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「安楽音……どうやって外に出たんだ」
『あら、久しぶりの会話なのに、神月さんは無粋ですわね。もっと他に話題はありませんの?』
「この状況で世間話ができるほど、さすがの俺も強心臓じゃないさ」
『うふふ。神月さんったらそんな謙遜しちゃって。かつてワタクシの『毒』に堪え切れたあなたなら、この程度の事態大したことじゃありませんでしょう?』
「……」
神月は彼女の言葉に答えることなく、目で俺たちに出口へ向かうよう指示をしてきた。
今のうちに入口へと戻り、扉がどうなっているのか確認して来いということだろう。
ここは神月の判断が正しいかと考え、俺は早速入口へと走りだそうとする。しかし目の前に人が転がってきたため、慌てて足を止めた。
突然転がってきたのは綾崎。しっかりと受け身は取っていたようで、軽く腰をさすりながらすぐさま立ち上がった。
「痛いねえい。突然蹴っ飛ばしてくるなんてひどいじゃないか、南方キュン」
「ひどいのはどっちだ。元から毛ほども信頼していなかったが、まさかこうも早く裏切るとはな。これ以上面倒を起こされる前に拘束させてもらう」
軽く体を左右に揺らしながら、南方は素早く綾崎に蹴りかかる。
綾崎は顔だけはにやけ面のまま、南方の蹴りを避けていく。
しかし身体能力では圧倒的に南方が上なようで、すぐに額から汗を流して苦悶の表情に変わっていった。
突然の二人の戦闘。
何が起きているのか分からず、取り敢えず俺は二人の間に無理やり割り込んだ。
「おい、突然どうしたってんだよ! 今は仲間割れ起こしてる場合じゃねえだろ!」
俺の至極まっとうな一言に、南方はこれでもかと眉間に皺を寄せた。それから吐き捨てるように「仲間割れじゃない」と告げると、続けて綾崎に指を向け、
「安楽音が外に出ているのはそいつが原因だ。つまり今ここで倒すべき敵なんだよ」
そう言って、俺を飛び越え綾崎の顔面目掛け豪快なとび膝蹴りをぶちかました。




