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「第一村人発見、ってやつか」
「そんなわけないだろ。全く、神月がどうして答えるのを渋ったのか、その理由が分かったな」
「お、それってなんだ?」
「説明なんて不要。見ただけでヤバいと分かるからだ」
「ふーん、俺はそこまで変なものは感じねえけどなあ」
まあこれだけ無数の機関銃に銃口を向けられた中、怯えもせずに立っているというのは、俺のような繊細な人間からすると理解しがたいが。それでも別に、あれぐらいの陰気な奴は俺の通ってた中学や高校には無数にいた。これぐらいは一般人の範疇だ。
そんな考えの俺に対し、相も変わらず侮蔑めいた、失礼な視線が飛んでくる。
「どこまでも節穴な目だな。ここがどこだか理解してないのか?」
「おいおい馬鹿にしすぎだろ。いくら俺でもここが狂人の溜まり場ってことまで忘れてねえぞ。その上で、最近見た中じゃあまともな部類に見えるっつってるだけだ」
「なら分かるだろ。その狂人どもに、仲間意識なんてあると思うか?」
「ねえだろうなあ。だけど別段、ビビる必要はねえだろ。事実あいつはまだ死んでねえんだから」
通路に佇む男と機関銃を恐れてか中々前に進まない南方を横目に、俺は堂々と通路の中に歩を進めた。「おい、何を勝手に……!」という制止の声が飛んでくるが、勿論歩みは止めず。
片手をひらひらと振りながら、気安い口調で言った。
「まあビビり君はそこで見とけ。すぐに終わらせてくるからよ」
「待て! この場所に一人でいるということは、あいつはただの毒草じゃ――」
「分かってるっての。だから俺一人の方が都合がいいんじゃねえか」
「……囮のつもりか」
「囮? 俺が?」
心底的外れなことを言われ、ついつい俺は振り返ってしまう。
本当に、僅かにではあるが心配した面持ちの南方の顔を見て、俺は堪えきれず吹き出した。
「勝つために決まってんだろ」




