表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人人人皿毒  作者: 禍影
4日目-2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/95

72

「しかし何つうか、思ったより退屈だな」

 小声でぼそりと独りごちる。

 予想を上回る凄惨な光景は最初だけ。その後は白い部屋が延々と続き、たまに『毒草』が襲ってくるも、その『毒』に耐えられない者はおらず、難なく返り討ちにできてしまった。

 既に三人ほどの『毒草』が、一人の男が運ぶカートの中に入れられている。

 カートを運んでいるのは、神月と同じく『毒草』を管理する側の人間。名前は確か、松原鋼昌だったか。

 身長は俺より高く百九十センチ近くある。横幅もかなりのもので、巨漢戦士とでも呼びたくなる体格をしている。髪もいつから切っていないのか、腰近くまで伸びきっており、まるで旧約聖書に登場するサムソンを想起させた。

 しかしその男の特異な点は体格や長い髪ではなく、別にある。というのもこの男、両の目が不自由で全く物が見えないらしい。代わりに聴覚が死ぬほど発達しているらしく、歩行や会話時に生じる音の反射から、周りの空間を正確に認識できているとか。

 そうした理由から視覚系の毒に無敵であることと、音に対する鋭敏さから捕獲した『毒草』が妙な動きをしてもすぐに察知できる点を評価され、今回の鎮圧作戦では『毒草』の運び手を担っている。

 まあ俺から言わせれば、下手に能力が高かったためにハズレくじを引かされた可哀そうな奴と言った印象だ。もちろん一番可哀そうなのは、ただの一般人でありながらこの地獄に送りこまれた俺なわけだが。

 ただ、俺とは違い松原はこの役目に対し不満を抱いていないらしい。先ほどから文句の一つも言わず黙々と自分の役目を果たしている。

 正直、薄気味の悪い奴だ。

 いくら仕事とはいえ、こんな死ぬかもしれない面倒事を任されれば神月のようにため息の一つもつくだろうに。どんな精神構造をしているのか。

 また新たに物陰から飛び出した『毒草』を蹴り一発で沈黙させつつ、俺は殿を務める松原に冷めた視線を送った。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ