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「うし、満足した! やっぱり人を殴るのってストレス発散に最適だな! なんか一気に気分がよくなってきたわ!」
「君を見ていると頭が悪くなりそうだ。矛盾という言葉は君のためにある気がしてくるよ。いや、身勝手という言葉の方が正しいか」
まるで得体のしれない宇宙人でも見るような目で南方が見つめてくる。
俺は首をコキコキと鳴らしながら、笑顔で応じてやった。
「今は気分がいいから別に何言われようが構わないぜ。てか、これからどうするよ。なんか知らねえうちに人数さらに減ってっけどよ」
床でぴくぴくと体を痙攣させている情緒不安定男の上に座りながら、俺は周りを見回す。俺が楽しくストレス発散をしている間に、八人の勇士は四人にまで減っていた。残っているのは俺、南方、ムクロ、神月と松原の五人だけ。
いなくなった奴らが自主的に裏切者の確保に行ったか、出入り口の調査に行っただけなら何も問題ないが、まず間違いなく違うだろう。
何も言わずに動く理由が見当たらないし、あいつらもこの情緒不安定男と同様に、暴走を始めたか裏切ったかしたのだろう。まあ俺だってこの特攻兵みたいな扱いに苛立ちを覚えているため、裏切ることに文句など言う気はないが――うん、そういう意味では俺ももう自由に動いていいのか?
もしや逃げるチャンスが来ているのではと、ちらりと神月の方に視線を向ける。だがその直後、
「いった!」
頭部を南方に思い切りはたかれた。
「君、今絶対面倒な事考えてただろ。ただでさえ厄介な状況なんだ。これ以上煩わしいこと増やさないでくれ」
「だからって殴ることねえだろ!」
「否定しないってことは、面倒な事を考えてたのは事実なんだろう。どうせこれに乗じて自分も裏切ろうとでも考えたか」
「べ、別にんなことねえよ……。第一裏切ったところでここから出るのが大変になるだけじゃねえか。裏切るなら出る方法が確認できてからにするわ」
「とっさに考えたにしては意外と論理的な発言だな。まあ考えていることが最低なことに変わりはないが」
「んだと?」
「……二人とも、仲がいいのは結構だが、いい加減話を進めないか」
「ちっ」
にらみ合いを始めた俺と南方の間に、神月の疲れた声が割り込む。
この状況じゃあ裏切るのは厳しいかと思い、(不本意ながら)俺はもうしばらくこいつらと行動を共にすることを決めた。




