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「おいおいこれ何なんだよ!」
ムクロの体を抱き上げ、俺は全速で来た道を逆走する。
その間も銃声は鳴り響き、時折腕や脇腹に鋭い痛みが走る。
銃を撃ってきているのは、ここにいるはずのないこの施設の職員ども。俺たちが中に入るのを冷めた目で見ていたクソ野郎たちがなぜ施設内に入り込みしかも俺に向かって銃をぶっ放してきやがるのか。まあ――
「考えるまでもなく安楽音の仕業か! ふざけやがって!!」
「睦雄さん落ち着いてください。取り敢えず彼らを鎮圧しましょう」
無抵抗で肩に担がれているムクロが、さらりと無理難題を言ってくる。
「鎮圧しようにも丸腰で銃持ってるやつに勝てるわけねえだろ!」
「落ち着いてください。私がお願いすればすぐに味方になってもらえます」
「そ、それもそうか……。じゃあ早く頼む! 今も銃弾が直撃してないのが奇跡みたいなもんだ!」
「では。そこの銃を持っている皆さん、今すぐ銃を捨てその場に跪いてください」
一撃必殺の威力を誇るムクロの『祈願』。勝ちを確信し走るのを止め後ろを振り返る。
そこにはムクロの言葉通り跪いたクソ野郎どもが――
「いねえ!!?」
おらず、相も変わらず無表情で銃を構え追ってきていた。
慌てて逃走を再開するも、二発ほど頬を銃弾がかすめる。
焼けるような痛みを必死に堪えながら、俺は肩のムクロに向かって怒鳴りかけた。
「どうしてあいつらお前のお願いを聞かないんだよ! あいつらも綾崎級の毒消しなのか!?」
「それはないと思いますが。しかしこれはピンチですね」
全くピンチだとは思っていない声でムクロが言う。
しかしピンチなのは間違いないわけで、このままだとガチで殺されかねない。
俺はイチかバチか、素早く反転して職員どもに突っ込んでいった。




