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「さて、外出てみっか」
「扉が開いてるのはかなり不自然だ。くれぐれも警戒は怠るなよ」
「んなこと言われなくても分かってるっての」
そんな軽口を叩きつつ扉の外に視線を向けた直後、背後から獣のような雄たけびが上がった。
「殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺すk露推すr」
「「……」」
残念なことに、機関銃は池田を避けて放たれたらしい。
俺と南方は一瞬顔を見合わせると、我先にと監獄の外へと飛び出し、全力で扉を閉めた。
ほっと一息つく間もなく、耳に別の雄たけびやら罵声やら、日本とは思えないような治安の悪い音が飛び込んでくる。
正直見たくない気持ちでいっぱいだったが、渋々振り返ると、そこには阿鼻叫喚の地獄絵図が拡がっていた。
髪を振り乱し、体中の穴という穴から血を滴らせている化け物。
一糸まとわぬ姿で嬌声を響かせながらただ走り続けている化け物。
にこやかな笑顔を振りまきながら身近にいる奴に銃弾をぶち込み続けている化け物。
ある程度予想はしていた。していたが、想像よりもだいぶえぐい状況。
俺は雄たけびを上げながら斧を振りかぶってきた男をぶん殴って黙らせてから、南方を見た。
「んで、どっちよ」
「ひとまず、あの赤い屋根の建物に向かう」
流石は毒草と呼ぶべきメンタルで、こいつも少し眉間に皺を寄せただけで目の前の惨状に対し動揺した様子はない。
行先についてどこまで考えての発言かは知らないが、冷静さを欠いた適当な発言じゃないのは間違いないだろう。
包丁を持って突っ込んできた女を投げ飛ばし、けつを突き出して突っ込んできた男を蹴とばしてから、俺たちは一直線に目的地へと走り出した。




