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道中二十人以上の化け物どもを薙ぎ払い、何とか無事に赤い屋根の建物までたどり着いた。
どうでもいいが、この監獄にいる人数は想像していたより多いようで、外で暴れている奴だけでも百人は超えていそうだった。
白衣も仮面もはがれているためあれが研究職員どもなのかすらよく分からないが、まあご愁傷さまという感じだ。
それはそうと、赤い屋根の建物。ぱっと見色のついた大きな建物はここくらいしかなかったので、南方から指図を受けずとも向かった可能性は高い。
建物内は外以上のバイオハザードなんじゃないかと想像しつつ、俺は慎重に扉を開ける。
扉を開け真っ先に視界に飛び込んだのは、狂った化け物ども――ではなく無数のモニター。優に百以上のモニターが上から下までびっしりと並べられている。画面に映っているのは先ほどまで俺らもいた監獄内部。
どこかに神月が映っているんじゃないかと考えるも、すぐに今見るべきものがそれじゃないことに気付く。
外とは違い無人かと見紛うほど静かな部屋。しかし部屋奥には女が一人、優雅に座っていた。
俺はにやりと笑いながら扉を閉め、座っている女――安楽音メルトに手を振った。
「よう黒幕。まさかこんなに早く会えるとは思ってなかったぜ。調子はどうよ」
安楽音は慌てたそぶりを見せず、満面の笑みを返してきた。
「お陰様で上々ですわ。それで、ワタクシに何か御用かしら?」
「御用がないと思うか? だとしたらお前は随分な阿呆だってことになるな」
「うふふふ。早速挑発とは威勢がよろしいこと。でも残念。ワタクシには本当に心当たりがありませんの」
「そうか分かんねえか。なら仕方ねえよな。取り敢えずそこから動かずにじっとしとけ」
俺は腕をぶんぶん振り回しながら歩き出す――はずが、南方に肩を掴まれ動きを止めた。
「んだよお前。今からお礼参りするんだから邪魔すんな」
「馬鹿か君は。相手が誰だか理解していないのか? それに言ったはずだ。進む方向は僕が決めさせてもらうと」
「ちっ。この状況で殴りに行く以外逆にどんな選択肢があるってんだよ」
俺はそう悪態をつきつつも、南方の指示に従う。俺は義理堅い漢。相手が誰であれ約束したことはしっかり守るのが信条だ。
南方は俺の代わりに一歩前に出ると、ゆっくり頭を下げた。
「安楽音メルト。お願いだ。ここで起きたことは誰にも口外しないから、僕らを元の世界に帰してくれ」




