表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人人人皿毒  作者: 禍影
4日目-2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/95

71

 壁に埋め込まれた奇怪なオブジェ――もとい、苦悶の表情で絶命している女。

 全身が血まみれで、目は赤く充血しきり血の涙が流れていた。

 あまりに凄惨な光景に近づこうという気も起きず、俺は扉の先に足を踏みださぬまま神月に尋ねた。

「今話そうとしてた、ムクロ並みにやばい奴、ってのがこいつのことなのか? まあ何つうか……がっつり死んでるみたいだけどよ」

 神月は信じられないと言った表情を浮かべながら、小さく頷いた。

「ああ、間違いない……。安楽音メルト。視覚、聴覚、嗅覚を侵食する毒を持っている女だ。相手の理性をぐずぐずに溶かし、廃人に変える最悪の『毒草』の一人だったんだが……」

「彼女がこうもあっさりと殺されているってことは、もっとやばい奴が収容されてたってことかねえ。これは俺も多少覚悟しとかないといけにゃいかな」

 セリフの割にほとんど緊張感のない綾崎が、ポリポリと鼻を掻きながら死体に近づく。

 近くで死体を見た彼は、一瞬驚いた表情を浮かべたものの、すぐに普段のにやけ面に戻り、その周囲を観察し始めた。

 取り敢えず綾崎の身に何も起こらないのを見て、他のメンツも扉を抜けて施設深層(?)に入っていく。

 各々周囲を見回し何があったのか探ってみる。しかし毒草同士の殺し合いに武器は一切必要とされない為か、メルトがこのようになった原因は見当たらず、部屋はいたって綺麗なままだった。

 とはいえ、壁に体が埋め込まれるという奇怪過ぎる死に様。いくら何でも『毒』だけでは済まされない状況ゆえ、この先に潜んでいる『毒草』の誰かが、物理的にやばい武器を持ち込んでいる可能性が高そうだった。

 玄関的な役割を担っているためか、ここはそこまで広くもない部屋であり、すぐに捜索は行き詰る。

 初っ端から最悪の毒草の一人が死んでいるという事態に対し、喜んでいいのか危機感を高めた方がいいのかやや判断に困る。ただ現状深く考えることに煩わしさを感じ、俺は軽くシャドーボクシングなどして心を落ち着けた。

 しばらくしても動き出さない神月に、しびれを切らしたせっかち野郎は南方。眉間に皺寄せ、苛立たし気に口を開いた。

「おい、いい加減先に進むぞ。この女がお前らの研究にどれほど重要だったのか知らないが、死んでいるのならもうどうしようもないだろ。今はそいつより人命救助が優先のはずだ。しゃきっとしてくれ」

「………………ああ、そうだな」

 神月は改めてメルトの死体に目を向けた後、施設内のさらなる深層へと俺たちを導いていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ