よ」

 「それって、大司祭と聖女そして……王族」

 「そんな大層な人間じゃないわよ、見て分かんない? 綺麗なドレスが似合いそうに見える?」

 「じゃあ何で知ってるのよ!」

 「私の一族の先祖は魔王を倒そうとしていた、教えてあげる私の名前はサラ・グラム」

 「グラム? ……どっかで聞いた事がある」

 「グラム、それは魔王を倒しに向かった御伽噺に出て来るわ」

 「……嘘でしょ」

 「ふふっ、そう私の先祖は……」



 ——伝説の大勇者の仲間よ——



 

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